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たえこママの威勢のよい、かけ聲

(舞台説明)

ここは、メタバース空間にある

東京・白山の路地裏。居抜きバー『The Wallet』のカウンターには、明日から始まる「白山キャッシュレスお祭り」で使うための、ピカピカの小型決済端末が山積みにされている。

店を切り盛りするのは、雇われママの たえこママだった。

—————————————————————————-


たみこママが割烹着の袖をまくって端末の設定をしていると、ガラガラガラッ!!と、いつにも増して豪快に店の引き戸が開いた。


大家好ダージャパオーーっ!! みなさん元気アルか!?」


入ってきたのは、見事なプロポーションの真っ赤なチャイナドレスを身にまとった大人の女性──中国発の国際ブランド、UnionPay(銀聯)先生である。


片手にはアルコール度数50度を超える中国の至高の名酒『白酒パイチュウ』のボトル、そしてもう片方の手には、まだあどけなさが残る少年の手を引いている。


その少年こそ、彼女の息子であり、スマホ決済の申し子**「ユニオンペイ(銀聯QR)くん」**だ。


「おや、銀聯先生じゃないの! 珍しいねぇ、息子のユニオンペイくんも一緒かい」


たみこママが手を休めて微笑む。


「そうアル! 明日は白山の商店街で大きなお祭りがあると聞いたアル! 訪日中国人観光客の爆買い(決済)の波に備えて、うちの息子のQRコード(銀聯QR)が、ちゃんと日本の屋台でスムーズに読み取れるか、テストしにきたアルよ!」


銀聯先生はそう言うと、カウンターにどっかりと座り、白酒のボトルをドンと置いた。


「JCBバーテンダー! 私に氷とグラスを出す! 景気づけに乾杯カンペイアル!」


「はいはい、銀聯はん、お祭りの前夜祭どすな。ようお越しやす」

JCB氏がはんなりと微笑みながらグラスを差し出す。


すると、カウンターの端でレモンサワーを飲んでいたPayPayくんが、ライバル心を剥き出しにしてスマホの画面を光らせた。


「ちょっと銀聯先生! 日本の屋台のQRコード決済といえば、この僕、PayPayの独壇場ですよ! ユニオンペイくんだか何だか知らないけど、僕のシェアに割り込めると思わないでくださいね!」


「な、何アルと!?」


銀聯先生がキッとPayPayくんを睨みつけ、チャイナドレスのスリットから美脚を覗かせて立ち上がった。


「うちの息子をなめるなアル! 世界の決済ボリュームを見てから言うよろし! 明日の商店街の売上は、全部うちの息子が『銀聯QR』でかっさらっていくアル!!」


「望むところだ! 明日はお祭り(キャンペーン)だ、1等全額還元で勝負だ!」


PayPayくんも負けじと画面をチカチカさせて、バーの空気は一触即発のピリピリモードに。


その時、銀聯先生の横でオドオドしていた息子のユニオンペイくんが、緊張と電波のプレッシャー(?)のせいか、うつむいて今にも泣きそうになってしまった。


「うぅ……お母さん、僕、日本の屋台、緊張する……。言葉もわからないし、PayPayお兄ちゃん怖いよぅ……」


「あーっ、ちょっとあんたたち、何やってんのさ!!」


カウンターの中から、たみこママの割烹着のすれる音が鋭く響いた。


ママは銀聯先生とPayPayくんの間に割って入ると、銀聯先生の肩をポンポンと叩いた。


「好了,好了(ハオラー、ハオラー)! 銀聯先生もPayPayちゃんも、そこまでにしなさいよ! 明日のお祭りを成功させるために、みんなで協力しなきゃいけない時に、小競り合いしてどうするのさ!」


「ママ……でも……」PayPayくんが口を尖らせる。


好了ハオラー! つべこべ言わない!」


たみこママは銀聯先生を優しく席に座らせると、今度はカウンターの下から、そば屋の居抜きの名残である「駄菓子コーナー」に手を伸ばした。


そして、泣きじゃくるユニオンペイくんの前に、そっと一本の黄色いお菓子を差し出した。


「ほら、ユニオンペイくん。これ、ママからのプレゼント。**『うまい棒のコーンポタージュ味』**だよ」


「え……?」


ユニオンペイくんが涙を拭いて、お菓子を見つめる。


「日本の子供も、海外から来た子供もね、みんなこれが大好きなのさ。


サクッと一口食べれば、コーンポタージュの優しい甘さが口いっぱいに広がって、緊張なんて一発で吹き飛んじゃうんだから。

言葉なんて通じなくたって、美味しいものは世界共通だよ。明日の屋台だって、このうまい棒みたいに、みんなを笑顔にすればいいのさ」


ユニオンペイくんは、小さな手でうまい棒を受け取り、パチッと袋を開けて一口かじった。


サクッ……。


「……あ、美味しい……! すごく甘くて、あったかい味がする……!」


少年の顔に、パッと満面のひまわりのような笑顔が咲いた。


それを見た銀聯先生は、白酒のグラスを握りしめたまま、じわりと涙を浮かべた。


「たみこママ……アル……。やっぱり、日本の『おもてなし』の心、素晴らしいアル……。うちの息子に優しくしてくれて、ありがとう的……」


「いいんだよ、お母さん。子供はみんな、お腹が空くと不安になるもんだからさ」


たみこママはそう言って、胸元のマルチ決済パネルを優しく緑色に光らせた。


「さあ、PayPayちゃんも、明日はユニオンペイくんの決済システム(Smart Code連携など) をしっかりサポートしてあげるんだよ。あんたはお兄ちゃんなんだからね!」


「……ちぇっ、しょうがないなぁ。明日は僕の使えるお店でも、ユニオンペイくんのコードが読み取れるように、裏の通信ルートを繋いであげるよ」


PayPayくんが照れくさそうに頭を掻く。


謝謝シェシェ、PayPayお兄ちゃん!」


ユニオンペイくんが嬉しそうに飛び跳ねる。


「よし、話がまとまったなら、今夜は明日に備えて、ママ特製の『出汁割りウイスキー』で前夜祭だよ! 乾杯かんぱい!!」


たみこママの威勢のいい掛け声とともに、JCB氏が「よろしおすな」とグラスを鳴らし、白山の夜は、国境を越えた温かい絆で満たされていくのだった。

(つづく)

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