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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-11【マンブリーノ編】

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〈11-2〉双剣

十六年前。


これは、リベリオがまだ八歳の時。

「はっ!はっ!」

彼はただひたすら木刀を振るっていた。


リベリオは生まれつき魔法が使えない体質だ。普通であれば非難され、虐げられる身。

彼も例外ではなかった。


しかし、彼はそれでも前を向き続けることを選んだ。

魔法が使えない。ならば剣一つでてっぺんに立とうと。


何日も何日も、ただひたすら剣と向き合う日々を続けてきた。


そしてある日、彼は一人の少年と出会う。



「毎日毎日素振りばっかしてるけど、もしかして魔法使えねぇのか?」


突然現れた赤髪の少年は、リベリオを見ると不思議そうに言った。

リベリオはその問いにただ静かに頷く。


「ははっ!なんだ、お前もかよ」

「え?」

リベリオが魔法が使えないと知ると、ただ笑ってリベリオの隣に立った。

そして、木刀をひとつ手に取ると、リベリオの隣で件を振り始めた。


「俺も魔法使えないんだぜ。まさか、俺と同じ無能者がこの街にいたなんて、奇遇だな」


剣を振りながら少年は言う。


「俺はルーク。お前、名前は?」

「リベリオ」

「リベリオか、よし。俺は今日からお前の友達だ!」

そう言うと、ルークは手に持った木刀を前に出す。


リベリオは目を丸くし、その瞳を輝かせた。

そして彼もまた、木刀を前に出す。


ルークとリベリオ。

二人の剣が、初めて交えた瞬間だった。



それから二人は互いに高みを目指しあった。

共に剣を振り、剣をぶつけた。


「なぁリベリオ」

「どうした?」

「俺ら、魔法使えないだろ?だから剣一本で頂点に立とうと思う。こいつで、魔法を覆すんだ!」


ルークは剣を空高くかざし、輝くそれを見つめる。

剣の頂点。

遥か先にある夢を見るかのように、ただ剣を見つめた。


「じゃ、二人で双剣だな」

そう言うと、リベリオもまた剣を高くかざす。


そして二人は見つめ合うと、ただ笑いあった。


リベリオとルーク。二人の夢がこの場所で生まれた。

双剣の夢が。



そして、十年の月日が経ったある日。


マンブリーノの街で戦争が起こった。

魔法同士が衝突し、家々は崩壊していく。

「な、なんだ!?」

慌てて家を飛び出したリベリオは、その光景を目にした。

黒煙が立ち込め、家々は次々と崩壊していく。


「はっ!ルーク!!」

リベリオはすぐさまルークの元へと向かう。

「ルーク、頼む。無事であってくれ……」

そう呟きながらひたすら走った。


昨日まで当たり前のように人々が行き交っていた街並みは、見る影もなく崩れ果てていた。


「一体何が起きてんだよ!!」

リベリオは周囲を見渡した。

その光景を目にした瞬間、彼は悟った。


戦争だ。


リベリオは腰の剣を握り締めた。

「ルーク……!」


再び走り出そうとした、その時だった。

「うわあああっ!!」

すぐ近くの建物が、轟音と共に崩れ落ちた。


瓦礫の向こうから、小さな子供の泣き声が聞こえる。

「……っ!」

リベリオは足を止めた。

ルークを探さなければならない。けれど、目の前には助けを求める人がいる。


「くそっ!!」

リベリオは方向を変え、崩れた建物へと駆け寄った。

「おい!! 誰かいるのか!!」

「た、助けて……!」


そこには、瓦礫の隙間に小さな少年が取り残されていた。

「今助ける」

リベリオは剣を抜き、少年の行く手を塞ぐ瓦礫を切り払う。


「ほら、こっちだ」

差し伸べた手を、少年が握る。

その身体を抱き上げ、崩れた建物から飛び出した。

その直後、残っていた屋根が崩れ落ちる。


「危なかった……」

リベリオは少年を地面へ下ろした。


「走れるか?」

「うん……!ありがとう!」


少年は何度も頷き、走り去っていった。

「………………」

その背中を見送ったリベリオは、再びルークを探そうとした。


しかし


「おいおい、こんなところで何やってんだよ!」


聞き慣れた声が響いた。

「まさか!」

リベリオは咄嗟に振り返った。

そこにいたのはルークだった。


「ルーク!!」

「リベリオ!無事だったのか!!」

「ああ、なんとかな」

二人はお互いの無事を確認すると、小さく微笑んだ。


