たえこママと、スマートフォン
(舞台説明)
ここは、メタバース空間にある、とあるバー、店を切り盛りするのは、雇われママの、たえこママであった。
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東京・白山、そば屋の居抜きバー『The Wallet』。
今夜は、カウンターの上に各社の最新スマートフォンがずらりと並んでいる。
たみこママが愛用してきた京セラのガラホがついに寿命(電波の終了)を迎え、店を挙げての「ママの機種変会議」が招集されたのだ。
しかし、画面をタッチするだけの最新スマホに、ママは強い不信感を募らせていた。
「絶対に嫌だよ!」
たみこママが腕を組んで、割烹着を膨らませる。
「あたしはあのツルツルした画面が信用できないんだ。ボタンを『カチッ』と押し込む感触がないと、誤送信しそうで夜も眠れないよ!」
「ママ、今のスマホはセキュリティもFace IDも完璧ですよ」
黒いスーツのApple PayさんがiPhoneを差し出すが、ママは首を横に振る。
「そんなに物理キーボード(ボタン)が良いのかい、ママ?」
カウンターの奥で、JCB氏(京都弁)がグラスを拭きながら、不敵に微笑んだ。
「それなら、うちが海外の裏ルートから、ええ端末を仕入れておきましたえ。……ほら」
JCB氏がカウンターに出したのは、なんと**『BlackBerry』のAndroid端末**だった。
液晶の下に、びっしりと並んだ美しいフル物理キーボード。
「あら! 何これ、可愛いじゃないの!」たみこママの目が輝く。
「これだよ、これ! ボタンがこんなにたくさん付いてるなんて、最高にセキュアじゃないのさ!」
「ちょっと待ったべさーーーっ!!!」
その時、カウンターの端からKitacaくん(北海道)が悲痛な叫び声を上げて立ち上がった。
「ママ、そのブラックベリー、『FeliCa』の機能がついてないべさ! おサイフケータイが使えないべさ!」
「な、何だって!?」たみこママが目を見開く。
「そうたい、そうたい!」SUGOCAくん(九州)も芋焼酎のグラスを置いて大慌てだ。
「フェリカが使えんと、俺たち交通系ICカード(Suica、ICOCA、SUGOCAたち)をママのスマホに登録して、オートチャージできんくなるとよ! 死活問題ばい!」
「私らIC一同、そのブラックベリーには大反対どすえ!」と、PiTaPaさんも珍しく声を荒らげる。
交通系ICたちの猛反対にあい、ブラックベリー案は一瞬で撃沈。
「じゃあ、これでどうですか?」
PayPayくんが、一枚の怪しい外付けパーツを持ってきた。
「iPhoneの底面にはめ込む、**『外付けBluetooth物理キーボード』**ですよ! これならApple Payの機能を残したまま、ボタンも押せます!」
「お、いいじゃないの!」
たみこママが早速、Apple PayさんのiPhoneにそのキーボードをガチャリとはめ込んでみた。
「……って、ちょっとあんた、これ何さ!?」
たみこママが、完成した端末を持ち上げる。
iPhoneの縦の長さに、さらにキーボードがくっつき、その姿はまるで**「ちょっとした大根」か「護身用の警棒」**のような、とんでもなく巨大な長細い端末になってしまったのだ。
「オーマイゴッド……」Visaマスターが頭を抱える。
「マーム、それじゃ割烹着のポケットから15センチくらい飛び出しチャイマース! 電話に出る姿が、まるでトランシーバーデース!」
「重いし、お財布に入れるにはデカすぎるワン!」とWAONさんも大爆笑。
バーの中は、その巨大すぎる「大根スマホ」の姿に大盛り上がり。
「──もう、いい加減にしなさいよ!」
たみこママはハァと溜息をつくと、巨大化した林檎端末をバラバラに分解し、Apple Payさんに突き返した。
そして、自分の割烹着のポケットから、別の『真の本命』をカチャリと取り出した。
「やっぱりね、あたしにはこれしかないのさ。……ほら!」
ママは既に、ナンバーポータビリティ(MNP / LNP)を完了していた、常連客を引き寄せるネタにしていたのであった。
ママが誇らしげに見せたのは、**ドコモの『らくらくホン(シニア向けガラホ)』**だった。
文字がこれでもかと巨大に表示され、ボタンの「1」「2」「3」には、最初から「ワンタッチダイヤル」の大きなシールが貼ってある。
「……え?」PayPayくんが固まる。
「これが一番だよ!」たみこママが満足そうにパカパカと開け閉めする。
「ボタンの押し心地は最高だし、文字はハッキリ見えるし、落としたって頑丈だし、何より**『らくらくタッチパネル』**だから、画面を押すと『カチッ』と振動が返ってくるんだよ。これで誤送信ともおさらばさ!」
画面には、デカデカと【商店街の会長さん】という文字が液晶の8割を占めるサイズで表示されている。
それを見た一同は、一瞬の静寂の後、
「文字、デカすぎるわーーーっ!!!」
と、床に転がりながらの大爆笑。
「ハオラー、ハオラー! ママにはそれが一番お似合いアルね!」と銀聯先生も白酒を吹き出して爆笑し、Suicaくんもクールな顔を崩してクスクスと笑いが止まらない。
JCB氏も「さすがママ、らくらくの極みどすな」と、お腹を抱えて笑っていた。
「何さ、みんなして笑うおよしよ! これで、明日の商店街のメールもバッチリなんだから!」
たみこママが真っ赤になりながら「らくらくホン」をパカッと閉じた。
白山の居抜きバーの夜は、ママの最新(?)のらくらくホンを囲んで、いつまでも温かい爆笑の渦が響き渡るのだった。




