たえこママと、馬主バッチの輝き
(舞台説明)
ここは、メタバース空間のとあるバー、切り盛りするのは、あの、たえこママ。
メタバース空間に新しく完成した、大井競馬場に、バーのいつもの、面々たちと、やって来たのであった。
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夜空にカクテル光線が美しくきらめく、メタバース上の大井競馬場。
パドックの熱気と、サラブレッドの蹄の音が響く場内に、たみこママを筆頭としたキャッシュレスお財布組がやってきた。
案内されたのは、一般の人間は立ち入ることのできない、冷暖房完備の最高級VIPガラス観賓席。
そこで一行を待っていたのは、胸に黄金の「馬主バッジ」を光らせ、特注のシルクハットをかぶったあの男
──ドクター・スターリンクだった。
「──待たせたね、白山の諸君」
ドクター・スターリンクが、低軌道衛星のホログラムを指先で回しながらクールに振り返る。
「ちょっとドクター! あんたその胸のバッジ、まさか……!」
たみこママがらくらくホンを落としそうになって叫ぶ。
「フッ、その『まさか』さ。今日の第11レースに出走する、大井の怪物・単勝1.1倍の漆黒の駿馬**『マスク号』**。その馬主は、この私だ」
「「えええええーーーっ!!!???」」
PayPayくんもSuicaくんも、バーの常連一同がひっくり返って大絶煙!
「ドクター、宇宙の衛星を管理してるだけじゃなくて、大井の馬主だったんですか!?」
「宇宙を制する者は、地方競馬も制する。……さあ、私の馬の勝利を祝って、宴を始めよう」
ドクター・スターリンクがパチンと指を鳴らす。
VIP席のテーブルに次々と運ばれてきたのは、大井競馬場名物のクラシックなホットスナック──香ばしいソース焼きそば、ジューシーなホットドッグ、パリッと弾けるフランクフルト、そして濃厚なソフトクリームだ。
「美味い、美味すぎるべさ!」
Kitacaくん(北海道)がソフトクリームを口の周りにつけて大喜びし、ICOCAくん(大阪)も「これこれ! 競馬場と言ったらこのジャンクな焼きそばが最高やがな!」と麦焼酎を煽る。
ここまでは、ママの主戦場であるビッグ・エーの食材でもなんとか再現できそうな、安心の下町グルメだった。
しかし、ドクター・スターリンクの本当の「馬主セレブパワー」はここからだった。
「あの!ドクター・か?!
(※スターリンクを驚きすぎてみんながそう呼び間違えた)、君のために特別な暗号化を用意した」
ドクターが手をかざすと、テーブルの上が一瞬で超高級ホテルのラウンジへと変貌した。
そこに並んだのは、まばゆいピンク色に輝く**『ドン・ペリニヨン(ピンクのドンペリ)』!
さらに、瑞々しい桃に熟成生ハムを贅沢に巻いた『桃と生ハムのピンチョス』、
香ばしい『ブルスケッタ(ブリスケッタ)』、
大粒の『ブラジリアンナッツ』に
『ピスタチオ』……。
そして極めつけは、
いま世界中で入手困難を極める、サクサクのピスタチオカタフィが入った
あの伝説の『ドバイチョコレート』**の山だった!
「な、何アルとこれーーーっ!!!???」
銀聯先生がチャイナドレスの襟をバタバタさせて絶叫した。
「このドバイチョコ、1個何千円もする幻のスイーツアル! 微博の富豪しか食べてないやつアルよ!」
「セ、セキュアすぎる……!」
Apple PayさんもFace IDの瞳をこれまでにないほど激しく点滅させて震えている。
「ピンクのドンペリの泡のレイヤー、そしてドバイチョコの圧倒的なプレミアム感……。これほどのバックエンド(高級食材)、僕のシステムでも処理が追いつかない……!」
常連一同、見たこともないセレブグルメの応酬に「すごいわねぇ!」「ドクターかっこいい!」と大興奮で、お祭り以上の大騒ぎに。
たみこママだけは、文字サイズ「極大」のらくらくホンを握りしめ、ドバイチョコとブラジリアンナッツを見つめて、嬉しい反面、プロとして激しく困惑していた。
「ちょっとドクター……あんたこれ、本当に凄いわね。
あたしも長年お財布の裏方やってるけど、こんなおったまげるような高級品、初めて見たよ。……でもね」
たみこママはらくらくホンをパカァァァン!!と大井のパドックに響き渡る音で閉じた。
一瞬で静まり返るVIP席。
「いいかい? あたしの主戦場はね、何度も言うけど文京区白山の**『ビッグ・エー(Big-A)』**なんだよ!
ビッグ・エーの棚を隅から隅まで探したってね、ピンクのドンペリも、ドバイチョコも、ブラジリアンナッツなんて、逆立ちしたって売ってやしないんだよ!!
特売の割る用炭酸水と、100円のピーナッツが限界さ! こんな高級なものを競馬場で出されたら、あたしのらくらくホンの仕入れメモのバグが直らなくなっちゃうじゃないのさ!」
ママのリアルすぎる「ビッグ・エーの壁」の一喝に、一同は爆笑しながらも深く納得。
「フッ、ママ、心配はいらない」
ドクター・スターリンクがピンクのドンペリのグラスを傾けて微笑む。
「これらはすべて、宇宙の衛星を経由してドバイやヨーロッパから直接『超高速データ(直輸入)』したものさ。
明日の白山の居抜きバーでは、またビッグ・エーの100円のピーナッツ(安心のローカル)に戻ればいい。……さあ、ファンファーレが鳴るぞ」
見ると、ゲートが開き、ドクターの愛馬「マスク号」が、光の速さ(1000Gbps)で最後の直線をごぼう抜きしていく!
「差せーーーっ!! 差し切れスイカァァァ(あ、馬の名前はマスク号だけど)!!」
たみこママがらくらくホンを握りしめ、ガラホの馬券を掲げて、元マラソンランナーの物凄い声量で大絶叫!
マスク号が見事に1着でゴールインした瞬間、VIP席はドバイチョコの甘い香りと、ピンクのドンペリの泡、そして全員の「うまいぞーーーっ!!」という大歓声に包まれた。
「よし! ドクターの大勝利だ!
今夜はドクターのおごりで、この高級チョコをみんなでマルチ決済(山分け)さ! 帰ったらJCBさん、残ったドバイチョコに合う『出汁割り泡盛』の準備だよ! 乾杯!!」
「イエス、マーム!」
「ハオラー、ハオラー!」
「たぬ〜〜〜っ!」
たみこママのガラホの即パットも見事に的中し、メタバースの大井競馬場の夜は、宇宙規模のセレブグルメと下町の温かい笑顔が完璧に『定理(融合)』されて、どこまでもゴージャスに、そして賑やかに更けていくのだった。




