たえこママと、ミートパイの隠し味
(舞台説明)
深夜の『The Wallet』
ここは、メタバース空間のとあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママのたえこママであった。
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カウンターの上に並んでいるのは、いつものおでん鍋ではなく、ガラス製の美しいピッチャー。
Mastercard先生が、イギリス英語なまりの洗練された仕草で、茶色い「氷」の入ったグラスに冷たい液体を注いでいる。
店の奥からは、バターの芳醇な香りと、どこか懐かしい和風の出汁の香りがブレンドされた、たまらない匂いが漂ってきた。
「マーム、そして皆さん。お買い物をただ処理するだけでは『二流』ですぞ」
Mastercard先生が、キザに前髪をかき上げながらグラスを差し出した。
「見てごらんなさい。この『アイスコーヒー』を。注がれている氷は、ただの水ではありません。**コーヒーそのものを凍らせて作った、コーヒーの氷**です。これなら、氷が溶けても1ビットも味が薄まらない。完璧な数式のようにエレガント……それがプライスレスですぞ」
「あら、気が利いてるじゃないの!」
たみこママがらくらくホンをポッケに仕舞い、アイスコーヒーを飲む。
「へぇ! 確かに最後までコクが続いて美味しいよ。やるねぇ、マスターの坊や!」
「ママ、それだけじゃないデース!」
厨房から、エプロンをつけたVisaマスターが、オーブンミトンをはめて大きな鉄板を運んできた。
「マスターカードが、ビッグ・エーの食材だけで、最高にエレガントな**『ミートパイ』**を焼き上げマシタ!」
鉄板の上には、キツネ色にこんがりと焼けた、サクサクのパイシート。
ナイフを入れると、ジュワァァァと肉汁が溢れ出す。
「美味いアル!!」
銀聯先生がチャイナドレスの襟を緩めてパイに飛びつく。
「表面はサクサク、中はジューシーアル! でも……このミートパイのミンチ、ただの洋風の味付けじゃないアルね? どこか東洋の、奥深い旨味を感じる的!」
「フッ……気づきましたか、銀聯先生」
Mastercard先生が、不敵に微笑む。
「ニューヨーク風のミートパイを、この白山の居抜き(和風)の空間に完全に適合(定理)させるための隠し味。それこそが、ママがQVCで買った**『千代の一番』の和風出汁粉末**ですぞ!」
「えっ!? あたしの『千代の一番』を使ったのかい!?」たみこママが驚く。
「そうです。ビッグ・エーで買ってきた牛豚の合挽き肉と玉ねぎに、あえてケチャップではなく、うすくち醤油と『千代の一番』を練り込み、それをビッグ・エーの冷凍パイシートで包んで焼いた。
これによって、洋風のサクサク感と、お蕎麦の出汁にも負けないディープな和風の旨味が完全に『定理』されたのです! 題して、**『千代の一番・エレガントミートパイ』**ですな!」
「美味すぎるーーーっ!!」
PayPayくんが、あまりの美味さに口から光のビーム(ホログラム)を出しながら椅子から転げ落ちる。
「サクサクのパイと、和風出汁のガツンとくる肉
汁……これ、レモンサワーにも、マスターのアイスコーヒーにも、何にでも合いますよ!」
「……完璧な暗号化だ」
Apple PayさんもFace IDの瞳を輝かせ、無心でパイを口に運んでいる。
「ビッグ・エーの冷凍パイシートというローカルなバックエンドを使いながら、これほどのユーザーエクスペリエンス(美味さ)を実現するとは。マスターカード、君の定理は正しい」
地方の交通系ICカードたち(Suica、ICOCA、SUGOCAたち)も、おでん論争を忘れて「このパイ、うちの地元の地酒にもなまらうみゃあばい!」と、大喜びでパイをむさぼり食べている。
「まったく、みんなして美味しんぼだか、ミスター味っ子だか分からない騒ぎにしちゃってさ!」
たみこママは嬉しそうに呆れながらも、らくらくホンをパカッと開いて、画面に文字サイズ「極大」で【メニュー:マスターのパイ(時価)】と追加した。
「でもね、マスターの坊や。
高価なワインや高級レストランの食材を使わなくたって、ビッグ・エーのパイシートと、あたしの千代の一番があれば、世界一エレガントな料理ができる。
知恵と工夫でみんなを笑顔にする……あんたのその『定理』、あたしは大好きだよ!」
「マーム……! 最高の褒め言葉、プライスレスですぞ!」
Mastercard先生が胸に手を当てて深く一礼する。
「よし! 話が決まったら、明日の六義園のお花見の特設テントでは、おでんと一緒にこのミートパイも焼きまくるよ! JCBさん、パイに合う『出汁割りブランデー』の準備さ! 今夜も朝まで、エレガントに飲み明かすよ、乾杯!!」
「イエス、マーム!」
「ハオラー、ハオラー!」
たみこママのらくらくホンが明るく緑色に輝き、白山の居抜きバーは、コーヒーの芳醇な香りと和風ミートパイのサクサクとした幸せな音に包まれて、どこまでも美しく、エレガントに更けていくのだった。




