【159話】事情聴取
*****魔王城(魔王の部屋)*****
魔王ミサ、魔王代理ミカ、補佐のマキ、ユキ、メアリー。総司令官カオス、ディオ、ミリアのそうそうたる魔界での強力な能力の持ち主たちが勢揃いしていた。
他の魔族から見れば、よほど重大な会議が始まるように見えるだろう。だがこれはただの事情聴取だった。
マキを除く魔王と魔界四天王は人間の姿になっている。マキの背に合わせている為だろう、だがマキ以外は背が伸びている為、あまり意味はなかったのだが。
「では、どこからお聞きしましょうか。ユキちゃんメアリーちゃん、どうして砂漠の洞窟へ向かったのか教えてください。」
ミカが取り仕切り事情聴取が始まった。
泣いていたユキとメアリーは、ミカの癒し効果の為、すっかり元の元気な状態に戻っていた。その影響を受け、カオス達も総司令官としてのしっかりした表情に戻っている。
「えっとぉ。夏休みに入る前にぃ、メアリーと話し合ったんですぅ。」
ユキの話でによると、夏休みに魔界へ行く事が決まっていた2人は、それぞれの領土の視察を終えた後、合流し、それぞれが修業の為に訪れた場所へ行こうと決めていたらしい。
だが2人は自らの配下には内緒で行動したかった為、移動手段がなく困っていた。どうやって移動しようかと思案していたところに、たまたま通りかかったディオを拉致し、瞬間移動兼案内役として共に行動してもらったというわけだった。
「なるほど、それでディオさんがユキと一緒にいたわけか。」
「ですがユキちゃん、メアリーちゃん、なんでガイ様やリード様、それにミリア様やリリィさんには秘密にしたのですか?」
それには話を聞いていたミリアも不思議に思った。もしかしたらメアリーにとって、自分は必要ないと思われているかもしれないとまで思ってしまった。
「それはですね、前回の修業で、共に修業してくださった総司令官の方々に、今度は新たな地で共に修業をしていただこうと、それぞれが訪れた修業の地を見てまわったからです。」
メアリーが説明する。前回の修業で自分が強くなる事ばかり考えていた反省を活かし、今度は総司令官を強化するために、修行に適したいい場所がないか探す為、それぞれの配下には、内緒にしていたと話す。
(メアリー様は、わたしの為にそのような事を…)ミリアは事実を聞き、とても嬉しかった。
「でもぉ、それがこんなことになるなんてぇ、ほんとうに、ほんとうにごめんなさぃでしたぁ。」
ユキはまた泣きだした。ミカがなんとか慰め、泣きやんだユキは話の続きをする。
ユキが訪れた修業の地から、今度はメアリーが訪れた地下洞窟へと移動した3人は、ユキやメアリーの能力で後から洞窟にきた魔族を巻き添えにしてしまわないよう、氷で建物を塞ぎ中に入れないようにしたらしい。
「なるほど、だから凍らせたのか。あれの意味だけは全く解らなかったけど、納得したよ。」
すでにほとんどの事態を推測し、把握していたマキだが建物を凍らせていた意味だけは理解不能だったのだ。
結局ユキ達3人は簡単に最下層まで辿り着いてしまい、これでは修行にならないねと、最下層で話をしていた。
ユキは前に不思議な洞窟に入った経験があったため、なんとなく最下層の壁に触れてみた。
するとユキの手が壁に刺さった為、ユキが忘れかけていたあの不思議な洞窟の壁の記憶が甦り、すぐにその壁が魔力でできた偽物であることに気が付いた。
その壁を潜り抜けた空間は、ディオでさえ知らない場所だったので、ディオはもしもの事があってはならいと思い、制止したが、好奇心旺盛のユキが言う事を聞く訳もなく、メアリーですら、このメンバーなら大丈夫だと満身してしまっていた。
「わたしがあの時、この身を捨てでも制止していれば、ユウキ様やメアリー様を危険なめに遭わせることもなかったのです。今回はどのような処分が下されようとも従う次第でございます。」
「ディオ様、皆様ご無事で帰還されましたので、処分どころか祝宴を開きたいくらいです。」
ミカは笑顔でディオにそう告げる。
話が脱線しそうなので、ミサキが続きを話すようにユキに告げる。
ディオの制止を振り払い、三人はマキ達が通った階段を同じように降りたらしく、ウロウロしているところを青い魔族に取り囲まれ、とりあえず捕まったふりをして、建物内に連行されたらしい。
おとなしく捕まった為、とくに拘束もされず、直接帝王の部屋に連れてこられたが、その部屋で赤い魔族であるディオが一斉攻撃を受けたため、ユキとメアリーも攻撃したというわけだった。
