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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.62】精神崩壊型・自堕落への逃避(フル・リトリート・モード)

日和の初陣を見送りにも行かず、フェアカさんは自宅の奥深く、シルクのクッションが敷き詰められた天蓋付きのベッドに沈んでいました。


「……フェアカ様、もうお昼でございますよ。あちらの世界では、あのお嬢様が最初の一歩を踏み出した頃合いかと」


そう言って、甲斐甲斐しくフェアカさんの口元にカットフルーツを運ぶのは、家付きのメイドさんです。フェアカさんは「あー」と力なく口を開けてそれを受け取ると、寝返りを打ってメイドさんの膝の上に頭を乗せました。


「知らないわよ。装備も貸したし、セレーナ(あのバカな聖女)も付いていったんだから、私が心配することなんて何一つないわ」


「そう仰りながら、昨夜からずっと、その空っぽになった胸元のペンダントの跡を触っておいでですが?」


「それは……単に、長年の重みがなくなって肩が凝っただけ。……ほら、もっと撫でなさい。今日は何もしないって決めたんだから」


フェアカさんは完全に骨抜きになった状態で、メイドさんに髪を梳かされ、耳を掃除され、徹底的に甘やかされていました。あの商売上手で現実主義な「チート売り」の姿はどこにもありません。


「もう……あの子がいないと、ネットスーパーの特売情報も入ってこないし、ルミナリエ様の無駄話に相槌を打つ手間も省けるし、なんて清々しいのかしら。……最高だわ、本当に」


「左様でございますか。……でも、お顔が少し寂しそうに見えますよ」


「……うるさいわね。これは昨日の在庫整理で目が疲れているだけよ。……あー、もう! 膝枕、もっと高くして! あと、甘いお酒も持ってきて!」


フェアカさんは、日和に貸した鎧が彼女の細い体には重すぎなかったか、セレーナが過保護に魔法を使いすぎていないかといった不安を、大量の甘やかしで塗りつぶそうとしていました。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。空っぽの仕事場、主人のいないワゴン、そして自堕落に溺れる寂しがり屋。……今日だけは、どんな高価なチートよりも、メイドさんの膝枕が一番の救いよ」


ご拝読ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

最強のチート売りも、愛弟子(?)と親友を同時に送り出した喪失感には勝てなかったようです。

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