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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.76】因果膠着・永劫の十三日(エターナル・サードティーン)

「……おかしいわね。今日は定休日明けの13日。本来なら、ろくでもない客が押し寄せたり、ルミナリエ様がワゴンの屋根を突き破って降ってきたりするような、とびきりの災厄日のはずなのに」


フェアカさんは、手元のティーカップを静かにソーサーへと置きました。カチリ、という陶器の重なる音が、無人の車内に不自然なほど明瞭に響きます。


ワゴンの接客用カウンターにある小窓から外を覗けば、そこには驚くほど穏やかな陽光が降り注いでいました。確かに客層は相変わらずで、こちらの説明を最後まで聞きもしない不届き者ばかりが並んでいます。しかし、おかしいのです。世界を揺るがすような決定的な不幸も、理不尽な天変地異も、今日に限って一向に訪れる気配がありません。


「あまりにも、平和すぎるわ。まるで、嵐の前の静けさを無理やり塗り固めたような不自然さ。……誰かしらのチート能力が働いている?」


フェアカさんは、顎に手を当てて思考を巡らせました。彼女の直感は、この平穏が「幸運」によるものではなく、何らかの「強制」によるものであると告げていました。


その疑問を解消すべく、フェアカさんは重厚な帳簿の裏表紙に隠された「因果観測盤」を起動しました。銀の円盤の上で、針が狂ったように震え、因果の揺らぎを追い始めます。やがて収束した針が指し示した数値を見て、彼女は眉をひそめ、信じがたい真相を突き止めました。


「……なるほどね。災厄日にならない13日目を、誰かが意図的に繰り返しているんだわ」


観測盤に映し出されたのは、今朝方『因果回帰・限定的な巻き戻し(リミテッド・リワインド)』を持っていった、あのギャンブラー勇者の因果でした。それは幾重にも重なり合い、真っ黒な糸玉のように絡まり合っています。


彼は、大切な誰かを救うために、13日の夜が明けて「救えなかった結果」が確定する直前に、何度も、何度も時間を巻き戻していたのです。


「あの馬鹿。記憶は引き継げないと言ったのに。巻き戻るたびに知識も経験もリセットされ、残るのは魂に刻まれた『無意識の恐怖』だけ。あの子は、何が起きたかも分からぬまま、ただ言い知れぬ不安に突き動かされて、13日目の朝をやり直し続けているのね」


フェアカさんは溜息をつきました。彼が「納得のいく13日」を完遂できない限り、この世界は永遠に14日を迎えられない仕様になっています。明日を拒絶し、停滞し続ける世界。それは緩やかな死と同じです。


「因果の摩耗はもう限界よ。彼は今、100回目のリミットを目前に、またしても運命の選択を間違えようとしている。このままでは救うべき相手もろとも、因果の塵になって消えるわね」


フェアカさんは立ち上がり、棚から一冊の分厚い教本を取り出しました。


「さて、私専用のチート『どこでも講習』の出番かしらね。この無限ループは契約の範疇を超えた営業妨害だわ。……強制的に明日へ進ませるための、特別授業が必要なようね」


フェアカさんは、接客用カウンターの小窓を勢いよく開け放ちました。穏やかな日差しを切り裂くように、彼女の慈悲なき声が響き渡ります。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。終わらない今日、停滞する運命、それと百回目の断末魔。……逃げ続けても明日は来ないのだと、その魂に刻み込んであげるわよ」


ご拝読ありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?

災厄の日が来ない平和の正体は、救いを求める勇者が作り出した「終わらない13日」でした。フェアカさんの日常を邪魔した代償は、高くつきそうですね。


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