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正式に王子付きの従者となった初日。
私は騎士団の訓練所に来ていた。カイ王子の視察にお供するためだ。もちろんエイナリ様も来ている。
「アイリちゃんごめんね~。そんな格好させちゃって」
王子が騎士団の方々とお話になっている間にエイナリ様が小声で話しかけてくる。何かと思えば服装についてだった。
今の私の格好は女性騎士用の訓練服。そんな、とエイナリ様は言うが、言わせてもらえば動きやすくてとても楽だ。
「いえ。訓練所にドレスでは目立ってしまうでしょうし、この格好に問題はありません」
従者となった私の格好は薄緑色の質素なつくりのワンピースだ。そんな姿で訓練所にくれば間違いなく浮く。
「そう?気にしてないならよかった。そういえば、アイリちゃんって剣術を習っていたんだよね」
「はい。護身術程度でしたが」
ついでにいうと剣術の他に体術や馬術なども習った。堅苦しい作法に比べてどれも楽しくのめり込んでしまい、父様と母様に注意されてしまったことは記憶に新しい。
「護身術程度、ね。あのハイルの弟に勝つような腕前の君がそんなことを言ったら、僕の剣術は子供のチャンバラか何かかな」
「そんなことはありません!…それにレオン兄様に私が勝てたのは手加減をしてくださったからです」
ハイルというのは私の一番上の兄で、事実上の時期大公。エイナリ様の友人でもある。レオンというのは二番目の兄。騎士団の副団長をしている。
「勝ったことは否定しないんだね。副団長殿が手加減をするわけがないさ。リドネ王国の鬼神と称されるような人間だよ?」
鬼神、と言われても想像が出来ないのは私だけだろうか。確かに、少し表情は乏しいけれど家族思いのとても優しい方なのだが。
「うーん…その顔からして、副団長殿はアイリちゃんには甘いのかな」
「そうだが何か問題でも?」
突然聞こえてきた声に驚きつつ声の主を探す。この声は…
「レオン兄様」
「久しぶりだなアイリ。元気そうで何よりだが、たまには家に顔を出せよ」
頭を優しく撫でられる。私はレオン兄様の言葉に小さく頷いた。
「副団長殿ではないですか。何故このような場所に?」
「俺が訓練所に居てはおかしいか?それとエイナリ。先程の質問に答えろ」
エイナリ様のほうが年上のはずなのだが、レオン兄様は物怖じせずに話している。エイナリ様もレオン兄様の態度を気にした様子はない。
「鬼神が家族に甘いことに問題なんてありませんよ~。問題なんてないんで、そんな目で見ないでください副団長殿」
笑顔のエイナリ様と無表情のレオン兄様の視線がぶつかる。ハイル兄様が二人は仲が悪いと言っていたが、予想以上だ。
「あ、あのっ。レオン兄様は何かご用があったのでないですか?」
険悪な雰囲気に耐えきれず私はレオン兄様に話をふった。レオン兄様は、ふん、と小馬鹿にした様子で鼻を鳴らしてからエイナリ様から視線を外した。
「アイリに話がある。二人だけで話をしたい」
設定について補足説明させていきますと、主人公・アイリは7人キョウダイの末っ子。キョウダイは男二人、女五人で、順番に男女女女女男女です。
年齢は細かく決めていませんが、長兄・ハイルは30近くと考えています。




