たえこママと、八角の香り
(舞台説明)
ここは、メタバース空間にある、とあるバー、切り盛りするのは、雇われママの、たえこママであった。
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深夜の『The Wallet』。
店内は明日のお祭りに向けて、八角のエキゾチックで甘い香りに包まれている。
銀聯先生がチャイナドレスの袖をまくり、ホログラムではなく本物の「本格中華トンポーロー」をマントウに挟み、パクチーを添えて常連たちに配っている。
ユニオンペイくんは口の周りをタレだらけにして喜び、PayPayくんやSuicaくんもその圧倒的な美味さに、食欲が止まらない。
「好ーーーっ!! みんなどんどん食べるアルよ!」
銀聯先生がビンテージ白酒のボトルを片手に豪快に笑う。
「次の、商店街のお祭りは、この『特製トンポーロー・マントウサンド』で決まりアル! 微博でも『白山のお祭りに世界一の角煮まん登場』って大拡散されてる的!」
「う、美味すぎる……!」
PayPayくん(バーコード)がレモンサワーのメガジョッキを片手に身を乗り出す。
「甘辛いタレと八角の香りが、このふかふかのマントウに染みて……アクセントのパクチーがまた最高ですよ! ママ、明日のお祭りの目玉はこれで行きましょう!」
「いや……確かに美味い。完璧な暗号化だ」
Apple PayさんもFace IDの瞳を輝かせ、スマートにマントウを頬張る。
「だが……ママ、屋台で何百食も大量にパブリッシュ(提供)するとなると、バックエンド(仕入れ)の負荷が大きすぎるんじゃないか?」
「林檎さんの言う通りだよ……」
たみこママが、文字サイズ「極大」のらくらくホンをポチポチ叩きながら、深いため息をついた。
「銀聯の姉さん、これ、ものすごい『豚の塊り肉』と大量の『八角』使ってるじゃないのさ。一体どこで買ってきたんだい?」
「そんなの、現実世界の横浜中華街まで行って、最高級の豚肉をブロックで爆買いしてきたアルよ!」
銀聯先生が胸を張る。
「やっぱりねぇ……!」
たみこママがらくらくホンをパカァァァン!!と大きな音を立てて閉じた。
「いいかい? あたしたちのベース基地は、ここ文京区の白山なんだよ! あたしが毎晩、割烹着を着てカゴを持って仕入れに行くのはね、24時間営業の**『ビッグ・エー(Big-A)』**なんだからさ!」
「ビッグ・エー……アルか?」銀聯先生が首を傾げる。
「そうさ! ビッグ・エーにはね、確かに安くて美味しい豚の薄切り肉や小間切れは置いてあるよ。
でもね、こんな八角が香るような本格的な中華の塊り肉なんて、どこを探したって売ってやしないんだよ!!
パクチー(ちゃんさい)だって、たまの特売でちょっと置いてあるくらいさ! 明日のお祭りで何百人も押し寄せたら、ビッグ・エーの棚が1分で空っぽ(システムダウン)になっちゃうじゃないのさ!」
ママのリアルすぎる「仕入れの限界」のお説教に、バーの面々は一気に現実に引き戻された。
「そ、そうか……ビッグ・エーにはブロック肉は売ってないべさ……」
Kitacaくん(北海道)がレッドアイを飲みながらシュンとする。
「せっかくの美味しいトンポーローなのに、明日出せないなんて寂しいっちゃね……」と、はやかけん くん(福岡)も涙ぐむ。
「ママ、お困りのようですな」
その時、カウンターの奥で静かに着物の袖を直した男──JCB氏(京都弁)が、はんなりと微笑んだ。
「銀聯はんの本格中華を、白山のビッグ・エーの食材だけで再現する……それこそが、うち(JCB)とママのチームワークの見せ所どすえ。
ママ、ビッグ・エーの『豚の三枚肉(薄切り)』と、お菓子のコーナーにある『あるもの』を使えば、八角風のコクは簡単に出せますえ」
「えっ!? お菓子コーナーの『あるもの』だって!?」
たみこママが目を見開く。
JCB氏がブレンドした隠し味とは、なんとビッグ・エーで買える**「コーラ」と「五香粉(ウーシャンフェン:たまに調味料コーナーにある)」**、そして肉を巻いて塊に見せる技だった。
薄切り肉をぎゅっと巻いて焼き目をつけ、コーラとうすくち醤油、五香粉で煮込むことで、まるでじっくり煮込んだ高級トンポーローの味と香りが、ビッグ・エーの食材だけで見事にハッキング(再現)されたのだ。
「……できたよ! これならビッグ・エーの材料だけで、いくらでも作れるさ!」
たみこママが試作した「白山風トンポーロー」をみんなの前に出す。
サクッ、ジュワァ……。
「美味いアル!! 横浜中華街の味と完全に一致アル!」銀聯先生が驚愕する。
「これなら明日のお祭り、何百食来ても『ピッ』とマルチ決済でさばききれるばい!」SUGOCAくんも大喜びだ。
「よし! 話が決まったら、今夜はビッグ・エーの豚バラ肉をみんなで巻きまくるよ! らくらくホンのワンタッチボタンで、商店街の会長さんに追加のキャベツ(パクチーの代用)も発注さ! 明日のお祭りも大成功にするよ、乾杯!!」
「イエス、マーム!」
「ハオラー、ハオラー!」
たみこママのアイデアとJCB氏の知恵によって、白山の居抜きバーは再び活気を取り戻し、明日のお祭り大成功に向けて、夜通しお肉を巻く温かい笑顔で満たされていくのだった。




