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チート売りの少女/女神は最近の転生者が「普通すぎるチート」に飽きていると嘆き、斬新なアイデアを求めて私のところにやってくる!  作者: 弌黑流人


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【Cheat Ability No.57】自己浸食型・甘美なる住処(キャンディ・カニバリズム)

「日和、足元をよく見て。そこ、床じゃなくて『飴の破片』よ」


フェアカさんが指した先、かつては色とりどりのチョコレートやクッキーでできていたはずの部屋は、無残にも削り取られ、今や基礎となるウェハースが剥き出しになっていました。部屋の中央には、驚くほど痩せこけた女性が、震える手で壁のキャラメルを剥ぎ取っています。


「フェアカさん、彼女……ダイエットに成功したってレベルじゃないですよ。ガリガリじゃないですか!」


「当然よ。このチートは『自分の家の壁を食べると自分のカロリーとして計算される』……つまり、食べれば食べるほど自分の肉体は維持されるけれど、その代わりに自分の『居場所』が消えていく仕様なの。彼女は空腹に耐えきれず、自分の家を文字通り食い繋いできたのね」


「フェアカさん、もう限界よ……。壁を食べるとお腹はいっぱいになるけど、外が寒くて、夜が怖いの……。でも、食べるのをやめたら私は餓死しちゃう……!」


女性勇者が涙を流しながら壁を齧ると、パリリと音がして、天井の一部がさらにはがれ落ちました。家を維持すれば飢え、自分を維持すれば家が消える。終わりのない自己浸食のループです。


「返品は不可よ。でも、アフターケアのオプションがあるわ。……日和、ネットスーパーで『超高硬度・無味乾燥レンガパン』と『防寒用・アルミ蒸着シート』を注文して」


フェアカさんは、ワゴンから取り出した「絶対に美味しくない、けれど腹持ちだけは異常に良い保存食」を部屋の隅に積み上げました。


「今日からはこのレンガパンを齧りなさい。味気ないけれど、これを食べている間は家の壁を食べずに済むわ。その間に、食べ尽くした壁を普通の泥で補強することね。……お菓子の家に住む夢は、これでおしまいだけれど」


「……ありがとう。もう、甘いものは見たくもないわ……」


女性が泥まみれの壁にアルミシートを貼り付け、惨めな隠れ家を作り直すのを見て、フェアカさんは事務的に報酬を回収しました。彼女が魔王軍から奪った「永久保存の高級スパイス」は、フェアカさんのコレクションへと消えていきます。


「……フェアカさん。夢のようなお菓子の家が、最後は泥とアルミの避難所になっちゃうなんて」


「欲望を自分の血肉に変えるっていうのは、土台を削って塔を建てるようなものよ。最終的に崩れるのは、いつだって自分の足元からなの」


フェアカさんは、帳簿に「住居崩壊寸前・食事改善」と記し、次の部屋へと歩みを進めました。


「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。削り取られた安らぎ、甘くない現実、泥を塗った夢の跡。……自分の家を食べるのは、自分自身を切り売りするのと同じことよ」


ご拝読ありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

憧れのお菓子の家を食い潰し、貧相な現実を突きつけられた勇者のアフターケアでした。

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