〈10-18〉変わらない日常
翌朝。
窓から差し込む朝の光が、少女の顔を照らす。
「………………ん…」
その光の眩しさに、少女はゆっくりと目を開いた。
眠い目を擦りながら静かに起き上がる。
「………………ここは…」
あれからずっと寝ていたリゼットは、自分がどこにいるのかわからず困惑する。
すると
「おはよぉおおおおおおお!!!!!」
「うるせぇえええええ!!!!」
いだっ!!
突然シキが飛び起きて朝一番の大声を上げ、アルケーがそんな彼女に枕をぶん投げた。
「………………うるさい…」
「あ!!リゼットも起きてるよ!!!」
「やっと起きたか」
先に目を覚ましていたリゼットに、シキが飛びついた。
「………………な、なに…?」
「良かったぁああ!!リゼット!!!リゼット起きたぁあああ!!!!」
「………………ちょっと、重たい…」
「こらシキ、離れなさい」
そんなやり取りをしてる中、スピカ達も目を覚ました。
「皆さん、おはようございます」
「お、おはよう」
まるで昨日までの出来事が嘘だったかのような、いつも通りの日常。
いつもと変わらない、みんなの声。
ただひとつ変わったことは、みんながリゼットの本当のことを知ったことだけ。
それでもなお、六人の日常は失われていない。
「……………………」
リゼットが微笑む。
普通に生きること。その夢はきっと、もうすぐ近くにあるのかもしれない。
そう思いながら、リゼットはただ五人の姿を見つめた。
その時
「朝からうるっさいわよ!!もうちょっと静かにしなさいよ!!!!」
思い切り扉が開かれる。
そこには不機嫌な様子でメルゴが睨みつけていた。
「ごめんなさい。全てこのバカの責任だから、煮るなり焼くなり好きにしていいわ」
「ちょ、スピカ!?それは酷くない!!?」
「迷惑かけたのはあなたでしょ。ちゃんと罰は受けなさい」
スピカがシキを摘み上げ、メルゴの前に出す。
メルゴはそんなシキを睨みつけていると、その後ろから声が聞こえてきた。
「おはよう!!今日も良い天気だな!!」
「みんな元気そうでよかったよ」
メルティとテンペスだ。その影にはエメリアとリベリオの姿もある。
そして五人はそのまま部屋に入ると、空いている場所に腰をかけた。
「皆さんお揃いで。ご無事で何よりです」
「まっ、このくらい平気よ」
そう言ってメルゴは腕を組むと、未だにスピカに摘み上げられているシキへと視線を向けた。
「で、あんたはいつまでそうしてるつもり?」
「助けてぇぇ!!このままだと私、煮られちゃうよぉぉおお!!」
「誰も煮るなんて言ってないでしょ!!」
そう言うメルゴに、横から口を挟む少女が一人。
「………………煮ても、美味しくなさそう」
「リゼット!?!?」
思いがけないところから声が上がり、シキは思わずリゼットへと顔を向ける。
「はははっ!!朝から賑やかだな!!」
そんなやりとりを見て、テンペスが大きな声で笑った。
そこにエメリアが口を開く。
「さて、みんなが元気なのはわかったけど、そろそろ少しいいかな?」
その言葉に、部屋の中の視線が彼へと集まった。
「ん?なになに!?また何かあるの!?」
「うん。少し大切な話があってね」
「大切な話?」
スピカが首を傾げる。
エメリアは頷くと、リゼットへと視線を向けた。
「リゼット、君に伝えたいことがあるんだ」
「……………………私?」
「そう、君にね。まぁ悪い話じゃないから安心して聞いてくれよ」
突然名前を呼ばれ、リゼットは不思議そうに首を傾げる。
その様子を見て、エメリアは小さく笑った。
「昨日、僕たち三人で話し合ったんだ。もちろん、正式に世界中へ伝わるには時間がかかるだろうけどね」
そう言うと、彼はリゼットを真っ直ぐに見つめた。
「リゼット」
「…………………ん」
「君を、世界最高戦力として迎えたい」
「……………………」
その瞬間、部屋に沈黙が流れた。
リゼットはエメリアを見つめたまま、動けなくなっていた。
リゼットは小さく口を開く。
「………………え?それって…」
「君もボクたちと同じ、世界の最高戦力の一人になるんだよ」
「……………………」
そして、しばらくの沈黙の後
「えええええええええええええええええ!?!?!?」
シキの叫び声が部屋中に響き渡った。
「うるさい」
バシッ!!
「いだっ!」
あまりの大声で叫ぶシキにスピカのデコピンが飛ぶ。
しかし、驚いているのはシキだけでは無い。
声は出さずとも、事前にそれを知っていた三人以外の全員が驚愕の表情を浮かべていた。
「昨日の君の戦いを見て、確信したんだ。君の力は世界でも最高点に到達する程の実力がある。それに、終焉の悪魔を倒したという実績に、セフィラの魔術師第一席という称号も持っている」
「…………………………」
「君は世界の上に君臨するのが相応しいと、ボクは思ったんだ」
リゼットは少し考え込む様子で自分の手を見つめた。
自分が持つ、特別な力。
自分の正体。
過去の自分だったらきっと、普通じゃなくなっていく自分を嫌悪していただろう。
でも、今は違う。
みんなが認めてくれたから、自分を受け入れることができたから。
「リゼット」
そんな彼女に、スピカが声をかける。
「おめでとう。最高戦力だなんて、凄すぎるわ」
「おめでとぉおおおお!!!!リゼットすごいよ!!だって四人目ってことは、世界で四番目に強いって事でしょ!!!!」
「そんな単純なわけねぇだろ!あと、五人目の席開けとけよ。その席は俺の席だからな」
再び始まった騒ぎの中、リゼットは小さく微笑んでいた。
世界が自分を何と呼ぼうとも、今この場所には変わらないものがある。
彼女がずっと求めていた、ありふれた日常が。
「……………………ふふ」
リゼットはただ、小さく笑った。
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そして、それぞれはオルド大国の入口へと出た。
「さて、君達に来てもらいたいところがあるんだ」
そう言うと、エメリアが全員を見渡す。
「話の流れからすると、十中八九あそこだろうな」
「リベリオはもうわかってるか」
「…………………………どこ?」
リゼットが首を傾げると、エメリアは次の目的地のある方向へと視線を向けた。
「聖地オリヴィエ。この世界で一番強い魔術師がいる場所さ」




