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リビルド・スターシップ! ~SFゲームの世界に転生したゲーマー男は、初期化されてしまった愛機の理想の姿を取り戻したい~  作者: 矢代大介


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第19話 双子の傭兵姉妹



「あ、レン! こっちこっち!」


 ルーメンプライムコロニーの傭兵ギルドでもろもろの手続き――当初の目的だった鉱石の売却と、依頼外で宙賊を退治した分の報酬の申請だ――を済ませ、受付から離れようとしたところで、聞き覚えのある声が俺を引き留める。

 声のかかった方向へ振り返ってみれば、そこには赤いポニーテールと青いロングヘアという、とてもわかりやすいビジュアルの二人組がいた。


「ウィスタ、ティルナ。お疲れ様。お互い無事で何よりだ」

「お疲れ様です、お兄さん。そちらも報告は終わったんですか?」

「ああ、追加報酬の申請はできたよ。あとはフライトレコーダーの解析待ちだけど、宙賊の頭を落とした報酬は確実に出るだろうって言われたよ」

「それは何よりね。とはいえ、小型はあたしたちが落としちゃったから、掠め取ったみたいでちょっと申し訳ないわね」

「まさか。二人がいなければ報酬が出たかも怪しかったんだ。雑に山分けしたようなもんだと思って遠慮なく持ってってくれ」


 実際、あの局面を乗り切れたのはサジタリオに乗ったウィスタとティルナが援護してくれたからだ。

 くどいようだが、全盛期の力を失ったリベルタの性能は、それこそ初期配布の船とほとんど変わらない。火力も運動性能も、あれだけの数を相手取って五体満足で生き残るには全くと言っていいほど足りなかったのだ。

 そんな絶望的な戦力差をひっくり返した挙句、小型艇のほぼ全てを叩き落としてくれた二人には、感謝こそすれど報酬をせびるような真似をするつもりは毛頭なかった。


「お互い報告も終わったのなら、成功祝いになんか食べに行きましょ。いろいろ聞きたいこともあるからね」

「賛成だ。緊張が解けたせいかなんか無性に腹が減ってたところなんだ」

「ふふ、お兄さんってけっこう食いしん坊さんなんですね?」

「や、やめてくれよその生温かい目線。昨日と今日じゃ事情がぜんぜん違うからな?」


 なんだか不名誉なレッテルを貼られた気がして抗議の声を上げるが、当の姉妹は顔を見合わせ、けらけらくすくすと笑うばかり。

 所作や纏う雰囲気は全くの別物だが、笑った顔が鏡写しのようにそっくりなのが、妙に印象的だった。



 

 *




「んで、早く聞かせなさいよ。うちの妹をどうやって誑(たぶら)かしてくれたのかしら?」

「開幕早々とんでもない言い草すぎるな?」


 傭兵ギルドを後にした俺たちは、商業区画の飲食店エリアへと足を伸ばし、手近な店のテーブル席へ腰を下ろしていた。

 何屋なのかわからないので二人に注文を任せてみたところ、出てきたのはヤキトリと形容できなくもない何か。肉の種類は見た目からして違うのだが、一口大に切り分けられたものを串に刺して焼き上げたそのビジュアルは、やはり「ヤキトリのような何か」としか形容できないものだった。


「昨日たまたま、商業区画の道端で会ったんだよ。タチの悪そうな連中に困らされてたから、頑張って追い払ったんだ」


 ヤキトリモドキを口へ運びつつ、状況説明という名の釈明を挟む。

 

「うん、お兄さんのいうとおりだよ。何回断ってもしつこくついてきてたから……」

「言ってたわね。レーザーガンを抜かずに睨みを利かせただけで追っ払ったんですって?」

「非武装の民間人相手だったからだよ。あれが傭兵か、もしくは無敵の人だったら……ティルナを抱えてトンズラでもしてたんじゃないかな」

「なるほど。なら、情状酌量の余地を踏まえて脱出ポッドの刑で勘弁してあげようかしら」

「ティルナが証言してくれてるのに?! 救いはないんですか!?」

「冗談よ。うちの妹を助けてくれたこと、感謝するわ」


 意地の悪い笑顔と、心からの感謝の気持ちがないまぜになった何とも言えない表情で、ウィスタが感謝の言葉を述べる。その隣では、いつも通りだなと言わんばかりの雰囲気でティルナが困ったような笑みを浮かべていた。