しかし、すぐに二人は真剣な表情へと変える

「何が起きてんだ?」

リベリオが尋ねると、ルークの表情が僅かに曇った。

「戦争だ」

「やっぱりか……」

「ああ。アーカーシャ教団を信仰する連中と、そうじゃない連中が争い始めたらしい」


ルークは燃え盛る街へと視線を向けた。

「馬鹿みてぇだよな。昨日まで同じ街で暮らしてた奴らが、今日は殺し合ってんだぜ」


その言葉に、リベリオは何も答えられなかった。

遠くから再び轟音が響く。


「なぁ、リベリオ」

「なんだ?」

「このまま放っておけねぇよな」

「……ああ」

二人は顔を見合わせた。

言葉など、それ以上必要なかった。



「行くぞルーク!」

「あぁ!!」

二人の剣士は、炎に包まれた街へと駆け出した。



「はああああっ!!」

ルークの剣が、迫り来る魔法を弾き飛ばす。

「なっ!?魔法も使わずに……!」

怯んだ魔術士に、リベリオが踏み込む。

しかし、その背後から別の魔術師が魔法を放とうとしていた。


「隙だらけだぜ!!」

「そっちがな!!」

瞬間、ルークが横から飛び込み魔術師を剣の柄で打ち倒した。

「へへっ!助かったろ?」

「余計なお世話だ!」


十年以上、共に剣を振り続けてきた。

互いの癖も、間合いも、次に何をするのかもわかっている。


リベリオが前へ出れば、ルークが背後を守る。

ルークが敵を引きつければ、リベリオがその隙を突く。

それは、何度も繰り返してきた修行の延長だった。

ただし、今は違う。


一つ判断を誤れば、命を落とす。

それでも二人は、足を止めなかった。


「なぁ、リベリオ!!」


「なんだ」


「俺たち、結構強くなったよな!!」


「今さら何言ってんだ」


「いや、八歳の頃を思い出してよ!!」


ルークは敵の攻撃を躱しながら笑った。

「あの頃のお前、木刀を振るだけで精一杯だったもんな!!」


「ルークも似たようなもんだったろ」


「ははっ!違いねぇな!!」


かつて交わした約束は今も変わらない。

双剣。その言葉が、彼らの誇りだった。




──────────────────────




どれほどの時間が経っただろうか。

街を覆う黒煙は未だ晴れる気配が無い。


「はぁ、はぁ……!」


リベリオは肩で息をしていた。

その隣では、ルークも額の汗を拭っている。

「キリがねぇな」

「だな」

二人は瓦礫の陰に身を寄せた。


「なぁ、ルーク」

「ん?」

リベリオが背中を合わせるルークに声をかける。


「オレたち、何やってんだろうな」

「どうした急に」

「魔法を使えないオレたちが、魔法を使う連中の戦争に巻き込まれて……」


リベリオは剣を見つめた。

「剣一本で、どこまでやれるんだろうな」

それを聞いたルークは、ふと笑った。


「お前、忘れたのか?俺たちが最初に交わした約束」

ルークは剣を持ち上げる。

「魔法なんかに負けねぇ、世界最強の剣士になるんだろ?」

「ああ。そうだったな」

「だったら、こんなところで弱音吐いてどうすんだよ!」


ルークはリベリオの肩を軽く叩いた。

「それにさ」

「ん?」

「お前がいるだろ?」

その言葉に、リベリオは軽く笑う。


「俺一人じゃ無理かもしれねぇけど、お前と二人なら、何だってできる気がするんだよ」

「そうだったな。二人で双剣、だもんな」

「おう!!」


二人は再び、剣を構えた。


「そこにいたか!!」

瓦礫の向こうから、複数人の魔術士が姿を現した。

「っ!?」

リベリオとルークは咄嗟に剣を構えた。


「行くぞルーク」

「あぁ!!」

二人は魔術士達を圧倒し、その剣で次々と倒していく。

魔法が無くても、剣一つで魔法を圧倒できる。

二人なら、この世界に抗える。


そう思っていた。


しかし


「リベリオ!!!」

ルークの叫ぶ声と共にリベリオの身体が突き飛ばされた。

リベリオが起き上がり、再び前を見つめる。


「えっ………………」


彼の目の前には一人の青年が立っていた。

そして、その身体には炎の刃が直撃していた。


ルークはリベリオを庇い、魔法をくらったのだ。


「そんな……待てよ、ルーク…………」

ルークはただ空を見つめていた。


致命傷だった。

体を貫かれ、内側から燃やされていく。


「リベリオ……」

ルークはリベリオを見つめると、ただ静かに笑った。


「最強の剣士に、ぜってぇなれよ」



その言葉を最後に、ルークの身体は炎に包まれた。

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