第2話 確信
冴えないフリーター・空野冬二は、仕事も恋愛も思うようにいかない日々を送っていた。そんなある日、彼は街中で出会った理想的な男に憧れ、「あの男と入れ替われたら」と願う。
すると、幼い少年のような声が響き、次の瞬間、彼の願いは現実となっていた。
人混みの中、多くの人が行き交う中でその3人は酷く目立っていた。
「なんなんだよこれ!!お前、誰なんだよ!!!」
「ど、どうしたの?あなた、ユウハくんの知り合いとかなんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください……!!目立ちすぎてます!!一旦移動しましょう……!!」
冬二は……否、ユウハと呼ばれている男の外見をしながら空野冬二としての人格があった彼は、二人を引き連れて目立たない路地裏へ移動した。その途中、様々な考えが過ぎる。けれどもたった一つのシンプルな結論に至っていた。
(まずは元に戻らないと……!)
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「………信じ難いけれど、今私の目の前にいるユウハくんはソラノさんという人で……」
「俺がガワは違うけれども確かにユウハなんだよ」
冬二とユウハの二人の説得により、ミチカにどうにか状況を理解させるに至る。しかし、ユウハには別の疑問が浮かぶ。
「……で、ソラノさん。何がきっかけになってこうなったか、本当に分からないんですか」
苛立ちを感じさせる口調で、けれども必死に冷静に振る舞おうとしているようにも聞こえる声でユウハは問い掛ける。冬二もまた、動揺していたが正直に全てを話していた。
「それが、先程も申し上げている通りで、確かにお二人のことを少し見てはいましたが、それ以外に何もしていなくて………」
「俺になりたいとか、俺と入れ替わりたいとか思った次の瞬間に、こうなってた……んですよね」
冬二は酷く焦り、鳥肌が立ち、冷や汗をかき始めていた。そしてそれを自覚し、整った容姿のこの身体を汚すまいとし、更に焦りを加速させる。
負の連鎖に陥り、一向に解決の糸口が掴めなかったその時だった。またしてもあの声が聞こえた。
『同じようにしたらいいのに。ほら、願うだけだよ。「入れ替わりたい」ってさ』
姿も形も見えなかったが、冬二はまたしても少年の声を聞いた。
(願うだけ……?「入れ替わりたい」って……?)
入れ替わったまま、解決しないという訳にも行かない。冬二は半ば投げやりであったが、その声に従うことにした。
(もう一度、この人と入れ替わりたい。)
視界がまたしても変わる。先程まで横顔を拝んでいたミチカが正面を向いていた。そして例えようのない安心感、衣服が肌にしっくりと馴染むようであった。
「えっ……!?あぁっ!?戻った!!」
「嘘!本当に!?ユウハくんなの!?」
「あぁ……僕もです!!僕が空野冬二です!!!」
何をしたかと言われれば、冬二はただ入れ替わりたいと願っただけであった。その旨を、ユウハとミチカの二人に伝える。二人は驚いたようであった。
「本当にこんなことがあるなんて……いや、空野さん、こちらこそすみませんでした。俺も慌てていて、つい口調が荒くなってしまって」
ユウハは混乱から冬二にキツく当たっていたことを謝罪する。
「ここでこういうことがあったのも何かの縁でしょう。空野さん、どうですか?この後よろしければ、俺たちと一杯」
ユウハは冬二に提案する。隣のミチカも嫌がっている素振りは感じられない。冬二は悩んだが、受け入れることにした。
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(「鴉野侑晴」さんに、「尾長弥千華」さん……か)
あれから数日が経っていた。冬二はスマホに登録された、二人の連絡先をただ眺めていた。
飲みの席で、三人は皆同い年であることや、同郷であること、学校も近かったことなどを共有し合い、意気投合していた。そして、その席で更に分かったことがあった。
(僕が入れ替えようと思った人同士が入れ替わる……)
あの夜、冬二は侑晴らに言われるがまま、何度か入れ替わりたいと願い、その度に入れ替わった。そんな中、侑晴は「弥千華さんと入れ替わりたい」と呟く。
冬二は試す意図も込めてこのように願った。「侑晴さんと弥千華さんが入れ替わったらなあ」と。
果たしてその願いは叶えられた。当初、大きな驚きが三人を同時に襲った。また、逆に戻したいと冬二が願うとそれも即座に叶えられた。
冬二は確信する。自分は何か超人的で異質な能力に目覚めたのだ、と。




