たえこママの、思い出のパンケーキ -前編-
(舞台説明)
ここは、メタバース空間のとあるバー、切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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深夜の『The Wallet』
『たえこママの、特大パンケーキ』をこしらえた。
「お、お母ちゃん……これ、ずっと食べたかったんだよ……!」
世界で数十億人が使う巨大メッセージアプリ『WhatsApp』くんが、緑色の通知アイコンを激しく明滅させながら、子供のように大号泣している。
その手にあるのは、そば屋の居抜きバー『The Wallet』の厨房から運ばれてきた、湯気立つ特大のパンケーキだった。
「何言ってるんだい。あんたが世界中で忙しくメッセージを運んでる間、あたしは仕事にかこつけて、ちっとも構ってやれなかった。
寂しい思いをさせて、本当にごめんね……さあ、冷めないうちにトッピングのバターが溶ける前に、おあがり」
いつもの威勢のいい「かけ声」はどこへやら、たえこママは目元をエプロンで拭いながら、優しく息子の頭を撫でた。
ラッパーの元夫・ebayの残した、古いレコードが静かに流れる店内で、息子は夢中でパンケーキを頬張る。
「う、ううっ……なんていい話なんだ……!」
「たえこママに、そんな過去があったなんて……!」
カウンターの端では、いつもデジタルに生きる交通系ICカードたちが、磁気データをバグらせるほどの涙を流して大号泣している。
常連のスマートフォンたちも、画面が涙の結露で曇るほどに号泣し、バーは感動の嵐に包まれたのだった。




