〈10-5〉暴君の秩序
場面は切り替わり、リゼット達へ。
「やっと着いたーーー!!」
「ここがオルド大国か、ロドモンテ以上の規模はありそうだな」
メルティ達が向かう中、リゼット達は既にオルド大国へと到着していた。
大国と呼ばれるその国のあまりの広さに、全員が目を丸くして周囲を見渡す。
「で、でもここって敵の本拠地みたいなものだよね。なんかみんなの視線が怖い気がする……」
「ヴェーターの言う通りね、まるで歓迎されているという雰囲気を微塵も感じないわ。それどころか……」
スピカは自分達を見つめる人達と視線を交わす。
その人々の視線はまるで、見知らぬ人を追い払おうとするかのような鋭い目つきだ。
「とりあえず、辺りを見て回りますか?もしかしたらワクスに関する情報が得られるかもしれませんし……」
「いいえ、まだよ」
ラミアの提案に、スピカが口を挟む。
彼女はただ地図を眺めていた。
動く四つの光点が、オルド大国の付近へと近づいていく。
「もうそろそろね」
「……………………メルティ達?」
「ええ。彼らと合流し、作戦を練る。ワクスの捜索もそうだけど、まず先に国王を潰す必要もあるからね」
スピカはメルティ達との合流を待った。
しかし、彼らを待っている間に一人の男がリゼット達の前に現れる。
彼は六人を見ると、小さく礼をして言った。
「初めまして、我の名はオルド。この国の国王でございます」
「っ!?」
その瞬間、全員が身構える。
国王オルド。
この国に来た理由の一つであり、倒すべき相手。
その相手が今、突然目の前に現れた。
「観光なり食事なり、なんなりと楽しんでいってください」
オルドは他の人々とは違い、満面の笑みを浮かべてリゼット達を歓迎した。
「ただし…………」
その瞬間、オルドの表情が変わる。
ニヤリと鋭い笑みを浮かべ、言葉を続けた。
「国民以外の魔法の使用は…………」
その瞬間だった。
「うぐぼっ!!!」
突如、拳くらいの大きさの石がオルドの口へと直撃する。
そして、瞬きする間も無いほど一瞬。
リベリオがオルドの前へと現れ、その体を思い切り蹴り飛ばした。
「り、リベリオ!!??」
突然行われた彼の行動に、シキは動揺する。
リゼット達もまた、何が起きたのかわからないという表情で彼を見つめていた。
「話は後だよ、もう戦いは始まってるんだ」
「とっとと迎え撃ちなさい!!ほら、周り見る!!アタシ達の足手まといになったら容赦しないから!!」
その声に、リゼットたちは後ろを振り向く。
そこにはメルティ達が既に到着しており、今にも魔法を放とうとしていた。
「ダチよぉおおおお!!生きていてくれて嬉しいぞぉおおお!!」
そんな中、テンペスはその大きな体で大粒の涙を流しながらアルケーを抱きしめる。
「気持ちわりぃ!離れろ!!」
無理矢理にでもテンペスを引き離そうとするアルケー。
そこに、炎魔法が容赦なく飛んでくる。
「危ないわよ!!!」
メルゴが水魔法でそれを相殺。
「バカなことやってないで、とっとと前向く!ほら、敵は国民全員と見ていいわ、数の差では負けてるけど、実力ならアタシ達に到底敵わないはずよ!」
既にメルゴとメルティは戦いを始めている。
突如として始まった戦闘。その状況をスピカは瞬時に理解し、指示を出す。
「あまりに急すぎて状況が掴めないけど、とりあえず戦えって事ね。みんな、行くわよ」
スピカの指示とともに、それぞれが魔法を展開する。
「……………………傀儡魔法」
リゼットが人形を二十体に複製。
「行っくよー!!霊魂魔法!!」
シキの魔法で周囲に幽霊が出現。
「始めるわよ。天球魔法」
スピカの周囲を天球の軌道が回り始め
「きょ、拒絶魔法」
ヴェーターの魔法が攻撃を無効化。
「無限魔法!!オラァァァ!!!」
アルケーが無限魔法でその拳に宿る炎を大きくし、殴り込む。
「操血魔法!」
ラミアが指を噛み、そこから流れる血を操り血の刃を作り出した。
「さて、俺は国王を討つとしよう。ここは任せたよ」
そう言うとリベリオは目にも止まらぬ速さで走り出し、オルドの元へと向かった。
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「さて、国王オルド。君の魔法がどんなものかは知らないが、お前はオレが相手する」
リベリオはものの数秒で王城の方向へと蹴り飛ばされたオルドの元へと接近。
その腰に添えた剣を引き抜こうとする。
しかし
「我に向かって剣を抜くことを禁ずる!!」
「っ!?」
リベリオが剣を抜こうとした瞬間に放たれたその発言。
それと同時に、今引き抜こうとした剣が突如として抜けなくなった。
「はぁ…はぁ……まさか英雄まで来るとは、我の想定外ですよ」
「すまないけど、君の想定なんて誰も聞いていない。それに、オレは最悪の未来を変えるためにここに来たのだから」
「最悪の未来?何を言ってるのかわかりませんねぇ、我にとっては今この状況が最悪ですよ」
「そうか。だが、悪人の良い未来なんて悪い方向にしかいかないものだ。オルド、君の描く未来はオレが阻止させてもらうっ!!」
リベリオはそう言うと同時に、即座にオルドの懐へと入り込み拳を叩き込む。
「うごえぇ!!!!」
オルドはそのまま後方へと吹っ飛び、後方の壁に叩きつけられた。
「ふんっ!」
さらに追い打ちをかけるようにリベリオが蹴り上げる。
「ほげぇええええ!!」
オルドは天井を貫き、上空へと飛ばされていく。
そしてオルドが雲と同じくらいの高度へと上がったあと、そのまま勢いよく下へと落下していく。
「ほぎゃぁああああ!!」
あまりの落下速度に、全身をブルブルと震わせながら降下していく。
しかし、オルドもただやられているだけではなかった。
落下していく中、彼は宣言する。
「わ、我はリベリオに向かって落ちる!」
その直後。
空を見上げていたリベリオが、不自然にオルドが自分の元へと落下していくのを見た。
「なるほど。大体予想は出来ていたが、つまりそういうことか」
リベリオはそう呟くと、落下してきたオルドを上空で掴み、そのまま投げ落とした。
「ぎょえぇえ!!」
思い切り叩きつけられた勢いで、オルドは血を吐きながらその場に倒れ込んだ。
「ぜぇ……ぜぇ…………」
オルドの身体は既にボロボロだった。
その身体でリベリオに向かって魔法を放とうとする。
形成された鋭い土の刃が、リベリオに向けて放たれる。
そして、それと同時に
「我の魔法は……」
そう言いかけた瞬間
「言わせないよ」
「ぶぐっ!」
と、リベリオは飛来した土の刃を蹴り返す。
反転した刃が、オルドの頬を深く抉った。
「君の魔法、それはルールを与える魔法だね。自分が宣言したルールをそのまま付与させることが出来る。言うならば……秩序魔法、と言ったところかな」
「はぁ…はぁ………流石は英雄様ですね……。そう、我は現象や行動にルールを与えることができる……。他人の結果そのものを命令することは出来ずとも、その過程を自在に塗り替えることだって可能です……」
「それは厄介な魔法だ。だが、言わせなければいい話だ」
「さて、それはどこまで通用しますかね…………英雄リベリオ」
満身創痍の身体で、オルドはゆっくりと起き上がる。
再び見つめ合う二人。
そして再びオルドがその口を小さく開くと同時に、リベリオがオルドへと接近した。




