〈9-10〉進む意志
シャルルマーニュの街は光とともにその姿を変え、崩壊した街へと化した。
そんな中残されたリゼット達は、宿があったであろう場所に集まる。
「みんな無事でよかったぁぁあああ!!!」
今にも泣きそうな顔でシキが叫ぶ。
「で、でも急に街が姿を変えるだなんて……ビックリしたよ」
「何がどうなってんだか……。俺にもさっぱりわかんねぇよ」
「幻術系の魔法か何かでしょうか」
突然の出来事に、何も知らないヴェーター達は未だに戸惑いを隠せない。
そんな中、唯一この街の真実を知るリゼットは街の光景をただ沈黙の表情で見つめていた。
「………………」
ただ静かに、見つめる。
「リゼット?」
「………………ん?」
そんなリゼットにスピカが声をかけると、リゼットはその声に反応し振り返る。
「心当たりがあるのかしら?何か知ってそうな顔をしてるわよ」
「……………………うん」
それからリゼットは時計塔の中で起こった出来事を話した。
この街が永遠の時間を繰り返していたこと
それは、時計塔の中にある心象世界の中の人物が街を守るためにしていたこと
そして、それでも自分は先に進むことを決意し、永遠の時間を止めたこと。
それは誰かにとっては間違った選択かもしれない。
けれど、それでもこの街の想いと共に進み続けることを選んだことを。
「永遠の時間って、それ止めなきゃ街は崩壊せずに済んだんだろ。なんで止めちまったんだよ」
リゼットの選択に、アルケーが口を挟む。
そんな彼の瞳を、リゼットはただ真っ直ぐ見つめた。
「………………夢の先に、進むため」
「は?」
「…………たとえ永遠の時間が流れて、平和な日々が続いていたとしても、それはきっと本当の平和じゃない」
リゼットの言葉に、アルケーが目を細める。
「………………だから、先に進む。この街も、街の人たちもきっと、先へ進もうとする意思があったはずだから」
先へ進もうとする意思。
それは、夢を追い続けるリゼット達もそのうちの一人だった。
それがどんな夢であろうと、どんな結末を迎えようと、夢を追い続けたという意思はそこに在り続ける。
「そうか。お前がそう選んだなら、俺は何も言わねぇよ」
アルケーは視線を逸らして言う。
「私もリゼットの選択に賛成よ。だって今日が永遠に続くだなんて、成長できないのと同じじゃない」
続いてスピカもリゼットを見つめて言う。
「うちも!!それに、この街のゴーストちゃん達はみんな悲しい顔なんてしてないもん!!!」
「ぼ、僕も賛成。街が無くなっても、想いまでは無くならないから」
「私もです。たとえそれが間違った選択だったとしても、リゼットさんにとっては正しい選択だって思ったんですから。だから私はリゼットさんの選択に賛成します」
シキも、ヴェーターも、ラミアも。
みんながリゼットの意思を尊重した。
「…………………………」
苦しいほど胸があたたかい。
結果から見れば、自分はこの街を終わらせてしまったのと同じなのに、それでも皆がそれを認めてくれる。
自分を受け入れてくれている。
「………………ありがとう」
今ただリゼットにとって、五人の姿がまるで陽の光のように眩しく感じられた。
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「さて」
シャルルマーニュの奥地にて、まずスピカが口を開く。
「いよいよオルド大国ね。ここからまっすぐ進めばすぐに到着するはずだわ」
スピカの言葉に、それぞれが息を飲む。
アストルフォを出てから、崩壊した街を見てきた。
そして、それぞれの想いをこの胸に預かってきた。
もう、後戻りは出来ない。
「オルド大国かぁ!!下部組織とはいえ、本拠地に侵入ってなるとなんかドキドキするね!!!」
「テメェのその楽観的思考が羨ましいくれぇだよ。でもまぁ、殺るってんならガチで行くぜ」
「もちろん僕も同じ気持ちだよ。僕はもう、あの時の臆病な自分とは違うんだって証明するためにも!」
「私も皆さんについて行きます。皆さんの隣に立つことが、私の何よりの夢ですから」
一人一人がオルド大国に向けてその意気込みを口にする。
そして
「……………………行こう」
たった一言、リゼットは声を発した。
リゼット達は、オルド大国へと続く道を見つめる。
この先に待つ運命は誰も知らない。けれど、先に進むと決めた以上、ただその先を目指す他に選択肢は無い。
それぞれの、夢の果てへと辿り着くために。
「リゼット!よろしくね!!」
「……………………うん」
シキの言葉に反応し、リゼットが人形を展開。
風魔法でそれぞれを空へと浮かせようとした
その時。
「ちょっと待って!」
と、スピカが口を挟む。
「これを見て」
スピカが指差したのは一枚の地図。
そして、そこに映るのは小さな紫色の四つの光点。
それが一つではなく四つになっている。
つまりそれは、リベリオがメルティ達と合流したことを意味していた。
「え!!メルティ達が見つかったってこと!?」
「絶対とは言えないけれど、十中八九そういうことになるわ。そして言った通り四人ともオルド大国に向かってる。私達もこのままオルド大国に向かうから、そこで合流って形になるわね」
紫色の光点は確かにオルド大国へと向かっていた。
リベリオ、メルティ達との合流。
そして待ち受けるオルド大国の国王。
彼がどんな人物かは誰にも分からない。
けれど、皆がここにいる。
信頼し合える友達が、すぐ隣にいる。
そしてメルティやリベリオ達もそこに加わる。
絶対とは言えない。けれど今は何故か、負ける気が微塵もしなかった。
「さて、私たちも行きましょう」
スピカがそう言うと、再びリゼットが人形を展開し、風魔法で六人を空へと浮かせる。
向かう先はオルド大国。
六人は崩壊したシャルルマーニュの街とそれぞれの想いを背に、ただ真っ直ぐに進み続けた。




