たえこママの、思い出のパンケーキ -後編-
(舞台説明)
ここは、メタバース空間のとあるバー、切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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深夜の『The Wallet』
「お母ちゃん、やっぱり世界中のどんな高級レストランのデザートより、このパンケーキが一番だよ……!」
口のまわりをシロップだらけにしたWhatsAppくんを見て、たえこママはふっと目を細めた。
「ふふ、あんたの父親……あのラッパーのebayの男もさ、韻を踏むのは一級品だったけど、不器用な男でねえ。
ステージから降りると、いつも『俺のハートをオークションにかけたら、最高値をつけるのはお前だけだ』なんて、わけのわからない口説き文句を言いながら、このパンケーキを3枚ペロリと平らげたもんだよ」
懐かしそうに語るたえこママの横顔に、店内はさらにエモーショナルな空気に包まれる。
「うおおおん! ebayの親父リスペクトーーー!」
カウンターで、交通系ICたちがもはや改札を通れないレベルで嗚咽を漏らし、スマートフォンたちの画面には「全米が泣いた」の通知が鳴り響く。
しかし、次の瞬間。
たえこママはパンッと自分の両頬を叩くと、いつもの威勢のいい声を響かせた。
「はいはい、そこまで! あんたたち、いつまで泣いてるんだい! おいおい、みんなの涙のせいで、せっかくのパンケーキが塩辛くなっちまうじゃないか!」
「お、ママ……!」
「ほら、WhatsAppも涙を拭きな! 世界中のお客さんが、あんたのメッセージを待ってるんだろ? しっかり食べたら、また元気に世界を繋いでおやり!」
「……うん! わかったよ、お母ちゃん!」
ママのゲキに、息子は力強くうなずいた。バー『The Wallet』は、涙から一転、いつもの温かい笑顔と、世界中へと飛び交う通知音で満たされたのだった。




