【Cheat Ability No.60】継承不能型・唯一無二の代償(オンリーワン・オリジン)
「フェアカさん、私……決めました。私も、誰かを本当に幸せにするためのチートを作れるようになりたいです! だから、弟子にしてください!」
夕闇が迫るテラスで、日和は深々と頭を下げました。しかし、フェアカさんは手に持っていたティーカップをゆっくりと置き、困ったような、どこか遠くを見るような目で日和を見つめました。
「弟子入り? ……無理ね。教えたくても、教えられる類のものじゃないのよ、これ(チート作成)」
「えっ……。才能、ですか?」
「そんな綺麗なものじゃないわ。私がこのスキルを得た条件は、今思い返しても特殊すぎるもの。前にちょっと話したと思うけど……まず、勇者として地を這うような経験を積んで、レベルもステータスも全てカンストさせること。そして魔王を討伐した直後、神様の気まぐれで自分の世界が消滅させられようとした時に、それでも『絶対に失いたくない』という、呪いに近いほど強い執着を持つこと。……それが、私の知る唯一の取得条件よ」
フェアカさんは自分の銀のペンダントを握りしめ、静かに言葉を続けました。
「教えられて身につく技術じゃない。世界が消える瞬間に、自分の魂を削り取って形にするようなものだから。……日和、あなたにそれができるかしら?」
日和は絶句しました。フェアカさんが背負っている「チート売り」という肩書きの裏にある、あまりにも重すぎる過去。
「でも、勇者として経験を積みたいというのなら、賛成よ。今のままじゃ、あなたは私の隣でずっと守られているだけだもの」
フェアカさんはそう言うと、ワゴンの奥から鈍い光を放つ古びた装備一式を取り出しました。かつて彼女が世界を救い、そして失った時に身につけていた「本物の勇者」の装備です。
「これを貸してあげる。……いい、必ず生きて返しに来るのよ。その時は、今より少しはマシな顔になっているでしょうね」
そこへ、会話を盗み聞きしていたルミナリエ様が、後光を背負って乱入してきました。
「ちょっとぉ! 日和ちゃんが勇者デビュー!? エモいわ、エモすぎる! よし、私から最高級の『勇者特典』を授けてあげる! 聖剣? 聖盾? それとも無限の魔力?」
フェアカさんは日和の顔を覗き込み、不敵に笑いました。
「さあ、どうするの? 神様から過保護な恩恵をもらってヌクヌクと旅をするのか、それとも自分の足で泥を啜って、私の装備を汚しに行くのか。選ぶのはあなたよ」
「……。…………。」
日和は、差し出された勇者の剣の重みを、その手でしっかりと確かめました。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。継承できない技術、譲れない誇り、そして始まる新しい物語。……さて、あなたの旅費は、出世払いできっちり回収させてもらうわよ」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
日和が「守られる側」から「歩む側」へと踏み出す、大きな転換点となりました。




