昔語り
明日(と言うより今日)はお墓参りなので更新できないかも...
なるべく、早く更新出来るように頑張ります。
その後、大暴れした舞と玄樹を他のメンバーで必死に宥め、レストランの人達に頭を下げまくったあと。
赤神達とはセントラル内で別れ、俺達は今晩一泊をする部屋に戻ってきた。
「それで、これからどうする?」
今後の方針。
魔物やその黒幕をぶった倒すのは確定事項だ。
視線の主、博士とか言うヤツにも話を聞きたい。
それにあたり、
「僕達の事についてどこまで話すかってことなんだけど」
正直、俺達の能力はこちらでも破格の代物だ。
それは赤神達四神...カルディア日本支部において指折りの実力者に与えられる称号を持つ彼女達を見て思ったこと。
まだ、彼女たちの能力をすべて知っているわけではないが、それでも一対一では絶対に負けないと言い切れる。
それに、勇者としての知識も役に立つだろう。こちらの魔物が、ストウスウェイトの魔物と同じだと決まったわけではないけれど似たものには違いない。
それらのことも含め、どこまで伝えるか...
「私は、全てを教えなくてもいいと思う。龍道寺さんは信用できそうだけど、大きい組織は1人の印象だけで簡単には信じちゃいけないし」
「私も舞に賛成です。けれど、龍道寺さん個人に伝える分にはいいのでは?兄さんの勘も信用できるって感じてるんですよね」
「うん。彼は信用できるよ」
これだけ、優人の勘を信じているのには理由がある。
それは優人の能力に由来する。希望を力に変える優人の力はその性質上、希望を感じることができる。無論、100パーセントいい結果が出るわけではないが、勇者時代からこう言う時には方針を決める参考にしていた。
「赤神達にも伝えるって事でいいんじゃねぇか?龍道寺さんも赤神達は信用してたっぽいし。それに、実力を隠しすぎて魔物の相手をさせてもらえないってなったら笑えないだろ」
「...それもそうね。弱く見せすぎてあの女に舐められるのも癪だし」
「それじゃ、明日はそういう流れでいくってことで。今日はそろそろ休みましょうか」
「...そうしようか。ここの部屋には大きめのお風呂もあるみたいだし、先に2人で入っておいで」
...っ!?
刹那にも満たない僅かな時間、しかし培ってきた絆が可能とするアイコンタクト。
『できるよね?』
『もちろんっ』
俺もあの悪夢から何もしていなかったわけではない。
紋章の力を研究し、自分の存在を隠すのではなく世界と同化することで認知されなくなる技を編み出したのだ。この力は魔王の認識すら一時とはいえ欺く程。如何に導師と聖女とは言え、気づくことはできはしない。覗きのために考えた、完璧の技と言えるだろう。
...ただ、一つ見落としていた事として、絆を培ったのはなにも俺と優人だけではなかったと言うことだ。
「私達の目の前でアイコンタクトするとかバカでしょ?」
「兄さん達の考えなんて能力を使わなくてもわかりますよ」
いざ往かん!楽園へ!!
と、脱衣場に入った俺達を迎えたのは、満面の笑みを浮かべた導師と聖女だった。
「そんなに色欲を治療して欲しがったら、言ってくださいよ。遠慮するような仲じゃないでしょ?私達、仲間ですもんね?」
おそらく、この脱衣場一帯を異界化したのだろう。世界と同化する技も、世界そのものを変えられると適応するのに時間がかかる。
...舞のヤツ、魔王と同じ方法で破りやがった。
「最終決戦、魔王がこうやって同化したアンタを見破ってたでしょ?その時、もしもの場合を考えて異界化の魔法を考えたの。まさか魔王も、覗きするために考えた技で一泡吹かせられるとは思わなかったでしょうね」
声音は至って冷静だが、それが逆に怖い。
そして、何故かニコニコしてる優花がもっと怖い。
...普段は舞の影に隠れてるけど、優花も一度キレるとすげぇ怖いんだよな。
だが、忘れるな。俺は世界すら救った勇者なのだ。
この程度の困難、乗り越えずして何が勇者かっ!!
「...流石だな、舞。風呂場と言う一番警戒が緩む場所でも対応してくるなんて。勇者時代の勘は鈍ってないらしい。俺は安心したよ。じゃ、そう言うことで」
「どう言うことよ燃えなさい」
迫り来る爆炎。
しかし、襲いかかる爆炎を甘んじて受けながら、俺は思う。
――――計画通り
そう、先程の会話は舞から逃げることが目的ではない。
あえて舞と会話することで、優花の認識から逃げることこそが目的だったのだ。
現に、俺の横では優人の顔が絶望に沈んでいる。おそらく治療されてしまったのだろう。敵の罠にかかり、数百もの魔物に囲まれた時にすら希望を失わなかった勇者も、実の妹には勝てなかったらしい。
無傷で勝てる戦いなど存在しない。そんなものは、戦いではなく虐殺だからだ。
戦いで問題なのは、どれだけ傷を浅くするか。その点、燃やされた俺は優人より大分浅い。
――すまんな、優人。俺はお前を乗り越えても、未来を歩く――
「じゃ、次はそっちの優人貸して。こっちの雄護渡すから」
「はい、了解ですっ」
やっぱり未来は歩けなかったよ...
