たえこママと、痛風パニック
(舞台説明)
ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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ランチ営業中の
『The Wallet』
話しは、遡り
「ちょっとあんたたち! 奇跡が起きたよ!」
白山のメタバース空間にある、そば屋の居抜きバー『The Wallet』のカウンターで、たえこママが愛用のガラホを高く掲げて叫んだ。
画面に映っていたのは、テレビ番組「世界ふしぎ発見!」の視聴者プレゼント。なんとママが応募した、メタバース上の世界遺産『スリランカのシーギリア・ロック』の完全再現エリアへ行ける、超プレミアムなペアチケットの当選通知だった。
「すごいやママ! 空中宮殿の頂上まで行けるチケットなんて、今じゃプラチナペーパーだよ!」
常連たちが大盛り上がりし、「さあ、誰がママと一緒に行くか会議だ!」と色めき立ったのだが、まだ、メタバース空間に、スリランカが、なかったのだ。
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ようやく、メタバース空間の環境が整ったのだが!
その時、
「う、うう……。地獄の激痛が、右足の親指を直撃している……」
カウンターの端で、巨漢のマツコが悲鳴を上げて床に崩れ落ちた。
よりによって、シーギリア・ロックへ出発する直前のこのタイミングで、マツコの痛風が再発してしまったのだ。
風が吹くだけで激痛が走るという、あの悪魔の病である。
「マツコさん! しっかりしてくれ!」
常連たちが総出で抱き起こそうとするが、メタバース空間の物理演算をもってしても、痛みのあまり丸くなって硬直したマツコはびくとも動かない。
まるで、これから行くはずの『シーギリア・ロックの巨大な岩山』そのものがバーの床に出現したかのような絶望的なデカさだった。デカすぎて、1ミリも動かせない。
あまりの緊急事態に、カウンターの隅にいたタコのパウロくんは真っ青になり、細い8本の足を複雑に絡ませて「キュ、キューッ!」と大混乱。
さらに、なぜかメタバースの背景オブジェクトとしてお店の隅で大人しくしていたパンダまでもが、マツコの放つ痛みのオーラに恐怖し、笹の葉を放り投げて右往左往とうろたえ始める始末。
バーの中は完全に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「これじゃ旅行どころか、病院のポータル(転送装置)まで運べないぞ! どうするんだよママ!」
常連たちがパニックになる中、たえこママはゲオで買ったサムスンの両開き端末(Galaxy Z Fold)をパカッと開き、老眼用ミラーリングでバーの頭上に特大の画面を映し出した。
「うるさいねぇ! こうなったら私のITリテラシーで、マツコの痛風データを強制書き換えしてやるよ!」
ママは折りたたみキーボードを猛烈なスピードで叩き始める。カチカチカチカチ!
しかし、ママのおっちょこちょいがここでまたもや火を噴いた。
焦ったママが、キーボードのタッチを押し間違えたせいで、マツコの痛風の痛みが消えるどころか、
【システムエラー:マツコの体重を3倍に変更しました。周辺のグラフィックをトマトおでんに置換します】という謎のバグが発動。
「ちょっとママあぁぁ! 体重が増えて床にめり込んでいくんだけどォォ!」と叫ぶマツコ。
さらにバーの床や壁のテクスチャが、すべて赤くて熱々なママ特製の「トマトおでん」の画像に切り替わり、湯気を上げ始めた。
「あらやだ! 痛風にトマトのプリン体は厳禁じゃないの!」
慌てるたえこママと、熱々のおでん柄になったバーの床の上で「足が痛いのか熱いのか分からない」と転げ回るマツコ。
出発前の居抜きバーを舞台に、デジタルバグと痛風の苦しみがごちゃ混ぜになった、大混乱です。




