たえこママと、息子のフィアンセと合衆国憲法①
(舞台説明)
ここは、メタバース空間のとあるバー、切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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深夜の『The Wallet』
「ヨー、ママ、調子どう? 今日はマジでリスペクトする俺のフィアンセを紹介しに来たぜ、Say Ho!」
お昼時のバー『The Wallet』に、強烈な重低音のBGMと共に飛び込んできたのは、たえこママの息子であり、メタバース白山で活動するラッパーの息子だった。
「うるさいわねぇ、店内で韻を踏むんじゃないよ! それで、あんたが結婚したいっていうお相手はどこにいるのさ」
たえこママがいつもの割烹着姿で電卓を置いた瞬間、息子の後ろから、地響きを立てるかのような圧倒的な存在感を放つ女性、サマンサが姿を現した。
「It's a pleasure to meet you.」
ママは、翻訳アプリを、起動した。
ハイハイ、会えて嬉しいのね。
店内の常連客、SuicaさんとPASMOさんが一斉に「ブッ!」とビールを吹き出した。
そこにいたのは、グラマラスな体型を真っ赤な高級スーツに包んだ女性。
しかもその顔立ちは、ご近所のショーパブの『マツコ』にドッペルゲンガーレベルで瓜二つだったのだ。
「おいおいマジかよ! マツコの生き別れの妹か!?」
「ラッパーの嫁がマツコって、メタバースのバグだろ!」
カウンターが蜂の巣をつついたような冷やかしの渦に包まれる。
マツコ似の彼女が「私はカリフォルニアで国際弁護士をしています。
法的な定理に基づいて彼を愛しています」と毅然と言い放つと、さらに常連客たちは「格差婚だ!」「ラッパーがリーガルに勝てるわけねえ!」と大爆笑し始めた。
その瞬間、カウンターの奥から「バン!!!」と凄まじい衝撃音が響いた。たえこママが、千代の一番の空き箱を叩きつけたのだ。
「あんたたち、いい加減にしな!!! 人の見た目や職業でガタガタ言うんじゃないよ! ……あんた、うちのバカ息子を本気で愛してくれてるんだね?」
「ええ、裁判の判決よりも確実に、彼を愛しています」
彼女がまっすぐママの目を見返すと、ママはふっと優しい、母親の人情味溢れる笑顔を浮かべた。
「だったら、アタシが全力で応援してあげるよ。男と女が惚れ合うのに、原価率もコスト計算の定理も関係ないわ! バカ息子、その子を絶対に幸せにしなさい!」
「ママ……マジ感謝……!」
感動的な家族の絆が白山商店街を包み込もうとした、まさにその時。自動ドアがウィーンと開き、カウボーイハットを被り、ド派手な星条旗のネクタイを締めたアメリカ人風の男がのしのしと入ってきた。
その顔を見た瞬間、たえこママの顔が完全に引き攣った。
「オーウ、たえこ! 久しぶりネ! ミーの愛しいサン(息子)が結婚すると聞いて、カリフォルニアから世界最大級の国際オークションをすっ飛ばしてやってきたデース!」
「えええええっ!? ebayさん!!!???」
店内の常連客たちがひっくり返る。
なんと現れたのは、かつてママと泥沼の国際ロマンスを繰り広げ、息子の父親でもある伝説の元カレ、ebayさんだったのだ。
「ちょっとあんた!! なんで今更アタシの前に現れるのよ! あのアメリカ税務署から届いた60万の請求書は、あんたのオークションの出品手数料の仕業じゃないでしょうね!?」
「ノー! ミーはただ、息子に世界標準のリーガルな祝福を競り落としに来ただけデース!」
「ふざけるんじゃないよ! 今すぐドル建てで慰謝料払いなさい!」
一瞬で人情ドラマから国際金銭トラブルの大混乱へと逆戻りする店内。
しかし、
このアメリカの弁護士事務所からの60万ドルの請求書の裏には、
裏で糸を引くニューヨークのあくどい弁護士の存在がいた。
カリフォルニア州の弁護士事務所で、パートナー弁護士を目指すサマンサは、
カリフォルニアの資格でありながら、ニューヨーク州法、合衆国憲法、そして合衆国修正法まで完全に頭に叩き込み、この因縁にケリをつけるべく、
たえこママのために、立ち上がったのだ。