翌日。
「大丈夫かい?なんだか顔色が優れないようだが...」
「いえ、お気になさらず。ただバカなだけですから」
「そうですよね?兄さん、雄護くん?」
「...はい」
2人してそう呟くが、その声は死んでいる。
勇者と守護者のプライドを捨て必死に説得をした結果、今度は1週間の治療(隠語)と1ヶ月の奉仕活動で何とか許してもらった。
「そうかい?ならいいんだが。では、昨日の続きを話そうか。今日、話したいのは君達についてなのだが...正直に聞こう。君達は何者なんだい?」
この質問は真っ先に聞かれると思っていたことだ。それを、俺達4人を揃わせて、かつ1日の猶予をくれたのは龍道寺さんの優しさ故だろう。
...たが、この質問の答えはいつ聞かれても決まっている。
「僕達は、勇者ですよ」
さぁ、語ろう。誰でもない、俺達の物語を。
「世界を救った勇者...か」
念を入れ、俺の紋章と舞の魔法であらゆる盗聴や盗撮を遮断したあと、俺達は龍道寺さんや赤神達3人にストウスウェイトでの3年間を語った。
無論、全てを話した訳ではないが大まかな流れは伝えたつもりだ。
「...驚きました。異世界の存在は前から議論されていましたが、時間の流れが違うなんて...」
「それに、世界の敵たる魔王やそれを倒した勇者だなんて」
「本当に、野蛮村伝統の野蛮魔法ではなかったんですね...」
「コイツっ...本気で燃やしてあげようかしらっ...」
この2人マジで仲悪いな。
「なるほど。異世界で3年間も戦い続けたのなら、その強さも納得できる」
少なくない衝撃から立ち直ったのか、龍道寺さんがそう言ってきた。
やはり、俺達が自身の能力や実力を隠していたのはバレていたらしい。
「なら、1つ質問していいかな?君達の話では、こちらの世界に来たときに身体を再構築したのだろう。その時、君達はこちらの時間の流れに会わせるように身体を再構築している。ならば、異世界で手にいれた力や身体能力失われているはずだ。なのに何故君達は力を持ったままなんだい?」
その事は俺も不思議に思っていた。能力や身体能力については舞が何とかしたのだろう、くらいにしか考えていなかったのだが、向こうで受けた傷すら残っていたのだ。
「それは身体をこちらで新しく造った後、私達が経験した事を時間圧縮して造った身体に経験させたんです。パソコン自体は古くても、アップデートしたから中身は新しい見たいな?そのアップデートの内容が中身だけではなく、外身自体の傷なんかも含まれるだけであって」
だから、傷や筋力、各々の能力なんかは失っていないんです。
そう言う舞の言葉に、龍道寺さんカルディアメンバーだけでなく、俺達も驚いていた。
コイツが異世界転移の魔法を創ったのは魔王との戦いが終わった後の2時間程度の間でだ。正直、全く違う世界に跳ばされることも考えていたのだが。そんな中、ここまで考えていた舞に素直に感心した。
「お前...」
「な、なによ?」
「燃やすことしか能がない、腹立つヤツ絶対燃やすウーマンだと思ってけど、俺が間違ってたよ。ちゃんと考えることもできるんだな!!」
「いや、間違ってないわよ?」
じゃあ、なんで燃やすんだよ...
「なるほど、そう言うことならすぐにでも魔物討伐に参加してほしい。何せ、世界を救った勇者の皆さんだ。こちらからお願いしないとね」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
これで話は付いたと思ったのだが、納得しないヤツもいるらしい。
「...待って下さい」
声をかけてきたのは赤神だった。
「彼らの言うことは本当の事なんでしょう。しかし、だからと言っていきなり魔物討伐に参加させるのは、他の者も納得いかないでしょう」
カルディアでは、魔物討伐に参加されることはとても名誉なことらしい。それゆえ、討伐部隊に選ばれようと常に努力する者達を先置いて俺達が参加するのは示しがつかない。
と、言うことらしい。
「なので、こう言うのはどうでしょう」
...らしいのだが
「彼らと私達、一対一で模擬戦闘をすると言うのは。それの結果次第では他の者達も納得するでしょう」
赤神の目が語っている。
――これで、心置きなく叩きのめせるっ――
コイツ、まだ自分の魔術が防がれたの根に持ってたのか...
「そうですね、それはいい考えです~えぇ、別にどっかの野蛮ゴリラを合法的にぶっ飛ばせるとか思ってないですよ?」
「...」
「ふ、二人共っ!?ちょっと落ち着いてっ」
だが、これは俺達にとっても都合がいい。
何も心置きがなくなったのは、アンタ達だけじゃないのよ?
舞のヤツとは約束があるからどれだけ燃やされても、文句はない。けど、ほぼ初対面のヤツに暴力振るわれて、仕返しもせずに済ませるほど俺はやさしくないぞ?
本当、野蛮だのゴリラだの、いい加減頭にキテるのよ。
まぁ?折角?異世界から戻ってきたんだし?
少しくらい、私TUEEEE!!やっても許されるよねっ
と、そんな物騒な会話を目線だけでする親友を見て、
「あ、これダメなヤツだね」
「...ま、私がいますから。何かあって大丈夫でしょ」
....たぶん
なんだかんだで似ている親友達に、そんな不安を抱いた勇者と聖女だった...




