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WitchDoll〜傀儡人形は夢を見る〜  作者: うつろ
Chapter-10【オルド大国編】

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〈10-2〉彼の記憶

少し前。


「ちょっといいかな」

そう声かける青年の声に、三人が後ろ振り向く。


「なに?アタシ達に何か用……って、リベリオ!?」

「うお!!英雄様のお出ましじゃねぇか!!」


とある場所で、リベリオはメルティ達と合流を果たしていた。


「とある六人組から君達の捜索を頼まれていてね。お互い顔は知ってるから、探すのもそんなに苦労しなくて助かったよ」


リベリオの発言に、メルティは心当たりしか無いとでも言わんばかりの表情を浮かべる。


そんな彼を前に、リベリオは首元から小さな首飾りを三つ出す。

それを三人に一つずつ渡した。


「これは何?」


「あの六人組から預かったものだ。探知魔法が仕込まれていると聞いたのだが、魔法の使えないオレにはよく分かってなくてね」


「はぁ!?探知!?アタシたちを探知するためにこんなもん渡すとか、あいつら悪趣味にもほどがありすぎるわよ!!」


この首飾りの効力を知ったメルゴが、あまりの気味悪さに咄嗟に投げ捨てようとする。

しかし、その手をリベリオが即座に止めた。


その隣でメルティは冷静に首飾りを見つめ、口を開く。


「これを渡すってことは、つまり僕達との合流を図っているってことだね」


「話が早くて助かるよ。彼女達はたしかオルド大国へ向かうと言っていた」


「なるほど、オルド大国か……。わかった、それならこちらから下手に探すより、同じ場所に向かった方が早く合流できそうだ。これはありがたく受け取っておくよ」


そう言うと、まず初めにメルティが首飾りを身につける。


「ダチと会えるってことか!!心踊るじゃねぇか!!!」


続いてテンペスも、アルケーに出会える楽しみを胸に、その首飾りを握りしめた。


そして最後に

「どうせ嫌だと言ってもやらされるんでしょ!わかってるわよ、付ければいいんでしょ付ければ」


と、半ば嫌々そうに首飾りを身につけた。



「これで俺の任務は完了だな。じゃあ俺は行くとするよ」

「リベリオはこれからどうするんだい?」

役割を終え、その場から立ち去ろうとするリベリオにメルティが問う。


「そうだな……。オレは引き続き、ワクスの捜索に向かうつもりだ」

「ワクス?」

メルティが僅かに眉を寄せる。

聞き覚えのない名前だった。


「あぁ。アーカーシャ教団、司祭長の名だ。まだ居場所すら掴めていないんが、次はリナルド辺りを……」


そう、リベリオがそう言いかけた時だった。


「それは駄目だよ」


突然聞こえてきた声に、リベリオの言葉が止まる。

メルティ達も一斉に声のした方向へと視線を向けた。


そこには、一人の少年が立っていた。

「エメリア?」

リベリオがその名を口にする。

「久しぶり…って言えばいいのかな」


いつもと変わらない小さな身体。

けれどその表情はどこか暗い。

まるで、酷く長い悪夢からたった今目を覚ましたかのように暗く、そして真剣な瞳をしていた。


「その選択は、間違っている」

エメリアはゆっくりと四人へ近づいていく。

その視線は、真っ直ぐリベリオへと向けられていた。


「リベリオ。ワクスを探しに行くのはやめて」

「理由を聞いても?」

「うん」

エメリアは短く答える。


しかし、それ以上の言葉が続かない。

何かを思い出すように、ほんの僅かに俯く。

脳裏に浮かぶのは、先程まで目の前にあった光景。

滅びた大国。

積み重なる人々の死体。

そして、数え切れないほどの人形を従え、ただ一人空に立っていた少女。



『……………どうして、私は、死ねないの…』



エメリアは小さく息を吐いた。

もう二度と、あんな結末には辿り着かせない。


「どうしたの?」


黙り込んだエメリアへ、メルティが声をかける。

「あぁ、ごめん。ちょっとね」

エメリアは顔を上げた。


「説明するより、見てもらった方が早いと思う」

「見る?」

「うん。ボクの記憶を」


その言葉に、メルティ達の表情が変わる。

エメリアの魔法を知っている四人には、その言葉だけで何をしようとしているのか理解できた。


「僕達に追憶魔法を?」

「うん。これから起こる出来事を、君達に直接見てもらうために」


その声には、普段のエメリアには無い重さがあった。

四人ともそれを感じ取ったのか、それ以上は何も言わなかった。


少しの静寂の後、リベリオが静かにエメリアを見つめて言う。

「それを見ることで、オレがワクスを探しに行ってはいけない理由も分かるのか?」


「それも、見ればわかる。それに、君の力が必要だから」


リベリオは少し考えた後


「なるほど、わかった。ならオレは見させてもらう。君達も同じでいいかな」

リベリオの言葉に、メルティ達は小さく頷いた。


そして再び、エメリアへと視線を向ける。

「全員合意みたいだ。見せてくれ、オレ達の知らない世界の記憶を」


今ここにいる三人が死んだことも、オルド大国が滅びたことも。

そして、あの少女が壊れてしまったことも。


言葉だけではきっと伝えられない。

だからこそ、記憶を見せるのが一番のやり方だと。


「始めるよ」


エメリアが静かに手を伸ばす。


「追憶魔法」


彼が魔法を唱えた瞬間、世界が変わり始めた。



足元の感覚すら失われていく中、メルティは咄嗟に目を閉じた。

そして次に目を開いた時。


「ここは…………」


そこに広がっていたのは、先程までいた場所ではなかった。

見覚えのない景色。


「ここは…オルド大国?」


先程までいた場所の景色とは一変し、そこはオルド大国の景色を映し出していた。


そして、エメリアが告げる。

「ここは僕の記憶の中。今からみんなに見せるのは、夢でも、幻でもない。全部、本当に起きたことだよ」


メルティは眉をひそめる。

何を言っているのか、まだ理解できない。

そんな彼へ向けて、エメリアは告げた。


「この国は一度……」

一瞬、言葉を詰まらせる。

そして少し俯いた後、再びメルティ達を見つめて口を開いた。


「滅んでる」


「は?」

その言葉に、思わずメルティが声を漏らす。

メルゴも、テンペスも、そしてリベリオでさえ、小さく開いた口が塞がらなかった。


「正確には、今みんなが生きているこの世界は一度巻き戻された世界なんだ」


「巻き戻された?」


「うん」


メルティ達の表情が変わる。

巻き戻された世界。つまりメルティ達は知らないうちに時間を巻き戻されているということだ。


「ここからは、オルド大国で起こった出来事を再生する。君達がどんな結末を迎えるのか、それを見て欲しい」


そういうと、記憶の中の世界の映像が流れ始めた。

過去の光景が、記憶の中に再現されていく。


失われた世界。

この先に待つ、最悪の未来。


オルド大国で何が起きたのか、メルティ達はその結末を知ることになる。

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