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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.78】自己弁護・記憶の改竄(メモリー・シールド)

ようやく動き出した時計の針が、14日の午前を指している。フェアカさんが開店準備を整え、お気に入りの茶葉を選んでいたその時、ワゴンの窓が外から激しく叩かれた。


「ちょっとフェアカ! 大変よ、時空の歪みが私の冷蔵庫を直撃したわ!」


窓を開けるなり飛び込んできたのは、涙目で高級プリンの空き瓶を掲げるルミナリエ様。その絶叫は、朝の爽やかな空気を一瞬で台無しにする。


「いい? 昨日買ったばかりのプリンの賞味期限が、なぜか昨日付で切れているのよ! あと3日は期限があったはずなのに! これって昨日が百回繰り返されたせいで、プリンの鮮度だけが百日分進んじゃったってこと!? 私の胃袋への冒涜だわ!」


相変わらずの飛躍した論理に、フェアカさんは淹れたての紅茶を一口含み、深く溜息を吐き出す。


「何を言っているんですか、ルミナリエ様。それは単にあなたが賞味期限を見間違えていただけでしょう? 昨日のループはあくまで因果の停滞。物質の腐敗まで加速させるような欠陥品を売った覚えはありません」


「えっ、でも私の記憶では絶対に……!」


「ご自身の記憶を過信しすぎよ。女神といえど、限定フィギュアの予約開始日以外は驚くほどガバガバな脳細胞なんですから。賞味期限の数字くらい、願望で書き換えて見ていたんじゃないかしら?」


フェアカさんの淡々とした指摘に、ルミナリエ様は「ぐぬぬ……」と言葉を詰まらせ、空き瓶をまじまじと見つめた。事実、彼女の記憶など、昨日の夕飯が何だったかさえ怪しいものである。


「……ま、まあ、そう言われればそんな気もしてきたわ。でも、なんか納得いかない! こうなったら、何を食べても賞味期限が『今』になるチートを出しなさいよ!」


「そんな食中毒を誘発するような不衛生な力、在庫にありません。……どうしてもというなら、これを持っていきなさい」


フェアカさんがカウンターに置いたのは、古びた消しゴムのような小さな石だ。


「これは『自己弁護・記憶の改竄』。これを使えば、自分の都合のいいように過去の記憶を上書きできるわ。賞味期限を見間違えたという事実さえ、最初から合っていたことに書き換えれば、あなたのプライドは守られるでしょうね」


「それよ! 完璧な解決策じゃない!」


ルミナリエ様は現金なもので、石を掴むと上機謙で神殿へと帰っていった。フェアカさんは、遠ざかる背中を見送ると、ワゴンの接客用カウンターにある小窓を静かに閉める。


「……相変わらず、話は最後まで聞かないのね。その力はね、使いすぎれば客観的な事実との整合性が取れなくなって、最後には自分の存在そのものが『矛盾』として世界から弾き出されることになる。まあ、元から矛盾の塊のような女神様には、お似合いの末路かしら」


フェアカさんは、ようやく訪れた静寂の中で、手元のカレンダーをめくった。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。都合のいい記憶、書き換えられた過去、それと独りよがりの真実。……自分の間違いを認められないまま消えていくのも、一つの幸せな形なのかしらね。当然、返品不可ですよ?」


ご拝読ありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?

賞味期限という極めて個人的な「正義」のために、記憶を書き換える力を手にしたルミナリエ様。彼女が自分のミスをすべて「なかったこと」にしていく先には、どんなカオスが待っているのでしょうか。


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