たえこママと、博多っ子ハヤカケンちゃん
(舞台説明)
ここはメタバース空間の、とあるバー、切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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深夜の『The Wallet』
「ママ、これ、うちからのお土産! 食べてみんね!」
ハヤカケンちゃんが自慢げにカウンターに置いたのは、福岡の絶対王者『博多通りもん』だった。
「おや、通りもんかい! 嬉しいねぇ、あのしっとりした白あんとバターのコクがたまらないんだよ」
たえこママが、うれしそうに、目を細めると、
隣にいた首都圏代表のSuicaの兄ちゃんが、ニヒルに電子音を鳴らして口を挟んだ。
「ふっ、通りもんもいいけどさ。東京代表の俺からの手土産はこれだよ。ママ、やっぱりお茶請けには、東京名菓『ひよ子』に限るぜ」
可愛いひよこの形をしたお饅頭をドヤ顔で差し出すSuica。
その瞬間、ハヤカケンちゃんのカエルマークが、怒りで真っ赤に明滅した。
「……ちょっと待たんね、Suicaの兄ちゃん」
「え?」
「あんた、今『東京名菓』って言ったと!? ちかっぱふざけとるばい! ひよ子はね、大正時代に福岡の飯塚で生まれた、純粋な【福岡のお菓子】やけんね! 昭和の東京オリンピックの時に東京に進出したとばいいことに、東京名物面せんで!!」
「え、ええーーっ!? ひよ子って福岡生まれなの!?」
関西のICOCAおじさんも
北海道のKitacaくんも、
歴史の衝撃事実に大びっくり。
「そ、そんなバカな……俺たちは物心ついた時から東京駅でこれを……」
都会のプライドを根底から覆されたSuicaの兄ちゃんは、ショックのあまり液晶画面に砂嵐を吐き出してフリーズしてしまった。
「はいはい、そこまで! どっち生まれだろうが、美味しいものは美味しいんだよ! ほら、揉めてる暇があったら、あたしがビッグ・エーの特売のタマゴと小麦粉で焼いた『ホットケーキ』でも食べな!」
たえこママがいつもの元気なかけ声で、お土産の通りもんとひよ子、そして特製どら焼きをカウンターに並べる。
「やっぱりママのホットケーキが一番落ち着くべさ」
「福岡と東京の和解の味やな」
いつの間にか電撃を落とした、ハヤカケンちゃんも、ひよ子を頭から丸かじりして「甘くて美味しいっちゃ!」と大喜び。
メタバース空間の元そば屋のバーは、今夜も地方のプライドと、名菓の甘い香りに、包まれていた。




