第1話 自覚
やぁ、おはよう。
……いや、目覚めたばかりとも限らないね。こんにちは、あるいはこんばんは。
ボクは神様。
そして君は読者。そうだよ、僕はこの物語を見つけ、辿り着いたそこのキミに語り掛けているのさ。
君は必ず一度は考えたことがあるだろう?
人智を超えた異質な力、それに対する憧れなどを。
これは、そんな皆の夢を叶えてあげた、物語。
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頭が痛い。クラクラする。寝起きはいつもこんなものだ。
それでも眠気が一気に吹き飛ぶ。最悪な理由で。
「やっばぁ!?もう13時じゃん!!!」
空野冬二はしがないフリーターである。友人に紹介して貰った温泉宿でアルバイトしながら実家暮らしをする、モテ期未到来の24歳。
14:57。ギリギリで出勤定刻に滑り込み打刻。息が上がっているのを見て、苦手な上司の村山に声を掛けられる。
「空野、お前走ってきたみたいだな。また寝坊したんだろう?」
図星。思わずピクリと背筋が伸びる。
「あのなぁ、ビクッてするなよ。図星なんだろ?本当に嘘が下手、それでいて隠し通せると思ってる。そもそも目覚ましを何重にも掛けるだとか、出来る対策が……」
鬱陶しい。消えて欲しい。そう、何度思っただろう。
空野は弱気な男であった。故に上司には口答え出来ず、気になる異性にも話し掛けるのを躊躇い、そのうちに他の男に取られる。常に受け身で生きてきた男であった。
(………痛い。)
ズキッとした痛みが頭に走る。
今朝、空野は目覚ましを掛けていた。7:00から5分刻みに、何重にも。それでも空野は13:00を過ぎる頃まで目が覚めなかった。スマホには、目覚ましが鳴った痕跡があった。充電切れなどではなく、更にマナーモードでも無かった。
(こんなこと、今まで無かったのに。)
勤務を終え、帰路に就いた空野の心は決して晴れて居なかった。ふと、駅前で談笑するカップルが視界に入る。
男性の方は煌びやかな腕時計をし、整った髪型で服装も靴に至るまで良く見える。恐らくはブランド物なのだろう。女性の方も、可憐で美しい顔立ちに白が基調の服装。長く艶やかな髪を蝶を模した髪留めで括り、控えめに言っても美人の典型であった。
(仕事の話をしている。)
空野は申し訳無いと感じつつも、そのカップルの会話を盗み聞いていた。カップルは両者共に、名の知れた一流企業に務めているようであった。空野は憧れと嫉妬の入り交じった、不安定な感情の濁流に揉まれた。
(あぁ、あんな風になれたらなあ。あの男と入れ替われたらなあ。)
『叶えてあげよう!』と、幼い男の子のような声を空野は聞いた。
次の瞬間、空野の目の前にはあのカップルの女性がいる。にこやかに笑いかけている。何が起こったのか、空野は何も理解出来なかった。
「こ、これは違うんです!!!」
咄嗟に、自らが何かの間違いでその女性に詰め寄ってしまったのだと結論付けた空野は叫ぶように主張する。女性はキョトンとしている。怖がる素振りは無く、ただ不思議そうにしていた。
「ユウハくん、どうしたの?」
女性はそう言った。確かにユウハと言った。空野は、この人は確かにボクに対してではない、空野冬二でも知らない男でもない人に話し掛けているのだと悟った。そして瞬きもせぬ間に、更に驚くことが起こる。
「ミチカさん!!!これ、何だよ!!!なんなんだよ、【この身体】は!!!!」
空野は二度驚き、危うく卒倒しかける。まず、そう叫んで駆け寄ってきた自分そっくりな……否、自分そのもののな男に。そして、自分が先程見ていたカップルの男性と同じ腕時計と服装を、自分が纏っていることに。
(まさか………
入れ替わった………………!?)




