【172話】人間界の夏休み
*****人間界(学生寮)*****
マキ達と交代で人間界へ戻ってきたユキとメアリーは学生寮の掃除をしていた。マキから与えられた罰である。
「掃除って新築したばかりだからぁ、あんまりぃするところないねぇ。」
「ですがこの広さだと結構数が多いかもしれません。」
1Fのフロアーにモップをかけたり、窓ふきくらいしかすることがなかったが、かなり大きな建物だったので、やりだすと結構時間がかかるのだ。
「ユキさん、少し休憩しましょうか。」
「そぅだねぇ、ちょっと甘くみてたかもぉ。」
窓拭き担当のユキは室内と室外から窓を拭いていた為、外に出なければならず、暑さの為にフラフラになっていた。
室内に戻ると、自らの冷気で学生寮まるごと冷やして涼んでいた。すると外から声が聞こえる。
「メアリー誰かきたみたいだよぉ、もしかしてぇミキちゃん達かえってきたのかなぁ。」
学生寮の入り口に視線をやると、3人の姿が確認できた。
入り口の自動ドアが開き、中に入る3人。
「うわっ寒っ。」
ミキの声がしたため、ユキは走って入口へ向かう。
「ミキちゃぁぁん、おかえりぃ、アースちゃんもテミスちゃんもぉおかえりぃ。」
ミキに抱きつくユキ。
「ユキせんぱい、ただいまです。この寒さはユキせんぱいの仕業ですね。」
「そぉだよぉ。だってぇ外出ておそうじしてたからぁ、もう暑くてぇ。」
(だからってこれじゃ冷やしすぎだし。それになんでそんな話し方なのよ。)
「おかりなさい、ミキさん髪の毛の色明るくなりましたね。」
「メアリー先輩、ただいま戻りました。」
ユキから脱出したミキがメアリーにあいさつをする。
ユキはミキに逃げられた為、テミスやアースに抱きついていた。
「メアリーせんぱい、お久しぶりです。ミキさんかわいくなってるでしょ。」
テミスも嬉しそうにあいさつをし、ミキがかわいくなったと話す。アースは疲れたのか少々バテ気味だった。
「しかし皆さんよく焼けましたね。」
「ほんとだぁ、海にでもいってたのぉ?バイトしてたのわぁその為だったんだねぇ。」
「はい、海もそうですが、遊園地や動物園やいろんなところへ遊びに行く為にバイトしたんですが、結局全部理事長が負担してくださったので。」
せっかく貯めたバイト代を使うのはもったいないと思ったミサキは、移動手段は全て真欧グループの交通機関を使用させ、さらにミサキの所持するゴールドカードを持たせ、ミキ達に一切の負担をかけさせずに遊びに行かせたのである。
「理事長よほどミキさん達のことがかわいいんですね。」
「だよねぇ。うらやましぃよぉ。」
(しかし、ユキ先輩って学校とここではこんなに違うんだ。もう別人としか思えないわ。)
「明日はみんなでプールに行くんですが、ユキ先輩達もご一緒しませんか?」
「いいのぉ?いくいくぅヤッター。」
ユキは大喜びだった。メアリーもそんなユキを見ると嬉しそうな表情を見せる。
その日の学生寮は、それぞれが何をしたかで夜遅くまで盛り上がった。
*****翌日学生寮前*****
この夏最高の気温の朝、5人は学生寮前に集合し、プールへと向かう。
ユキはツインテールに、短パン、半袖のシャツ。いつものユキだった。さらにユキの身長は160センチにまで達していた。
メアリーは少し伸びたストレートで紫の髪、薄い紫のワンピースで白い帽子をかぶっている。身長は155センチのまま。
ミキは茶色くなった髪に、よく焼けた肌が肩からも見えるくらいの薄着で、短パン姿。ミキも155センチのまま、
テミスとアースはまるで双子のようにそっくりで、テミスの頬にあるホクロがなければ見わけが付かないほどであった。服装は2人共おそろいの白いワンピースに麦わら帽子。どちらも145センチ程伸びていた。
「しかし、あんたたち双子にしか見えないわ。」
ミキが2人にそう言うと2人共嬉しそうに微笑む。このところずっとミキと一緒にいる為、幸せの絶頂に達している2人の神だった。
「だねぇ、めちゃくちゃかわぃぃしぃ。ユキの妹にしたいくらいだしぃ。」
「てゆうか、ユキ先輩。また背が高くなったんじゃないんですか?」
「うん、また伸びたみたぃ。おちびせんぱぃは相変わらず小さかったけどねぇ。」
