【163話】囚人マキ
鎖でグルグル巻きにされているため、イモムシ状態のマキ達三名。誰がどう見ても魔界を代表する者には見えない。
レイは魔王城専属の副指令官であった為、マキ達が修行から戻り、魔王立会いの元、修行の成果を披露していたあの場にいた為、カオス、ディオの顔は当然知っていたが、マキの顔も解っていた。マキの髪の色は虹色であった為、とても印象深く、すぐに見分けがつくからである。
なので鎖で巻かれて転がっているマキを見て、都市外の気温よりもはるかに寒いかのような血の気の引き方を感じた。
(ま、まさか。こんなことろにあのお方がおられるわけがない。)自分の記憶を疑うわけではないが、もう一度三人を見る。
カオスとディオはマキの電撃により若干肌が焦げ、髪の毛は縮れあがっている為、外見では判断できなかったが、マキと思われる女の子は明かに髪の毛が虹色である。
(どうみてもあの色は魔界四天王であるマキ様の色だ。あの時は遠くから見ていたので表情までは覚えていないが。)
「フローラ、あの三人はこの都市外から歩いてこの都市にきたのか?」
レイの質問に首をかしげながら、頷くフローラ。
「そうだが、それが何か?」
(あのような軽装で外を出歩けるってことは、相当の魔力がなければなせる事ではないのに…フローラはなんにも思わなかったのだろうか。)
レイは半信半疑だったが、フローラから三人共都市外にいたことを確認すると、この三人があの時魔王城で見た三人だと確信する。
「あの…もしや魔界四天王でありますマキ様、そちらのお二人はカオス様にディオ様ではございませんか?」
鎖で巻かれた三人に跪いて問いかけるレイ、後ろで見ていたフローラはレイの問いかける三人が話そうとする前に声を大にして笑い出した。
「はっはっはっは、レイ!お前はいきなり何を言い出すんだ。総司令官や魔界四天王の方々がこんな寒冷地にわざわざ歩いてくるわけがないだろう。」
「フローラ、いいかげんにしろ。そもそも都市外を歩いてきた時点で気が付かないのか!」
グルグル巻きにされた三人は黙って二人の副指令官のやりとりを見ながら小声で話す。
「あーあ今度は二人でケンカを始めてしまったではありませんか。ほんとにマキさんが行くところは騒ぎばかりで。」
「わたしは関係ないじゃん!そもそもいきなりこんな状態にされたんだし、二人の人相が悪いからだよ!」
「いやいや、マキさんの髪のほうがもっとおかしいですよ。」
「なんだってー!えいっ!」
イモムシ状態で体当たりするマキ、それに対抗してカオス、ディオも体当たりする。
「レイ見てみろ、こんなのが魔界の中心の方々だと思うのか?」
その様子を見ていたフローラがレイにも遊んでいる三人の姿を見せる。
「うむ、確かにそういわれればそうだな。しかも鎖で巻かれているということは簡単に捕らえられたということか。」
レイも髪の毛は同色だが別人だと判断し、フローラに3人の身柄をまかせることにした。
「よし、この者を連行しろ!牢にでもぶち込んでおけ!」
マキ達は鎖にまかれたまま牢に入れられた。
*****寒冷地の城(地下牢)*****
『ガチャン!』
三人は1つの部屋に鎖で巻かれたまま放り込まれた。どうやら城の地下にある牢らしく、他にも数名の魔族が閉じ込められているようだ。
「マキさん、なんでわしらまで。」
「しらないよ。いやなら逃げちゃえばよかったのに。」
「主を置いてそんな真似できるわけないでしょうが。」
「まあ、たまにはこういうのも面白いしいいんじゃないかな。」
「囚人になるのが面白いって。髪の色とおなじで頭の中も変なのですな。」
「へぇー、ディオさんそんなこと言うんだ。ふーん。」
「ディオ、お仕置き決定だな、主に向かってよくそのような事が言えるものよな。」
「心配しなくてもカオスさんもディオさんもまとめてお仕置きするから安心してね。」
などと会話をしていると、向かいの牢からコチラを見ていた魔族が叫ぶ。
「てめーらうるせえんだよ!新入りのくせしやがって少しは黙っていろ!あとからここのしきたりを教えてやるよ!」
こちらを睨みつけるようにそう言い放つ罪を犯し牢に入れられている魔族。その牢には数名の魔族が特に拘束もされず放り込まれていた。
「ごめんなさい、このおじさん二人が騒がしくて。」
「だれがおじさんですか!このちびっ子め!」
「あー!ちびっ子って言ったなあ、誰も言わないのに言ったなあ。」
先ほど文句を言われたのにも関わらずまた騒ぎ出す三人。向かいの牢にいた囚人の魔族は、頭がおかしいヤツが入ってきたんだろうと思い放置することにした。
マキ達が牢に放り込まれている間に、ガイとリードがそろそろマキが到着する頃だろうと思い、出迎えのために寒冷地の城に訪れていた。
「これは総司令官ガイ様、それにリード様、本日はいかがなされました。」
突然の総司令官の訪問に、すぐさま跪き、なんの用だろうと尋ねるフローラ、その隣でレイも同じように跪く、その場にいた魔族は当然全員跪いていた。
「うむ、本日魔界四天王でいらっしゃるマキ様がこの地を訪れるので、お迎えにあがったまでじゃ。」
