たえこママと、カズコさん - 前編 -
(舞台説明)
ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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ランチ営業中の
『The Wallet』
真向かいにあった、名物「たぬきケーキ」のケーキ屋ケンちゃんが惜しまれつつ閉店した。
その跡地にオープンしたのは、怪しい紫のカーテンがかかった『占いの館・カズコ』。
常連客たちと「寂しくなるねぇ」としみじみ話していたたえこママのもとに、なんとそのカズコ先生が直々に『The Wallet』のドアを開けて入ってきた。
てっきり人生相談かと思いきや、カズコ先生の悩みは切実だった。
「今の若い子は、手相を見るにしても『デジタル決済使えますか?』って聞いてくるのよ! 時代の波に乗らないと、私の占いの館が火の車よ!」
昨日までゲオの中古折りたたみキーボードを叩いてドヤ顔をしていた(そして秒速でガラホに戻した)たえこママを、カズコ先生は「最先端のITママ」だと勘違いして相談にやってきたのだ。
見栄を張りたいおっちょこちょいなたえこママは、知ったかぶりをして、カズコ先生のスマホの決済アプリを設定し始めた。しかし、案の定、ママの指先がバグを引き起こす。
画面の決済文字が勝手に書き換わり、特大の文字で表示された。
【お支払い金額:前世の因縁(円)】
【決済エラー:地獄に落ちるわよ】
「ちょっとあんた! 私の商売を本当に地獄に落とす気かい!?」
「そこの、マツコ、あんたは一生、大殺界だよ!」
カズコ先生の怒号がバーに炸裂した。その凄まじい迫力に、
カウンターの隅にいたタコのパウロくんは真っ青になり、細い足を縮めてガタガタと怯えだす。
さらに、その怒りのエネルギー(?)が店内のデジタル機器に干渉したのか、バーの給仕を手伝っていた芋ロボの内部から「ジジジッ……」と異音が響いた。
「警告。カズコ氏の怒気により、制御システムに異常発生」
ブスブスと黒い煙を上げながら、芋ロボの電子回路が完全にショートして活動を停止してしまう。
「大変よ! 芋ロボのカイロ(回路)が焼き切れちゃったじゃないの!」
「フン、それもこれもあんたがデジタルなんて不吉なものを使うからだよ! あんたのそのガラホ、一生大殺界だよ!!」
「なんですってぇ! 私の愛しのガラホを大殺界呼ばわりするんじゃないよ!」
デジタル決済のトラブルと占いの因縁がごちゃ混ぜになり、居抜きバー『The Wallet』は、またしても常連一同を巻き込んだ大パニックに突入するのだった――。
(つづく)




