【Cheat Ability No.45】感動搾取型・聖女の遺稿(メモリアル・パブリッシング)
「日和ちゃん見て! 徹夜で書き上げたわ! タイトルは『銀髪の勇者と光の聖女、果たせぬ約束の花園にて』! これ、絶対天界でベストセラーになるわよ!」
ルミナリエ様がワゴンの前で、記憶消去を免れた断片的なポエムを繋ぎ合わせた「感動巨編」を掲げて踊っていました。彼女にとって、フェアカさんの黒歴史は最高に売れる「エモい素材」でしかありません。
「ルミナリエ様、それ、フェアカさんに見つかったら消されますよ……。っていうか、もう後ろに立ってます」
日和が震える指で差した先には、修羅の如きオーラを纏ったフェアカさんが、出版予定の原稿をじっと見つめていました。
「……私の日記を『感動の叙事詩』として量産するつもり? 勇気があるわね、ルミナリエ様」
「ひっ! い、いいじゃない、これだけ素晴らしい感性は世界で共有すべきよ! 著作権料は神格経験値で払うから……!」
フェアカさんが静かに手を伸ばし、原稿を物理的にデリートしようとしたその時、ワゴンの前に一人の影が立ちました。
「あの……。こちらで、雇っていただけないでしょうか……」
そこにいたのは、前回の厄日で「不幸すぎる魔王」へと変わり果て、勇者たちに介護されていた元・魔王でした。彼はボロボロの履歴書を差し出し、今にも消え入りそうな声で続けます。
「魔王城にはもう居場所がありません。勇者たちが『お前は働かなくていい、寝ていろ』と過保護に接してくるんです。僕は……自分の力で、この不幸を誰かの役に立てたいんです……」
「魔王がバイト志望……? 効率は最悪ね。でも、ルミナリエ様のこのゴミみたいな原稿を全部シュレッダーにかける仕事なら、今すぐ用意できるわよ」
フェアカさんは、薄幸魔王を盾にしてルミナリエ様を牽制するという、性格の悪い解決策を思いつきました。
「えっ、あ、はい! やらせてください! ……ああっ、紙の角で指を切っちゃいました……やっぱり僕は不幸だ……」
魔王がシュレッダーを回すたびに、ルミナリエ様の「エモい叙事詩」が裁断されていきます。日和はネットスーパーで「超強力・傷テープ(魔王用)」を注文しながら、カオスすぎる店先に頭を抱えました。
「フェアカさん、うちの店、いつから『訳あり女神の出版社』兼『魔王の更生施設』になったんですか?」
「さあね。でも、不幸な魔王に日記を刻ませるなんて、私のポエムよりずっと『皮肉』が効いてるじゃない」
フェアカさんは皮肉げに笑い、自分を慕って(?)やってきた魔王に、ボッタクリ価格のまかない(パンの耳)を差し出すのでした。
「チート、チートはぁ、いらんかねぇ……。勝手に書かれた自叙伝、魔王の再就職、裁断された青春、なんでもござれ」
ご拝読ありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
ルミナリエ様の野望は魔王の手によって粉砕され、ワゴンには新しい「不幸な店員」が加わりました。




