襲撃者
またもや更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
今後も遅れる事があるかもですが、必ず完結させるつもりですので宜しくお願いします。
放送から察するにまだ魔物はカルディアの結界を抜けてはいないらしい。
そんな中、俺は赤神の過去を聞いていた。
「だから血相変えて飛び出したのか、赤神のヤツ」
人型魔物に親友を殺されたこと。
それ以降、人型魔物に復讐することを目的に生きていること。
別に、それらの行為については口出しするつもりはない。
復讐を否定する気も、止める気もない。
ただ、
『茜の代わりに生きている私は、戦って勝ち続けるのよっ』
その理由を、亡くなった友に押し付けているのが気に入らない。
それこそが友の願いかの様に。自分はあくまで、友の代わりにやっているのだと。
託された想いを捨てるばかりか、その本人すらも貶す行為。
それは、まるで昔の自分を見ているみたいで...
「イライラしてるのは分かるけど、今それどころじゃないって知ってるのかしら、このバカ?」
「...すまん」
「雄護くんも反省してるみたいですし、お説教は後にして。これからどうします?」
優花の提案に、今は意識を切り替える。
取り敢えずは魔物をぶっ飛ばすのが先だ。
「こんな襲撃はよくあることなんですか?」
「いえ、この様な襲撃は初めてです。普通、魔物が出現するときには必ず門と言う魔力場が発生します。門の発生と魔物の出現にはタイムラグがあり、門の魔力を探知することで我々は常に魔物の出現を予測していたのですが...」
「今回は門を使わずに現れたらしいですね。今はカルディアの結界で食い止めているので暫くは大丈夫ですが、どこまでもつか...。こんなこと、今まで聞いたこともない」
優人の質問に、東宮と玄樹が答えてくれる。
今までにない出来事が、俺達の来ている時に偶々起こるとは考えにくい。十中八九、誰かの意思が絡んでいるだろう。それが博士なのか、他の誰かなのかは分からないが。
「私は一先ずセントラルに向かい、詳しい状況を確認してくる。本来は東宮君達四神に、周囲の魔物の対処に当たってもらうのだが...」
龍道寺さんが言葉に詰まる。
何故なら、その四神は今全力が出せない状態だからだ。
「どっかのバカ火力はデコピンでぶち抜くし、」
「どっかのエロ勇者は欲望に忠実ですしね」
同時に目を逸らす二人。
あちらから提案された模擬戦だが、魔術基盤まで壊されるとは考えていなかったはずだ。
赤神は冷静じゃないし、話によるともう一人の四神は仕事で日本を離れているらしい。
現状、カルディア日本支部の最高戦力全員が動けないのなら、
「俺達が動くべきだろ」
四神が動けない半分は俺達が原因だし。
「すまない、後で必ず謝礼をしよう。今は、カルディアを守るために力を貸してほしい」
「気にしないで下さい、龍道寺さん。家の兄も原因の一人ですし、こう言うのには慣れてますから」
ねっ?と聞いてくる優花に3人共が頷く。
敵に囲まれるなど、ストウスウェイトではよくあることだった。
むしろ、味方がいる今はマシな方だ。
「では、君達には東西南北に設置されている門を守ってほしい」
「門を?」
「カルディアの結界は門を起点とし、一つの防御魔術として結界を発動している。この結界は仮に穴を開けられてもすぐに修復されるのだが、門を破壊されると結界を発動出来なくなってしまうんだ。門自体も頑丈で結界も張られているが、それ以外の場所より弱くなっている」
あえて弱点を明確にすることで魔術効果を上昇させる方法は、ストウスウェイトでもされていたことだ。
その弱点を他の魔法で補い、更にその弱点も他の魔法で補う。
その様にして結界を重ねる多重結界が王国では使われていた。
魔法と魔術は似ているようで違っている。それはストウスウェイトでは魔術基盤なんて物が無くても魔法を発動できることからも明らかだ。
多重結界の技術が博士をもってしても出来ないのか、はたまた、わざとしないのか。
俺が疑惑に駈られている内に、話が纏まったらしい。
「では、僕、舞ちゃん、雄護の3人で門を一つずつ。カルディアの魔術師の人達で残りの門を守るってことでいいですか?」
「そうしてくると助かる」
「私達も魔術基盤の自己修復が済み次第すぐにっ!?」
東宮の言葉を遮り、突如南方から感じられる魔物の魔力が跳ね上がる。
同時、鳴り響く轟音。それは一回目より大きく、大地を揺らす。その音に紛れ、硝子のの砕ける様な音が聞こえ...って、この音!?