「……そういえば、お姉ちゃんは、どうしてお兄さんと知り合ったの?」


 ヤキトリモドキを口にしながら、ふと思い出したように、ティルナがウィスタにそう問いかける。


「この人が宇宙港のロビーで倒れてたところを、たまたまあたしが見つけたのよ。見つけた以上放置する気にもなれなくて、病院に放り込んでやったわ」

「そんな感じだ。んで、退院したときにたまたま様子を見に来てくれたウィスタと会って、流れで知り合いになったんだ」

「なるほどー……いかにもお姉ちゃんらしいね」


 ウィスタらしい、という言葉に照れを刺激されたのか、「うっさいわよ」と言い捨てたウィスタが、やや赤らんだ顔でそっぽを向く。

 ティルナの評を鑑みるなら、ウィスタの世話焼きな面は生来のものなのだろう。あるいは、妹を持つ姉という立場によって作り上げられた気質とでも言うべきか。


「しかしホント、二人が姉妹だとは思ってもみなかったよ。こんな形で縁がつながることなんてあるんだな」

「ですね。一緒にお仕事をしよう、ってお誘いはしたけど、まさかこんなに早く実現するとは思いませんでした」


 俺の苦笑につられてか、ティルナもくすくすと笑みをこぼす。


「というか、この顔を見てピンとこなかったの? あたしが言うのもなんだけど、あたしたちって結構そっくりな顔をしてると思うんだけど」


 そこへ差し挟まれたウィスタの言葉で、ふと好奇心を刺激された俺は、改めて二人の顔をまじまじと観察してみることにした。


 ウィスタの言う通り、こうして二人並べば顔立ちは本当に瓜二つだ。髪色や髪型、目の色という差異を除けば、合わせ鏡の前に一人が立っているだけと言われても信じてしまいそうなほどに似通っている。

 だが、髪や目の主張とは別な、大きく「違う」部分が、二人を明確な別人として認識させているのだ。


「たしかに、顔はそっくりだけど……やっぱり、『雰囲気』がぜんぜん違うんだよな。だから気づかなかったんだ」


 最初から双子の姉妹だとわかっているならともかく、二人に出会ったときはそれぞれに「瓜二つな姉妹がいる」という可能性などかけらも気に留めていなかった。

 それぞれ単独で行動していたタイミングでもあったので、「偶然の出会いであり、そこに恣意的な何かがあるわけではない」という先入観も手伝って、二人の関係性を推察しづらくしていたのだろう。



 ――とはいえ、今思い返してみれば、結び付けられそうな要素はいくつかあった。


 ウィスタはハンガーへの移動中に誰か――おそらくはティルナへ携帯端末で連絡をしていたし、別れ際には「あたし『たち』もここで仕事する」と言い残していた。ティルナも同じように「お姉ちゃんと仕事をしている」という旨の発言をしていたので、俺の勘が良ければそこで気づけただろう。

 それに、彼女たちのその行動力――ウィスタに宇宙港への案内を頼んだ時や、ティルナに携帯端末の選定を頼んだ時に、我先にとその場を飛び出していったあの勢いの良さ。あれこそまさしく、争えない血筋の発露だったというべきだろう。


「ちょっと、そんな強引に連れ出した覚えはないわよ」

「わ、わたしも……そんなつもりは、なかったです。たぶん」


 ――なんてことを語り聞かせると、二人して顔を赤らめて恥ずかしそうに否定する。ふだんの仕草はまあまあ違いが多いのに、慌てた時の挙動はまさしく双子というべきシンクロ率だった。


