〈11-1〉あの日の約束
「司祭長、オルド国王が倒されたそうです」
「そうか…」
オルド国王が倒された情報は、既にアーカーシャ教団へと届いていた。
教団本部では、司祭長ワクスと秘書がその会話をしている。
「セフィラの魔術師は乗っ取られ、オルド大国は壊滅。残る下部組織は教団本部内のみになりました」
「わかっているさ。それに、もう手は打ってある……」
そう言うと、ワクスはある方向へと視線を向ける。
その視線の先にいる十人の魔術師。
そんな彼らを見ると、ワクスは再び口を開いた。
「さて、あとは頼みましたよ。僕達アーカーシャ教団にとって最も邪魔な存在。彼女たちの排除を……」
暗闇に浮かぶ瞳。
そこに映る十人の影。
「行きなさい、クリファの魔術師たちよ」
ワクスがそう合図を出すと、十人の魔術師は一斉にその場を離れていった。
アーカーシャ教団の新たなる刺客が、リゼット達を待ち受けていた。
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「さて、ここがマンブリーノね」
「うおおおお!!って、なんか建設中って感じがする!!!」
「なんかあったんか?」
リゼット達はマンブリーノへと到着していた。
しかし、この街はところどころが崩壊した跡があり、人々は街の復旧に力を入れていた。
「あのー!!!すみませーーーん!!!!」
「う、うわぁ!」
シキが大声で一軒家の屋根を直している男に呼びかけると、その声に驚いたのか男は足を躓かせる。
「………………傀儡魔法」
リゼットが人形で風魔法を放ち、男は風に乗せられてゆっくりと着地する。
「し、死ぬかと思った……」
男は焦った顔で胸に手を当て、大きく息を吐く。
「バカ!テメェのせいで死人が出るとこだったじゃねぇか!」
ゴツンっ!
「いだっ!!ごべんなざい……」
シキの頭上にアルケーの拳が落ちる。
「とはいえ、聞きたいこともあるわ。この街に一体何があったのかしら?」
「ま、まさか、アーカーシャ教団…とか…………」
スピカとヴェーターが街の雰囲気に疑問を持ち、問いかける。
その問いに、男は返した。
「戦争だよ」
「……………………戦争?」
「あぁ。今から五年…いや、六年前だろうか。この街で戦争が勃発してな。アーカーシャ教団を信仰する派と信仰しない派の二つに別れちまってよ。結果、戦争になっちまったわけだ」
この街についた傷跡は全て戦争によるものらしい。
今この状況も、おそらく終戦した後で街を再興している最中なのだろう。
「うーん、まぁ知ったところで今のボクたちに出来ることは少ない。とりあえず、街を回ってみよう」
エメリアがそう言うと、それぞれは彼の後ろをついていくように歩き出す。
しかし
「すまない、ちょっといいか」
と、リベリオが声を発した。
「どうしたの?」
「寄りたい場所があるんだ。少し離れてもいいか?」
エメリアが聞き返すと、リベリオはそう答えた。
マンブリーノという言葉を聞いてから、リベリオの顔は曇っていた。
そしてそれは、今も同じだ。
何かを察したエメリアは、ただ静かに頷くと
「ありがとう」
と、リベリオは返事を返すとそのまま別方向へと向かっていった。
「まずは、宿を取ってからね。話はそれからよ」
スピカが街みを見渡しながら提案する。
「宿っつっても、取れる宿があるかどうかだけどな……」
アルケーは崩れかけた建物に目を向け、顔を顰めた。
「大丈夫よ。見たところ、お店はもう営業を再開しているみたいだから。宿だってきっと見つかるわ」
「お店!!行きたい!!!!」
「お前は黙ってろ」
「なんで!?」
相変わらずのやり取りに、スピカは小さくため息をついた。
「それなら、手分けして探しましょうか」
「そうだね。ボクも宿探しを手伝うよ」
スピカがそう言うと、エメリアがそう答える。
「じゃあ、うちは食べ物探してくる!!!!」
「遊びに行くんじゃねぇぞ」
「わかってるよ!!」
「絶対わかってねぇだろ……」
アルケーが呆れたように呟く。
「じゃあ、ヴェーターも来い」
「えっ!?なんで僕まで……」
「いいから来い。一々あのバカ止めんのめんどくせぇんだよ」
「え、ちょ、それだけ……?」
アルケーに半ば強引に連れていかれるヴェーター。
その様子を見送りながら、ラミアがリゼットへと顔を向けた。
「それでは、私たちは情報を集めましょうか」
「………………情報?」
「はい。アーカーシャ教団について、何か得られるものがあるかもしれません」
リゼットは少し考えると
「………………わかった。私も行く」
そう頷いた。
そして一行はそれぞれの目的のため、マンブリーノの街を歩み出した。
そして
「………………」
リベリオは一人、街外れの丘の上へと来ていた。
そこにあるのは、木刀の刺さった小さなお墓。
リベリオはそれをただ見つめていた。
「また、ここに来ることになるとはね……」
リベリオは小さな墓に語りかけた。
当然返事など無い。
丘を吹き抜ける風が草木を揺らし、静かな音を立てているだけだった。
「………………」
リベリオは墓の前に腰を下ろした。
目の前には、一本の木刀。
その表面には、幾つもの傷が刻まれている。
まるで、誰かが何年も何年も使い続けたかのように。
「懐かしいな」
リベリオは小さく笑った。
「お前と初めて剣を交えた時のこと、今でも覚えてるろ」
リベリオは空を見上げる。
「オレは今や英雄だなんて呼ばれている。まぁ、自分には荷が重すぎるとは思ってるけどね」
リベリオは小さく笑いながら、言葉を続けた。
「もしお前が生きていたら、どっちが英雄になっていたんだろうな……」
リベリオは腰に添えた剣に手をかけた。
あの日、二人で誓った約束が脳裏に蘇る。
『なぁリベリオ!俺達で世界最強の剣士になろうぜ!魔法なんかに負けない、超強い最強の剣士に!』
「…………」
リベリオは静かに目を閉じた。
今でも鮮明に覚えている、あの時の友の表情。
あの時交わした約束。
「少しだけ、一緒にいさせてくれ。昔のことを語り合いたいんだ」
そう言うと、リベリオはその場で腰を下ろした。