『南門が人型魔物により破壊されましたっ!!そこから大量の魔物が入り込んでいますっ。手の空いている魔術師は至急南門へ向かって下さい!!』
「馬鹿なっ!?結界が破られたですって!?」
『更に門が一つ破壊されたことにより、結界の出力が3割減っ!!このままでは、1時間持ちませんっっ!?』
叫ぶ様な声が、この危機的状況を何よりも語っている。
東宮が驚愕していることから、それ程結界が信用されていたのだろう。
「皇君っ今すぐっ」
「龍道寺さん」
切羽詰まった龍道寺さんの言葉に被せるように、俺が質問をする。
「このカルディアの街は直径どのくらいですか?」
「ち、直径っ?10㎞程だと思うが...」
「分かりました」
目を瞑り、周囲の魔力を探る。
無数に感じる魔力はカルディアの魔術師だろう。魔物の魔力は数が多くて1つの塊も様に感じられる。
この不安になる魔力を対象に、拒絶する結界を作る。10㎞なら十分射程範囲内だ。
カルディアの結界は確かに優れていたが、
「世界の守護者を舐めるなよっ」
『もう、駄目だ。私はここで死ぬんだ。ゴメンねお母さん、先立つ娘を許して。貯金は老後に使っていいから。お父さんはハゲろっ...もう!何よ、えっ?結界が!?』
お父さんかわいそう。
『カ、カルディアを覆う様に新たな結界が出現っ!魔物を食い止めていますっ。各部隊はカルディア内に侵入した魔物の殲滅。南門に居る人型魔物には四神・朱雀が応戦しています。援護に回って下さいっ!...ヤッター私助かるかもっ。お母さん、今度顔見せに行くからねっ』
ナチュラルに父親無視するな、この子。
「この結界、もしかして青崎さんが?」
「あぁ。結構魔力を籠めて作ったから、カルディアの結界より数倍は強度があるはずだから、これで外の心配はしなくていい。それより問題は赤神のことだ」
あの精神状態でまともに戦える訳がない。
簡単に負けるとは思わないが、
「人型と応戦中って言ってたわよね」
戦っているのは人型魔物だ。カルディアの結界を破壊した辺り、油断は出来ない。
「雄護と優花が向かってくれるかい」
「任せとけ。あのバカも人型も纏めてぶっ飛ばしてやるよ」
「なんで味方もぶっ飛ばすんですか...」
そのくらいしなければあの分からず屋には伝わらない。
俺もそうだったしな。
「レイランちゃんを頼みます。避難誘導が済み次第、私達も援護に向かいますので。人型については未だ謎だらけです、十分に注意してください」
「舞さん達もお気をつけて。...門を燃やしたら駄目ですよ?」
「...行きましょっ!」
「スルーっ!?」
「はぁっ、はぁっ、クソッ」
「なんだい?威勢がいいのは最初だけかよっ」
目の前に、殺したかった相手が居る。
今までの目標。
この日のために、全てを捧げてきたのに。
「なんでッ!」
「なんでって、お前が弱いだけだろ?その魔術基盤を使っておきながらこの程度とは。ガッカリだよ。あの方が言ってた救世主が、こんなにも雑魚だなんてねぇっ!!」
「グゥッッ」
無造作に振るわれる拳すら、まともに防ぎきれずに殴り飛ばされる。咄嗟に炎を纏わせた腕で受けるが、腐食の効果を遅らせることが精一杯。それも、そろそろ限界が近づいている。拳を受けた腕が腐りかけてきた。
「なんで、なんでよっ」
努力した。
それは、胸を張って言える。
同い年の子が遊んだり、お洒落したり、恋したりしている時間を全て訓練に費やした。
あの瞬間は忘れていない。
目の前の男は、あの時の魔物とは違う相手だ。
見た目20歳前後のこの男は、あの時のヤツより弱いだろう。
なのに、勝てない。
強くなった。誰かに庇われるだけの、弱い自分は殺したはずだったのに。倒れ伏すことしか出来ていない。
あの子が居たら、きっとこんな相手すぐに倒していたはずなのに。
