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レストラン

俺が謝ったことで、今までの態度が自分達の出方を見るためだったと分かったらしい。

後ろ2人(・・)や龍道寺さんは、頭を上げてくれって言ってくれたが、


「いえ、自分チョーシのってました!!」

今顔上げると、後ろの赤神(おに)に燃やされそうなんだよなぁ...



「それでは、君たちはカルディアと協力してくれると言うことでいいのかな?」


ここで、カルディアに所属するではなく、協力するって言う方にしたところから、龍道寺さんはちゃんとこちらの思いを汲み取ってくれたらしい。

「はい。正式に加入するわけではありませんが、僕達にできることなら全力で当たらせてもらいます」


AAA作戦が終了してから、会話は俺ではなく優人がしている。

そもそも俺がAAA作戦の要(汚れ役)をするのは、どんなに敵対心(ヘイト)を貯めて攻撃されても俺なら耐えられるからだ。


だからって心まで耐えられるわけではないんだけど...


勇者時代。一国のお姫さま相手にAAA作戦を決行し、その結果全力のビンタをもらった時を思いだし、心のなかで涙しているうちに話はついたらしい。



「視線については私から博士に聞いておこう。君達にも、君達の周りにも手出しはさせないと誓う。だから、安心してくれ」

「はい。ありがとうございます」

「君達も疲れただろう。部屋はこちらで用意するから、今日は休んでくれ。詳しいことは明日話そう。あぁ、そうだ。カルディアの街も自由に歩いてもらって構わない。案内は彼女達にさせよう」


出来れば右端の茶髪は遠慮したいんですけど。無理ですかね?







無理でした。



時は少し遡る。


まだ問題が解決したわけではないが、一段落ついたとして俺達は最初に連れてこられた部屋に戻っていた。この部屋は1階層すべてを使っているだけに、部屋数もある。今日はここに泊まる予定だ。

折角なのでカルディアの街に出て、外で外食しようとなった俺達は早速外に出て、早速燃やされた。


なんだこの日本語。


「あなた、よくも龍道寺さんの前で恥をかかせてくれたわね...」

「何一つ嘘言ってないんだけどな、俺」

むしろ何一つ嘘がないことに俺がびっくりしてる。


「うるさいっ!」

「図星つかれたからって燃やそうとするなよ!」




「なんて見たことある風景。昔を思い出すよねっ」

「私、他人から見るとあんなにウザかったんだ...」

「3年目にしてやっと気づいたの?いっつもあんな感じよ。まぁ、舞の場合は雄護君との約束があるから、ちょっと事情は違うけどね。」


「お前ら、呑気に話してないで助けろよ!」

仲間が殺されかけてるっていうのになんて薄情なやつらだ。




その後、ひたすら俺を燃やそうとする放火魔(あかがみ)を、後ろからやって来た東宮と玄樹が止めてくれることで難を逃れた。(玄樹を見たせいで新たな放火魔(まい)が誕生したが、そちらは俺達が止めた)



「この街は全員、魔術師なのか?」

「いえ、全員と言うわけではありません。魔術師は全体の7割ほどですが、単独で魔物(ビジター)と戦えるとなると4割くらいですし。それ以外はこの街で働く一般人です。何らかの理由で魔術を知ってしまったり、魔物(ビジター)によって親を失った子供達を保護しているんです」


「子供を保護...ね」

こういった単語を聞くとどうしても向こうのことを思い出す。

ストウスウェイトで、孤児院は一般的ではなかった。他人のことなど気にするな余裕がなかったからだ。女神を奉ずる教会などが似たようなことをしていたが、それでも数は少なかった。


けれど、誰もが自分のことしか考えられない世界で、彼女だけは自分以外を見ていた。

だからこそ、貧しい中にも確かな笑顔があったのだろう。


...もう終わったことなのに、うだうだと引きずるのは俺が女々しいからか。

少なくとも、今想い出に浸る訳にはいかず、東宮の説明に集中する。


「この街には一通りの公共機関は揃っていますし、この街で産まれ、この街に骨を埋める人も少なくありません」

「でも、こんな規模の街がよく公になりませんね」

「街の大きさ自体は東京都の半分くらいですが、回りの空間を歪めることで土地を大きくしているんです。実際はもっと小さい土地なので隠せるのです。...この空間を歪める魔術も博士の考えたものですが」


