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たえこママと、アーユルヴェーダ


(舞台説明)

ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。


————————————————————————


ランチ営業中の

『The Wallet』


「ちょっとママあぁぁ! 体重が3倍になって床にめり込んでいくんだけどォォ!」


画面のバグでバーの床が「トマトおでん柄」に染まり、巨漢のマツコが痛風の激痛とパニックで転げ回る中、たえこママはフンスと鼻を鳴らした。


「うるさいねぇ! トマトおでんがダメなら、これをお飲み!」


たえこママがカウンターの奥から取り出したのは、これまたゲオ(GEO)の特売コーナーで「安かったから」と衝動買いしていた【ナノバブル発生機能付き水筒】だった。


ママは元マラソンランナーの現役時代から、体調管理のために世界の健康法を調べ尽くしていた。

特に、今回チケットが当たったスリランカの伝統医学5000年の歴史を持つ

『アーユルヴェーダ』の知識には並々ならぬこだわりがあったのだ。


「いいかいマツコ、アーユルヴェーダの古典において、その痛風の激痛は『血液の乱れ(ラクタ)』と『風のエネルギー(ヴァータ)』が関節で衝突して起きる不調さ!


現代医学の尿酸値対策と古典理論を融合させた、特製アーユルヴェーダ・スープをおあがり!」


ママが水筒から注いだのは、緑色の不思議なスープだった。


中身は「アオサ、ナノバブル水、スパイス、豆乳」。

現代医学的にも、アオサの抗炎症作用と、ナノバブル水による尿酸の排出促進、スパイスの代謝向上、そしてプリン体の極めて低い豆乳のベースは、痛風対策として完璧な処方箋メソッドだった。


「熱いのか痛いのか分からないけど……ゴクゴク、プハァッ!」


マツコがスープを勢いよく飲み干し、しばらくしたあとの事。


「……あれ? 痛くない。右足の親指の激痛が、嘘みたいに引いていくわ!」


みるみるうちにマツコの顔に赤みが戻り、奇跡の完全回復を遂げた。床のトマトおでんバグも、ママがサムスンの両開き端末をパタンと閉じたことで無事に消え去った。


ガタガタと震えていたタコのパウロくんはホッと胸をなでおろし、

うろたえていたパンダも安心したように再び笹の葉をかじり始める。


「す、げえ……! ママ、デジタルはバグらせるのに、

アーユルヴェーダの知識は本物なんだな!」


常連たちが大歓声を上げる中、たえこママは愛用のガラホをポケットにしまいながら、いつもの威勢のいいかけ声とともにニヤリと笑った。


「なによ、元ランナーの私の健康リテラシーをなめんじゃないよ! さあマツコ、足が治ったならさっさと準備しなさい! スリランカのシーギリア・ロックの頂上まで、私の爆走についてきてもらうんだからね!」


「ええ〜、治ったばかりなのに今度は筋肉痛になりそうだわァ!」


マツコの悲鳴と常連たちの笑い声に包まれながら、居抜きバー『The Wallet』の一同は、今度こそ本物の空中宮殿を目指してね、と賑やかな、バーの面々であった。

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