「噂の救世主。ローゼルの爺さんから生き残ったって聞いてたから、楽しみにしてたのにー。これじゃあ...あれぇ?」
やる気の無い声に感情が籠る。
それも、どうしようもなく嗜虐的な感情が。
「あれぇ、あれあれっ?なーんでこんなとこに子供が居るんだい?危ないじゃないかい」
「ひっ!?」
崩れた家の残骸に隠れるようにして居るのは、7歳程の女の子。
この辺りは孤児院があったはずだ。保護者と逃げる途中ではぐれたのだろう。
周囲の魔術師は未だ魔物を相手取っており、女の子に気づいていない。
「ダメじゃんか、すぐに逃げないと。そうしないと、生きたまま腐って死んじゃうよ?」
人型魔物のターゲットが変わる。
震える少女。
近づいてくる死の気配。
「こんな風にさぁっっ!!」
「ッ!?」
迫る拳を防げる自信はない。
起死回生の一手も持っていない。
だけど、何故か気づいたら女の子の前に飛び出していた。
その状況が、どうしてもあの日と重なったから。
その後ろ姿に、茜が見えた気がした。
「なぁ、赤神。お前今なんでその子を庇ったんだ?」
「...えっ?」
「誰だっ!?」
腐食の魔力が籠った拳。
それが背中に直撃したと言うのに、まるで何もなかったかのように私に聞いてくる。色々と意味が分からず、かえって冷静になってきた。
「その子に、自分の代わりに戦ってもらおうとか、仇討ちしてもらうんだとか思っていたか?」
「そんなこと...」
私だって、何故動いたか理解していない。
ただこの子を救おうとして、
「そんなの思ってなかったろ?助けることに、難しい理由なんてない」
『だ..て、私たち...友だ』
友達だから、助けただけ。
その事を茜は最初から言っていたのに。
私は、それを
「ただ、大切な人に助かってほしかったから」
~~っ!!
「咄嗟に誰かを助けられる人が、自分の為になんて重荷を背負わせようと思うわけないもんな」
「急に出てきてナニ語ってんだよっ!!お前ぇぇ」
人型は絶えず背中を殴り付けているが、この男は相手にはしない。
「重荷を背負わせているのは、自分自身だ」
あの人はきっとこれを望んで自分を助けたのだと。
だったら、助けられた自分はそれを叶えるべきだと。
「復讐自体は否定しねぇよ。けどな、それは自分の感情であって死んだ人のものじゃない」
魔王を殺したいと言う思いも。
人型魔物を殺したいと言う思いも。
全て自分の醜い感情からくるもので、託された想いじゃない。
「は、はははっ!そうか、お前があの方が言っていたっ
「さっきからうぜぇっっ!!今は黙ってろ紫パーマ!!」
ヘブッッッ」
ふっ飛ぶ紫パーマ。
仇の一人が低空飛行していくその姿に、しかし目が向かない。
ここに来てから未だ私の目をそらさない男の瞳が何よりも語っているから。
「自分の感情に気づかないふりして。挙げ句、その感情を託されたものだと都合の良い勘違いして。だから俺は負けられないって、バカだろそんなヤツ」
「いろんな理由つけてるけど、結局のところ助けられた自分が何よりも許せないから。自分で自分を痛め付けていた」
そんなこと、茜が望む筈がないのに。
同い年の子が遊んだり、お洒落したり、恋したりして。
私に、友達に幸せを掴んでほしかった筈なのに。
「助けられた事が悔しくて、努力するのはいい。憎い相手に復讐するために強くなるのはいい。けどな、復讐することを誰かの代わりにだなんて言っちゃいけねぇ」
「1から10まで全部自分のためだ。それを認められず、誰かに頼りきる覚悟じゃあいずれ折れるぞ」
「...」
そっか。
私、今までずっと茜に頼りっぱなしだったのか。
あの時から、一人で頑張ってきたつもりだったけど。
結局、私は全然成長していない。
何時も強がって。
ちょっとでも不安になると威嚇して。