だが、帝王の持つ未知なる能力により、三人は青い光を浴びせられ石になってしまい、石になったにも関わらず声は聞こえていた。そのときに帝王から言われた言葉が、建物の一部として壁にでも埋め込んでやると言われた為、ユキとメアリーは恐怖のどん底に落とされてしまったのだった。
その後はマキ達が救出にやってきて助かったというわけだ。
「あの石化は、ただの石化ではありませんからね、目は見えるし、音も聞こえるのですが、身体のどの部分も動かせず、本当に怖かったです。」
「うんうん、ユキはもぉ壁になっちゃうんだなぁって、諦めてたもん。」
「最下層で、ユキが落とした髪飾りに気がつかなかったら、今頃壁になってたわけか。」
マキは、最下層で拾った髪飾りをユキに手渡した。
「帝王の前に引きずり出されたとき、石化したままでしたが、マキさんが帝王を倒すところは拝見してました。マキさんはどうやって、あの青い光を防いだのですか?」
メアリーがした質問は、カオスやユキ、ディオにしても疑問に思っていた事であった。
ミサキにしても、青い魔族の能力は、ミカなら浄化してしまうため、ミカ以外に防げる者など存在しないと思っていた、だがマキは青い光を避けようともせず、モロに浴びていたと聞き、とても興味深かった。
だが、マキの口からは意外な回答が。
「なーんにもしてないよ。」
その場は静まり返った。
「魔法で、ふせいだんじゃないのぉ?」
いいかげんな回答にユキが尋ねる。
「いや、だからなんにもしないでただ光を浴びてただけだって。」
「マキさん、なんにもしていないって事は、マキさん自身に青い光に対しての耐性があったってこと?」
ミカがそう尋ねるのを聞いていたカオスやディオは、なるほどそれなら納得できると思っていた。
だが。
「違うよミカちゃん、ここにいるみんな簡単に防げるよ。」
またしても誰にも理解できない回答をするマキ。
「マキ、ちゃんと説明してあげないと、みんな訳がわかってないよ。」
ミサキはすでに答えを導き出していた。なんにもしていない。と言った時点で分かったのだ。
「どう言えばいいのかな、んとね、だから、なんにもしなくていいんだよ。」
「マキねえちゃん、意地悪しないでぇちゃんとおしえてよぉ!」
「マキさん、わしらには秘密ってことなんですかい。ほんとに冷たい人だ。」
ユキとカオスは意地悪していると思って、マキに文句を言っていた。
「マキ、それじゃこの二人には永遠に理解できないから、ちゃんと能力を抑えるって言ってあげないとダメじゃない。」
みかねたミサキが答えを伝えた。
「えっ?どういぅことですかぁ?」
「んとね、青い魔族は能力を吸収するのが、能力なわけじゃん、だからこちらが能力を出さなければ、青い魔族はなんにもできないんだよ。」
「それと石化となんの関係があるのでしょうか?」
「青い光こそが、あいつらの唯一の攻撃手段で、それ以外の攻撃は剣を使った物理的な攻撃だったからさ、きっとあの青い光の攻撃もこちらの能力を利用しての攻撃だろうと思ってさ。」
「やはりマキは天才ね、私はあの空間ごと吹き飛ばす事くらいしか思いつかなかったわ。」
「あ、あのミサキ姉さん。それはそれで恐ろしいのですが。」
カオスやミリアでさえ、魔力をどれだけ屈指しようが、青い魔族を戦闘不能にするのが精一杯だった、それをミサキは空間ごと消し去る事が出来ると言い切っていた事に魔王の恐ろしさを再認識させられた。
だが、空間ごと吹き飛ばすのを思いついた頃のミサキは数千年前のミサキであり、それを考慮すれば、数千年前すでにそれだけの魔力を持っていた事になり、それから数千年後の現在では、その頃とは比較にならないくらいの魔力を宿していることになるのだ。
この事を考えると、救出に来たのがミサキだったら、めんどくさいから空間ごと消滅させていたかもしれい。と考えるとマキが救出に来てくれて本当に良かったと思うユキであった。
ミサキは、ミカに行かせるつもりだったので、どっちにしてもユキは助かっていたのだが。
「能力を抑えるだけで防げていたなんて。」
ミリアが石化されてから気がついた為、あの時、怒りで魔力を最大限に引き出したカオスに対して、下がるように命じたのだった。
「ミリアさんが、私を庇ってくれていなかったら、わたしも石化していたかもしれかったから、全てミリアさんのおかげだよ。」
「いえ、わたくしは何も。。」
「それに比べ、誰かさんはあれだけ魔力を吸収されているにも関わらず。まったく。。」
カオスは、ガックリと落ち込んでしまった。
「まあまあマキさん、みんな無事でしたし、お仕置きはまた、後日にでも。」
「うんそうだね、どんなお仕置きするか考えとかないとね。」
重苦しい雰囲気で始まった事情聴取は、和やかな雰囲気で幕を閉じた。




