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たえこママと、銘菓自慢


(舞台説明)

ここはメタバース空間の、とあるバー、切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。


—————————————————————————


深夜の『The Wallet』



カウンターの上には、JCB氏が丁寧に点てた抹茶と、常連たちが持ち寄った日本各地の「銘菓」がホログラムと実物でずらりと並んでいる。


発端は、

九州男児・SUGOCAくんが「お土産ばい!」と出してきた、博多の歴史あるあのお菓子だった。

「おい、みんな! これば食べてみんしゃい!」


SUGOCAくん(九州)が、誇らしげに白いふんわりとしたお菓子を差し出した。


「博多が誇る銘菓、**『鶴の子』**たい! ふわふわのマシュマロの中に、濃厚な黄味あん(きみあん)が入っとる、この食感の妙……! 誰も真似できんばい!」


「ふぁ……! 何これ、なまらフカフカしてるべさ!」


Kitacaくん(北海道)が一口食べて目を丸くする。


「口の中に入れた瞬間、マシュマロがシュワッと溶けて、中から優しい甘さの黄味あんがトローリ……! 鶴の子、なまらすげえべさ!」


「フッ……SUGOCAくん、見事なファースト・バイト(一口)だ」


カウンターの端でウーロンハイを飲むau PAYくんが電卓を叩く。


「だが、マシュマロの柔らかさなら、仙台エリアの**『萩のはぎのつき』**も負けてはいない。あのカスタードクリームのセキュアな濃厚さは、まさに満月の輝きだ」


「何を言うてんねん! 餡の完成度なら、広島の**『もみじまんじゅう』やろが!」


ICOCAくん(大阪)が立ち上がる。

「いや、ワイの地元(大阪)の甘党なら、なんと言っても『甘党まえだのみたらし団子』**や! 焼き目の香ばしさと、あのとろっとろのタレは、世界一麦焼酎に合うんやがな!」



「岩手の**『かもめの玉子』**の、あのホワイトチョコと黄味餡の美しいレイヤー(階層)構造も忘れてもらっては困りますえ」



PiTaPaさん(兵庫・京都)が上品に米焼酎をすすりながら微笑む。


地方の交通系ICカードたちが、鶴の子、萩の月、もみじまんじゅう、みたらし団子、かもめの玉子と、自慢の銘菓を次々と繰り出し、バーのカウンターは完全に糖分過多ハイパー・インフレ状態に。



すると、これまで黙ってモスコミュールを飲んでいた都会派のSuicaくん(東京)が、不敵に微笑んで胸元から黄金色の小さな箱を取り出した。



「フッ……みんな、地方の伝統にすがりすぎじゃないか? 東京の最新のエレガンス(高級土産)を見せてあげるよ。……これさ」


Suicaくんが出したのは、JR新宿駅などでも大人気の**『バターバトラー(Butter Butler)のバターフィナンシェ』**だった。


「な、何これ……! パッケージの執事のイラストからして、ものすごくセキュア(高級)な香りがする……!」


Apple PayさんがFace IDの瞳を輝かせる。

袋を開けた瞬間、バーの中に「スイス産発酵バター」と「フランス産ゲランドの塩」、そしてメープルシロップの、犯罪的とも言える濃厚で芳醇な香りが爆発した。


サクッ、ジュワァ……。

「う、うまいぞーーーっ!!!」


PayPayくんが、あまりの美味さとバターのコクに、今夜二度目の光のビームを口から放ちながらメタバースの天井まで吹っ飛んでいった。


「外はカリッ、中はメープルシロップが染み込んでジューシー……! この高級感、100%還元どころか200%還元レベルですよ!」


「オーマイゴッド……!」Visaマスターもあんこを拭って絶叫する。


「このフィナンシェのバターの定理、ミーのウイスキー(響)にパーフェクトマッチデース!!」


店内は、地方の伝統銘菓 vs 東京の最新高級フィナンシェの「甘味美味しんぼ対決」で、完全に理性を失うほどの大騒動に。



「──はいはい、みんなお口を閉じなさいな!!」

パカァァァン!!!


たみこママが、ドコモの「らくらくホン」をカウンターに叩きつけた。液晶には文字サイズ「極大」で【別腹はマルチ決済】と表示されている。


一瞬で全額返金されたように静まり返る店内。


「ママ……」Suicaくんがフィナンシェを隠しながら縮こまる。


「あんたたちねぇ、お菓子の新旧だの、地方だの都会だので揉めてんじゃないよ!」


たみこママは割烹着のポッケにらくらくホンを仕舞うと、JCB氏が点ててくれた温かい抹茶をみんなに配った。


「博多の『鶴の子』のあのマシュマロの優しさも、『萩の月』も『もみじまんじゅう』も『みたらし団子』も『かもめの玉子』も、そして東京の『バターバトラー』の贅沢な香りも……みーんなね、人間たちが『誰かを笑顔にしたい』って思って、大切に買ってきたお土産なんだよ!


都会のハイテクなフィナンシェが上だの、地方の伝統の鶴の子が負けんだの、そんなちっちゃい画面シェアで物事を見るんじゃないよ。


あたしがこのJCBさんの抹茶を出したのはね、どんなに甘くて濃厚なお菓子だって、この温かいお茶(包容力)があれば、みーんなお腹の中で優しくまとまるからさ。


お買い物もお土産も同じだよ。


誰かの喜ぶ顔が見たくてお金を払う、その温かい気持ちを、あたしたちが『ピッ』と笑顔で繋いでいく。それこそが、このバー『The Wallet』の定理じゃないのさ!」


ママの、塩よりもキレがあり、発酵バターよりもコクのあるお説教に、皆が、涙を流して深く頭を垂れた。


「ママ……さすがどす。

うち、感動して、お土産の紅芋タルトも全部ママにあげたくなりましたわ」


紫式部さんが十二単の袖で涙を拭う。


「よし! 話が決まったら、今夜は全国のお土産をみんなで少しずつ『割りシェア』して食べるよ! JCBさん、抹茶のおかわりと、お土産に負けない『出汁割りラム酒』の準備さ! 明日のお花見も、日本一甘くてハッピーな場所にするよ、乾杯かんぱい!!」


「イエス、マーム!」

「ハオラー、ハオラー!」


たみこママの温かい言葉と全国の銘菓の香りに包まれて、白山の居抜きバーは、お腹も心もいっぱいに満たされて、どこまでも甘く、優しく更けていくのだった。

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