子供の頃と何も変わっていない。
これじゃ、この男にバカって言われてもしょうがない。
だけど、
「なぁ、赤神。お前の覚悟は何処にある。何を求め、なんのために戦う」
この変態に言われてばかりは腹立つし。
「私は、あの人型魔物を燃やし尽くす」
「その心は」
「知らなかった?私、負けず嫌いなの」
「...そりゃ、初耳だ」
ゴメンね、茜。
これまで散々迷惑掛けて、頼ってきたけど。
大丈夫。これからは一人でちゃんと歩くから。
「...おい、僕は無視か?」
「ん?あぁ、待たせたな、紫パーマ。言いたいことは言ったから、もう出てきていいぞ」
「...貴様、バカにしてるのか」
「当たり前だろ?そんなことも分かってなかったのか、紫バカパーマ」
「あっはっはっ殺すっ!!」
膨れ上がる魔力。
それにともない、人型魔物の周囲が腐り始めるが、何故か恐怖が湧いてこない。
「赤神、お前は紫バカパーマを燃やす事だけを考えろ。ヤツの攻撃は俺が防ぎきる」
私の肩に置かれた手から感じる魔力は、何よりも圧倒的で、とても心地よかった。
「ねぇ、雄護」
「あん?」
「これが終わったらさ、聞かせてくれない?あんたの覚悟が何処にあるのか」
「...悪いな、それを聞くにはまだ好感度が足りねぇ。もちっとお淑やかになってから出直しやがれ」
「コイツっ...」
人をボロカスに言っておきながら、自分は黙秘とか。
「言ったでしょう?私、負けず嫌いなの。絶対に聞き出してやるから覚悟しなさい」
「変な所で、覚悟させるなよ」
笑いながらそう言って、会話を終える。
目の前には、魔力を球体に集めている人型魔物。
その力は莫大だけど、なんでだろ?
負ける気がしない。
「起きろ、南方の守護者」
想いを炎に。
防御に回していた魔力も剣に籠めで。
溢れる炎は、亡き友に捧げる誓いの証。
見ててね、茜。
私、まだまだ駄目なところも多いけど。
何時か、きっと。
「全部っっ消えろぉぉぉっ!!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
貴女の分も、幸せに、素敵な女の子になるからっ。
「...なーにナチュラルに口説いているんですか?マリーさんにチクりますよ?」
「口説いてねぇよ。第一、あの子はこんなことじゃ怒らないし」
きっとマリーは、赤神を見捨てる方が怒るだろうし。
「訂正。舞にチクりますよ?」
「それは止めてくれマジで」
きっと舞は、何言っても燃やすだろうし。
「...はぁ。舞もその辺は理解しているんですけどね。それとこれとは話が別ですよ。好きな男には想いを偽らないって、決めてますから」
人助け。うん。それは知っている。けど、だからって想い人が違う女の子に優しくしていたら、ムカムカしたったしょうがないじゃない。
「って、言うと思いますけどね、舞なら」
舞は舞で、中々に独占欲強いですからね。
そう言う優花の顔は、ニヤニヤしていて。
もう、絶対ばらすんだろうなぁって憂鬱になって。
「ちょっと、何人の事除け者にしてるのよ」
人型魔物を打ち倒した赤神まで絡んできて。
「いえ、別に。貴女達がイチャイチャしているうちに、逃げ損なった女の子を安全なところまで逃がして。帰って来てもまだ、イチャイチャしている人達の話なんてしてませんよ?」
「...貴女、結構言うわね」
うるさくなったけど、こんな空気は嫌いじゃないから。
これで、一件落着かなって思ったとき。
「ッッ!?全員っ伏せろぉぉぉっ!!!」
カルディアに張っていた結界をぶち抜いてやって来た、
「フム。途中で何かにぶつかった気がしたが、勘違いだったか?」
黒紫の髪、同色の瞳。見た目はダンディーなオジサンなのに、何故か見ているだけで泣きそうな程不安になる、その男が。
本当の襲撃者が、現れた。