その話を聞いて、嫌な予感がする。


「...確か、カルディアの設立に博士は関わったんって言ってたけど、それって街の設計にもなのか?」

「はい。この街全体が一つの防御魔術を発動するようになってまして。建物一つ一つの設計すら博士が考案したとかなんとか」

「...そうか」


年齢、名前が共に分からず、現在を遥かに上回る魔術の知識。オマケに異世界の建築にも携わる謎の女。


「これもうコイツが黒幕で確定じゃね?」

「確かに、これ以上ないくらいに怪しいわよね。もし、会えたら話をする前に燃やした方がいい気がするわ」

「...一応、私達の上司なのでそういった話は私達に聞こえないところでしてもらえます?」


言うな、じゃない辺り、東宮達も怪しんでるんだろう。


「そもそも、今回私達がアンタ達に接触したのだって博士の命令だからね」

「普段は滅多に姿を現さない人なので、本人自ら命令されたときは驚きました。」

「そのせいで~こんなゴリラと出会うハメになるなんて。なんて不幸なんでしょう」

「ハ?」


舞さん、人類がしちゃいけない顔になってますよ。





その後、俺達は東宮のおすすめするレストランに来ていた。

今知ったことだが、赤神達はカルディア日本支部でもなかなか地位のある人物らしく、晩飯時を少し過ぎたとは言え満員近く埋まっていても個室を用意してくれた。

何でも日本支部最強の守護者たる『四神』の称号をもらっているとか...


「しかし、四神とはね...ねぇ、素朴な質問なんだけど、恥ずかしくない?」

「って『勇者』が言ってるけどそこんとこ妹としてどうよ?」

「ぶぅーめらん、ぶぅーめらん!」

優花、本当に20歳?



「まぁ、そう思わないこともないですけど、魔術なんてものがありますし...それにそう言うイメージって案外大切なんですよ」

そう言う東宮の顔は少し赤いので、本気で恥ずかしい思っているらしい。

しかし、そこで思わぬところから肯定の意が上がる。


「あ、分かる分かる。明確にイメージしないとすぐに発動しちゃって大変なのよねー」

「すぐに...発動?」

と、思ったが同意は得なかったらしい。


「そもそも、あなた達の言う魔法ってどうやって発動してるの?術式を書いているでもないし、詠唱してる気配もないし」

「どうやってって言われてもねぇ。こ~、頭の中でこんな感じかなーて思った事をていやーって感じ?」

まるで意味が分からんぞ。


だが、舞がそんな説明しかできないのにも理由がある。

それは、俺達がストウスウェイトに召喚されたときに授かった能力にある。


俺は、あらゆる危機から仲間を守る守護の力。能力は守護結界を創り出すこと。身体能力の強化や魔力の吸収は使用者を守る、と言う結界が持つ守護の力の延長に過ぎない。盾で殴る、みたいな。


優人は、あらゆる絶望をはね除ける希望の力。能力は使用者や回りの意思ある者の希望の思いを力に変えること。この力って言うのは文字道理『力』であり、身体能力や魔力、思考能力などあらゆる力が思いの強さに比例して上昇する。魔王との最終決戦時、全生命の希望を背負ったコイツは凄まじかった。


優花は、あらゆる傷を癒し救う力。能力は自身が怪我と認識したものを無機物有機物問わず治療できること。無機物有機物問わずってことは折れた剣や砕けた鎧、精神病なんかも優花基準で治療される。流石に死んでしまった人や、時間が経ちすぎた物は治療ではなく蘇生のためできないらしいが、それでも破格の能力である。色欲を治療して男を不能にする力は、当時の王国最強騎士団すら恐怖に震えさせたほどだ。


そして、舞の能力はあらゆる災厄を迎撃する力。能力は自身の想像した魔法を創造し発動する力。『発動する』までが能力なので舞は莫大な魔力を持っている。一見最強に近い能力だと思われるが、実はこの中で一番扱いづらい能力である。

舞はこの能力故、思っただけで魔法を発動することができる。発動することができてしまう(・・・・・・)

思っただけで発動すると言うことは、『あ、こいつウゼェな』などの敵対感情を抱くだけでも魔法が発動されてしまう。ストウスウェイトに呼び出された当初。まだ、俺達も勇者と呼ばれる前。整った見た目から、舞も男達から目をつけられていた。そして、舞に乱暴しようとした男達は全員が塵一つ残さず灰になった。

只でさえ、異世界なんて意味の分からない場所に不安になっていた舞は、その事で一時期外に出ることすらできなくなったこともあるくらいだ。


まぁ、そんな能力を持っているため、舞は通常の魔法使いのように詠唱などはしたことがない。だから、舞の説明が感覚的になるのは致し方ないのだが、自分の能力を未だはっきりと伝えていないであろう玄樹には、そんな裏事情は分からない。


「カリン、そんな野蛮人に言語を期待する方が間違ってますよ~。きっと、野蛮村伝統の野蛮魔法とかです~」

「野蛮村っ!?」



このレストランに個室があって良かった。

爆発寸前の舞と、それでもなお煽り続ける玄樹を見て俺は心の底からそう思った。








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