〈10-1〉彼が見たもの
もう、遅かった。
大国と呼ばれたそれは既に跡形もなく滅び、人々の死体がそこに転がる。
そしてその上空に立つ、たった一人の少女。
数えるだけで目が混乱する程の大量の人形を従え、その中央に立つ少女の瞳に光は無い。
淡い金髪が月の光に照らされ、まるで神々しくも見えてしまうくらいだった。
どこで間違えたのだろう。
どうしてこうなったのだろう。
この結末は、少女にとってあまりにも残酷だった。
「…………………………」
少女はただ、滅んだ国を見つめる。
かつての友達も、もうどこにもいない。
全てを失った少女はただ、その場から一歩も動かなかった。
まるで、壊れてしまった人形のように。
「遅かった……みたいだね…………」
そんな光景を見つめる少年が一人。
エメリアだ。
「これはもう…僕でも無理かもしれない……」
エメリアは追憶魔法で記憶を消すことができる。
けれど、それはエメリア自信が目撃した記憶しか消すことができない。
既に終わってしまったこの光景はもう、元に戻すことができない。
「………………」
エメリアの存在に気付いた少女が、感情を失った瞳でただ見つめた。
「…………どうして」
「っ!?」
少女がエメリアへと体を向けた瞬間、彼は驚愕した。
少女の胸にぽっかりと空いた穴、欠損した左腕、そして顔の半分は既に無くなっていた。
よく見れば両足も既に欠損している。
死にたくても、死ねなかった。
「……………どうして、私は、死ねないの…」
その光景を目に、エメリアは走り出した。
その場から逃げるように、ただひたすらに。
「……………………」
そんな後ろ姿を、少女はただ沈黙の瞳で見つめる。
「…………どうして、こうなったんだろう…」
その日、少女の心は完全に失われた。




