たえこママと、占いタコのパウロ二世
(舞台説明)
ここはメタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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深夜の『The Wallet』
「ママ、これ明石の漁師から直接決済(仕入れ)してきた生きたタコや! タラモサラダの具にでもしてや!」
夜のバー『The Wallet』で、関西のICOCAおじさんが嬉しそうにバケツを差し出した。
中では、丸々と太った明石ダコがウネウネと元気いっぱいに動いている。
「おや、立派なタコだねぇ!……って、あら?」
包丁を握ろうとしたたえこママだったが、
バケツのタコと目が合った瞬間、ふにゃりと緩んだ。
「なんか……じっと見てると、くりくりした目がなんだか愛嬌があって可愛じゃないの。よし、食べるのはやめた! この子はうちで飼うよ!」
「ええええーーーっ!?」
常連客のスマートフォンや交通系ICたちが一斉にひっくり返る。
たえこママはさっそく、仕入れ用のアマプラ(Amazonプライム)を開くと、爆速の2倍速の勢いで「大型水槽一式」をポチった。
翌日にはバーのカウンター(元・そば屋のレジ横)に立派な水槽が設置され、タコは『パウロ二世』と名付けられてペットになったのだ。
すると数日後、とんでもない奇跡が起きた。
「おい、嘘だろ……パウロの奴、また当てやがったぞ……!」
水槽の前に2つの小さなエサ箱を置くと、パウロ二世は8本の足を器用に使い、必ず片方の箱を選ぶ。
その箱に書かれた予測が、百発百中で的中するのだ。
「明日の東京地方の天気」「ビッグ・エーの明日の特売野菜」
元祖・占いタコのパウロくん顔負けの予言を連発し始めた。
「ママ! パウロくんに、うちの来月の通信速度の上限がどうなるか占ってほしいっちゃ!」
SUGOCAちゃんが水槽に顔をくっつけて大はしゃぎし、地方のICカードたちも「俺のエリアの乗車率を占ってくれべさ!」と水槽の前に大行列を作ってバーは大繁盛だ。
しかし、パウロ二世が【たえこママの今夜のギャンブル運:大凶】という箱に吸い寄せられた瞬間、たえこママはパシッと水槽のガラスを叩いた。
「はいはい、そこまで! 占いに頼って生きるんじゃないよ! ほら、パウロも調子に乗って足をバタバタさせないの! 水が跳ねてカウンターが水浸しじゃないかい!」
ママのゲキに、パウロ二世はシュンと足を縮めて岩の陰に隠れてしまう。
「ギャハハ! どんな未来予知能力があっても、ママの説教からは逃げられないな!」
常連客たちの大爆笑が響く中、パウロ二世は水槽の中から、のんびりと泡を吐き出していた。
メタバース空間の元そば屋のバーは、今夜も不思議な占いタコと、いつものお母ちゃんの叱り声に包まれて、賑やかに更けていくのだった。




