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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-10【オルド大国編】

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115/127

〈10-15〉傀儡人形は夢を見る

一方。


メルティに呼ばれ、オルド大国へと戻ってきたシキ達は、その上空に浮かぶ禍々しい姿を見つめていた。


「えぇええええ!!!なにあれ!!どういうこと!!!?!?」


「分かりません。でも、人ならざる者であることは確かなようです」


「ええ。それと、規格外の強さだってこともね」


スピカが向けた視線の先では、既にメルゴとテンペスが満身創痍の状態で膝を着いていた。


リベリオは何度もその得体の知れぬ存在を斬るが、その傷口は即座に再生してしまう。


「これなら……!!」


リベリオが再び上空へと飛び上がり、目にも止まらぬ速度で剣を振るった。

しかし、その攻撃も虚しく、傷はすぐに再生してしまう。


「なっ!」


直後、リベリオはその圧倒的な存在の一振によって地面に叩き落とされた。


「ど、どうするの……。こいつは誰なの?」

「終焉の悪魔……」


背後から聞こえた声に、皆が振り向く。

「エメリア!!こいつのこと知ってるの!?」


「何かの記録で見たことがある。この世界には二体の悪魔がいて、それは世界の始まりと世界の終わりを告げる役目を持つって」


「じゃ、じゃあ……こいつは世界を…………」


「それは違う。本来、悪魔というのはこの世界に降り立つことのない存在。終焉の悪魔は、世界が終わるのを見届けると、再び次の世界へと移動するんだ」


「じゃあなんで今ここにいんだよ、俺らじゃどうにもできねぇだろうが」


「ボクが、世界を変えてしまったから……」


その言葉に、五人は目を見開いた。


「本来、この世界は既に滅んでいたんだ。君達はオルド大国での戦いに敗れ、ただ一人を残して全員が死んだ。そして、残された一人が世界を滅ぼすのが本当の未来だった」


「じゃ、じゃあ今の俺達って……」


「ボクがどうにかして時間を巻き戻したからなんだ。ボクが世界が滅びるのを阻止するために、最悪の未来にさせないために起こした行動。それがまさか、こんな形で代償が来るなんてね……」


エメリアは上空に浮かぶ終焉の悪魔をただ見つめた。


もう、どうすることも出来ない。

けれど、それでも諦めぬ者たちがいた。


「なるほどな、話はわかった。とりあえずあいつぶっ殺せばいいんだな」


「あ、アルケー!?そんなの無理だよ……。僕たちの敵う相手じゃ…」


「知るかんなもん!出来る出来ねぇじゃなくてやるんだよ!!俺はもう逃げて後悔はしたくねぇから、戦う。戦って、負けたら負けたでそん時はそん時だ!」


アルケーは炎を纏った拳を叩き合わせる。


「そうね」

スピカもまた、一歩前へと出た。


「あなた達を支えるのが私の役目。指示は私が出すわ」


そう言うと、その隣にいたシキも一歩前へと踏み出した。


「うちも行く!!めっちゃ強いってことは、勝ったらうちらめっちゃ凄いってことじゃん!!」


そして、ラミアもその視線を上げた。


「私も行きます。最後まで、皆さんの隣に立ちたいです」


そんな四人を見て、ヴェーターは大きく首を振った。

怖い。勝てるはずのない相手だ。

けれど、自分の持ち続けた夢を思い出す。


勇気のある人になること。


ヴェーターは震える拳に力を入れ、終焉の悪魔を見つめた。


「ぼ、僕も!こんなところで立ち止まってたら、勇気のある人になんてなれないから!」


そんな五人の背中を見て、メルティは微笑んだ。


「じゃ、行こっか」


六人は終焉の悪魔へと立ち向かう。

スピカが全体を把握し、それぞれに指示を出しながら魔法を放つ。

シキが幽霊と共に魔法を放ち、アルケーとリベリオが接近。メルティは状況を見つつ炎魔法と氷魔法を放ち、ヴェーターの魔法で攻撃を拒絶。

そして、ラミアの魔法で周囲から攻撃を加えた。


何度も、何度も、何度も。

六人はただ、必死に抗った。


だが、どの攻撃も虚しく、終焉の悪魔には傷一つつけることさえ出来なかった。


「………………」


悪魔は天にその腕を掲げると、大きな闇魔法を作り出す。

それは、オルド大国全体を覆い尽くすほどの巨大な魔法。


「ヴェーター!」

「わ、わかってる。拒絶魔法!」


ヴェーターが拒絶魔法で全員を守ろうとしたその時


「えっ」

瞬きする間もないほどの一瞬。終焉の悪魔はヴェーターの元へと移動し、彼を地面へと蹴り飛ばした。


「ヴェーター!!!」

咄嗟にシキが叫び、ヴェーターの元へと向かう。


「クソ!止まりやがれ悪魔野郎!!」

「こんな所で、世界を終わらせたりはしない!」


アルケーとリベリオが終焉の悪魔に接近し、剣と拳を叩き込む。

だが傷は修復し、右腕でアルケーの腕を掴むとそのまま地面に叩き落とした。


「まだ!!!」

リベリオは魔法を放とうとしている右腕を切り落とそうとするが、彼の剣は見えない壁に弾かれてしまった。


「氷魔法《グラキエース》!」

「炎魔法《イグニス》!」

スピカとメルティが前後から同時に魔法を放つ。


「ゴーストちゃん!お願い!!」

シキの幽霊もまた、複数の方向から魔法を撃ち続けた。


でも、ダメだった。

まるで不死身とでも言うかのように、その身体は平然と上空に立ち尽くしていた。



そして

「ダメ…もう、間に合わない……」

スピカがそう呟き、上空を見つめる。


終焉の悪魔から放たれた巨大な闇魔法が、月をも飲み込むようにスピカ達の元へと迫っていた。


「クソ、ここまでかよ!」

「ゴーストちゃんだけじゃどうしようもできないよ!!」

「ぼ、僕はもう死ぬのかな……」

「もっと、皆さんと一緒にいたかったです…………」


それぞれが目の前の絶望に、終わりを悟った。

それはもう、どうすることも出来ない現実。それを受け入れるしか、もう方法は無かった。



その時だった。

「……………………演算反転」

その言葉と共に、突如として巨大な闇魔法は消滅した。


「っ!?」

その声のする方向を五人が振り返った。









少女は一歩を踏み出した。

ただ静かに、その先を見つめながら。


巨大な闇魔法に隠れていた月明かりが、少女の姿を照らした。


「………………」


『私もこれからもずっとリゼットさんの友達だって言い続けます。誰になんて言われようと、私はずっとずっと言い続けます!』



─────こんな私を、友達と言ってくれた。



『人形も人間も、うちにとってはそんなのどうでもいい!!ただ友達でいたいから!!!』



─────人形である私を、受け入れてくれた。



『それでも僕はリゼットと一緒にいる。君があの日、手を差し伸べてくれたのなら、僕はその手を取り続けたい』



─────私の夢を、否定なんてしなかった。



『お前も勝手に諦めてんじゃねぇ。俺が超えるまで立ち続けろ』



─────こんな私に、本気で向き合ってくれた。



『もしあなたがこのままいないままだったら、私達はあなたと友達になれなかった。だから今、幸せよ。あなたと一緒にいられることが』



─────だから応えたい。みんなの夢に、みんなの気持ちに。




『私はちゃんと生きたよ!だから次はあなたの番。だから行こ!みんなが待ってる!』



─────こんな私でも……人形になった私でも、もう一度、それを望んでいいのなら……


──────────今、再び……





「傀儡人形《わたし》は、夢を見る」

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