「ユキさん、マキさんに聞かれたらまたスライムにされますよ。」
「あはは、そぅだねぇ。」
そうこうしているうちに真欧プールに辿り着いた。
なぜか客がいない。
「誰もいませんね、今日は定休日なのでしょうか?」
メアリーが気になり、入口にいる係の人に開いているかどうか確認しにいった。
「どうやら、今日は貸し切りのようです。」
すぐに戻ってきたメアリーからそう言われ驚く4人。
「メアリー先輩、どういうことですか?」
「ミサキ理事長が、私達の為に貸し切りにしてくださるようにお願いされたようです。」
(すごいな、こんな広いプール貸し切りだなんて、あの方はこの人間界でも魔王みたいだわ。)
「じゃぁ、みんなぁいきましょぅ。」
ユキはお姉さんらしく、みんなを引っ張っていき、その日はひたすら遊びまくった。
「いやぁ、ほんとぉたのしかったぁねぇ。」
「はい、特にあの高いところから滑り落ちる滑り台は最高でした。」
「ミサキ理事長には、私からお礼を言っておきますね。」
5人はひたすら遊び続け、大満足で寮へ向かい帰る途中だった。
その間、コンビニに立ち寄りアイスを買い、食べながら歩いていると、前方から四人の女の子が歩いていた。
あちらも気がついたのか、近づいてくると、四人のうちの一人が声を掛けてきた。
「あら、氷神さんにメアリーさんこんにちわ。」
「こんにちは、皆さんもどこかにお出掛けされていたのですか?」
メアリーがその四人の女の子に尋ねる。どうやら、同じクラスの生徒らしい。四人共真欧学園の生徒なので、どこかのお嬢様だろう、着ている服も持ち物も全てブランド品ばかりだった。
「ええ、先程まで図書館に。メアリーさんと氷神さんはどちらに?」
「私達は、後輩の子たちと一緒にプールに行ってました。」
ユキは知らん顔している為、メアリーが笑顔でそう答える。
「あらそうですか、やはり学年上位の方は余裕ですね。遊びに行けるなんて羨ましいですわ。」
「そうよね、頭のいい方は違いますわね。」
「しかもプールですって、私達にはそんな所で泳ぐ事さえ出来ませんわ。父や母に叱られてしまいますから。」
「そうよね、一般の方が大勢いらっしゃる場所には行けませんよね。」
(なによこいつら、まとめて悪魔にしてやろうかしら。)ミキはキレそうだった。
ユキは同級生に対してあまり会話をしない、それに成績優秀なため、他の生徒から妬まれる事が多い。誰にも言っていないが、靴を隠されたり、教科書を捨てられたりと結構な扱いをされているのだ。
ユキは四人に視線を向け話し出す。
「夏休みで遊ぶ事と成績とどういう関係があるの?それに私達が遊んではいけないのかしら。あなた方にとやかく言われる筋合いはありません。」
ただ普通に言い返しているだけなのだが、表情は冷酷で、眼差しは今にも凍りつきそうな程冷たく、四人はかなりびびっていた。
(ちょっ、ユキ先輩て、やっぱり変だわ。どっちが本当の姿なのかしら。それに怒らせたら1番怖いのはユキ先輩ね。)
あまりの変化に驚くミキ。
「いえ、そういうわけでは。ごめんなさい氷神さん、そんな意味で言ったのではないので。」
「そう、ならいいですわ。ではまた学校でお会いしましょう。」
ユキの冷酷な表情を見て怖くなった同じ学園の生徒は、ユキに謝り立ち去った。
「ユキ先輩かっこいいです。」
「うんうん、かっこいいよね?」
テミスとアースは、ユキのはっきりした口調で話す言葉やその表情がとてもかっこよく見えた。
「あはは、だってぇ、嫌味っぽく言ってくるんだもぉん。」
冷酷な表情から一遍して再びいつもの笑顔にもどるユキ。
(ユキ先輩って絶対二重人格だわ。)
「しかしさっきのユキ先輩、まるで別人でしたね。」
「ミキさん、ユキさんは教室にいるときはいつもあのような感じですよ。」
「そんなことないよぉ、ユキはいっつもぉニコニコだもぉん。」
「じゃあ今度、ユキ先輩のクラスに遊びにいきます。」
「いいよぉ、いつもと同じだからぁ。もんだぃないもん。」
「あはは、じゃあ二学期始まったらテミスとアース連れて行っちゃいますから。」
「うんうん、たのしみにしてるねぇ。」
学生寮に着くまでその話題で盛り上がり、5人は寮へ戻って行った。