 「まぁ、冗談はともかく、二人のおかげで何度も助けられた。こんな場だけど、改めて礼を言うよ」


 苦笑しつつ軽く頭を下げると、二人はお互いの顔を見合わせ、それからまたくすりと忍び笑いを漏らす。


「ほんと、初めて会った時も思ったけど、あんたって殊勝な性格よねぇ」

「そうか? 助けられたなら礼を言うのは当然だと思うけど」

「そうでもありませんよ。傭兵って荒っぽい人が多いので、お兄さんみたいに礼儀正しい人ってけっこう貴重なんです」

「ティルの言う通りよ。あと、あたしたちが女だからってナメた態度を取ってこないってのも貴重かも」


 ヤキトリモドキを咀嚼しつつ、揃って肩をすくめる双子の姉妹。

 口調こそちょっとした愚痴程度に軽いものだったが、その顔には、過去に経験した出来事に対するものであろう、呆れとも疲れともとれるような感情が渦巻いていた。


「……ねえレン。あんたはもうしばらくこのコロニーで仕事をする感じ?」

「そうだな。リベルタの改装をするにしても、そのためにどこか別の場所へ移るにしても、まだまだ資金は必要だからな」


 ウィスタの問いかけにそう答えると、当の本人はちらりと隣のティルナを見やる。

 視線に気づいたティルナは、ぱちくりとまばたきをしたあと、どこか楽しそうな表情でこくりと小さく頷いた。


「レン。あんたさえよければ、しばらくあたしたちと組んでみない?」


 続けて俺に向き直ったウィスタは、俺に対してそう提案を持ち掛けてきた。


「組む? っていうと、俺のリベルタと二人のサジタリオでってことか?」

「そ。あたしたち三人で組めば、それぞれ別々に仕事を受けるよりもより早く、より儲かると思うのよ。名案だと思わない?」


 ウィスタの提案に、思わず感嘆の唸り声が漏れる。

 

 現状、リベルタは脅威や不測の事態に直面した時の対処能力に欠けている。優秀なクルーや装備があればできることも増えるのだが、悲しいかなそれを実現するには何もかもが足りていないのだ。

 しかし、そこへ双子姉妹のサジタリオが加わるとなると話は大きく変わってくる。手数も火力も、俺一人で仕事をするよりはるかに多くのリソースが運用できるようになる……というのは、今の俺たちにとって堪らなく魅力的な提案だった。


 

「……俺としては、確かに魅力的だけど。二人はそれでかまわないのか?」

「かまってたらこんな提案しないわよ。あたしたちも、稼ぎが増えるのは大歓迎だからね」

「それに、他の傭兵さんとは違って、お兄さんとなら安心して仕事ができそうですから」


 ぽそりと挟まれたティルナの補足で、ようやく合点がいく。


 つまるところ、彼女たちは抱えた事情――女傭兵という立場やそれに付け込もうとする輩のせいで、これまで協力者に恵まれる機会を得られなかったのだ。

 そこに降って湧いてきた、彼女たち基準で「安心できる」俺という存在。二人としては、貴重な協力者が増える機会を逃したくないというのもあるのだろう。



「なるほど。…………そうだな、分かった。俺とリベルタでよければ、ぜひ仲間に加えてくれ」


 しばしの熟考の末、そう返すと、姉妹はそれぞれに笑顔を浮かべる。


「決まりね! 改めてよろしく頼むわ、レン!」

「よろしくお願いします、お兄さん。……OKしてくれて、ありがとうございます!」


 まばゆく輝く恒星のような笑顔と、柔らかく咲く花のような笑顔。

 対照的だが、その表情はどちらも見惚れてしまいそうなほどに美しい。


「こちらこそ。よろしくな、ウィスタ、ティルナ」


 数奇な出会いが新たな縁をつないだことを実感しながら、俺は差し出されたふたつの小さな手を、両の掌でしっかりと握り返した。


 

作者よりお知らせ…

矢代です。ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。


本日の更新分をもって、書き溜めていたストックが全て公開完了となりました。

したがって、毎日投稿は今日で終了し、以降の更新は「書き上がり次第順次更新」という形を取らせていただこうと思います。


なるべく早めのスパンでの更新(最低でも週一)を心がけるつもりではありますが、作者のリアル都合やコンディションによって更新はどうしてもバラつきが生じると思われるため、なにとぞご容赦いただければ幸いです。



恐れ多くもたくさんのご声援をいただき、気がつけばなにやら凄いことになってしまいましたが、これからもどうかご愛顧いただければ嬉しいです!


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