「さようでございましたか、ですがまだお姿も拝見しておりませぬ。どのような手段を用いて訪れられるのでしょうか?」
「たしか、カオス殿とディオ殿と共に徒歩で都市内へ向かうとおっしゃっておられたからな、そろそろご到着される頃だと思い参上したまでだ、入り口の扉へ皆集合し、出迎えの準備を致せ!」
「マキ様は食べ物が大変お好きだから、大量に高級食材も用意しろ!」
ガイとリードが副指令官にそれぞれ指示を出す。だが二人の副指令官は硬直し、跪いたまま動けなくなる。
(徒歩で。しかも3人てことは、まさか…)フローラの脳裏に先程牢にぶち込んだ3人ことが映し出される。
「おい!聞こえんのか。」
「そ、そ、そのことでお、お、お話がご、ごございます。」
ひどく動揺している様子のフローラとレイ、ひとまず落ち着かせ、話してみよと促す。
「さきほど、都市外から参りました怪しい3人組を捕まえ、牢に放り込んだのですが、もしかしてその方がマキ様でいらっしゃる可能性が。」
フローラは死をも覚悟し、正直に打ち明ける。だがガイもリードも大笑いした。
「フローラよ、あの方々がこのような僻地の魔族に簡単に捕まるわけがないだろう。寒さのあまり頭の中まで凍ってしまったか。」
「で、ですが、その三名のうちの一人の髪の色は、た、確かに虹色でございましたので。」
今度はレイが恐る恐る話す。
「ふむ、たしかに虹色の髪を持つものなどそうはいないはずだ、どれそいつら三人を連れきてみろ、ついでに我らが処刑してやろう。」
マキ様の真似事をするなどとんでもないと思ったガイはそいつの顔を拝んでから処刑をすると言い出した。フローラはガイの指令通り、三人を牢から引きずりだし、ガイやリードの前にとにかく乱暴に放り投げた。
特にマキは顔面から落下した為、鎖で巻かれていない首から上が地面にめり込んだ。それを見たカオスやディオ、その場にいたガイやリード、そしてフローラやレイまでもが大爆笑した。
「見ろフローラよ、このような愚かな者達がマキ様やカオス殿、ディオ殿のわけがないだろ。」
カオスとディオはすっかり容姿が変ってしまっている為、ガイやリードですら解らなかった。
本来なら魔力ですぐに元の姿に戻れるのだが、今は能力を完全に抑え込んでいる為である。
首から上がめり込んだマキはグルグルに巻かれた体を揺さぶり地面から脱出した。
「ぷはー、死ぬかとおもったじゃんか!」
髪の毛は泥だらけになり、虹色は茶色になり、顔にも泥が付いていた為、マキだと判別できない。その顔を見てそこにいる全員が大笑いした。
「わらうなぁぁぁぁぁああああ!」
笑われているため、マキは叫ぶ。だがその言葉使いを聞いた途端ガイやリード、それにレイやフローラの目つきが変る。
「貴様、誰に向かってそのような言葉使いを。」
「まあ待てフローラ、このガキは俺が何年もかけてこの手でぶっ殺してやる。」
ガイ本来の凶暴な性格が出ていた。表情も恐ろしく、リードでさえ話しかける事ができない。
「ガイさん顔こわいよ、ユキに言いつけてやるからね。」
「マキさんその顔でそんな事言ってもなあ。」
「そうだそうだ、その顔は反則だよマキさん。」
三人の会話を聞いたガイとリードは先ほどの表情から一遍し、なにやら頭の中を整理しだした。フローラやレイは怒ったままだったが、総司令官二人の様子がおかしい事に気が付いた。
「ガイ様、リード様、いかがなされました?」
ガイとリードはその場を一旦離れ、少し離れた場所でこそこそと話し込む。
「おいリード、今ユキ様の名前が出なかったか?」
「ガイ、あの男二人、女の子のことをマキさんて呼んでなかったか?」
話しながら鎖で巻かれた三人をもう一度確認する。ちょうどそのときフローラの配下により泥だらけのマキに泥を落とす為用意された大量の水が浴びせられていた。泥が落ちた髪はまさしく虹色で、しかも顔はマキであることに間違いなかった。
顔面蒼白のガイとリード、血の気は引き、さきほどのレイ以上に焦りまくり、慌てて魔力で鎖を解き、3人の前に行き額を地面に付けひたすら謝罪を始めた。
「マ、ママママキ様!知らぬ事とは言え、とんだご無礼を致しました!」
「この度の不始末はこのガイが総司令官として全責任を受けます。」
「あー冷たかった。ガイさんリードさん、そんなのどうでもいいから。顔をあげて。」
周りにいた魔族や副指令官はなにが起こったのかすら把握できていない、だが、総司令官二人がマキ様と呼んでいる為、あわてて跪いた。
「結構おもしろかったねカオスさん、ディオさん。」
「結局騒ぎの火種になっただけじゃないですか。」
「ディオ、まだ子供だからしょうがないとあきらめよう。」
「またそういうこと言うのね。」
マキは二人に火をつけた。
「あちちちっちちちちちちち!」
二人は電撃で黒くなっていたが、ますます黒くなってしまった。
とりあえず騒ぎを起してしまった原因を作ったのはマキだったので、副指令官や総司令官に謝罪したが、逆に謝られ、城にある最高級の部屋に通され、この地でしか食べられないとても豪華な食事をさせてもらったことで、マキは満足し、この一件は何事もなかったかのように忘れさられたのだった。




