第22話 炭作り
今から炭作りを行う。
ミラン側にシンプルに割った竹を薪代わりに送るのも良いが、利便性は竹炭の方が良い。
炭と薪の違いを簡単に説明すると、煙が出るか出ないかだ。
薪の材料は燃えるものなら何でも可能だが、炭はその燃える素材で炭化させて、薪として燃やした際に出る激しい煙を抑えてくれる。
料理作りの際も炭からの熱は肉を柔らかくして美味しくしてくれるので、とても良い品だ。
それと燃料時間も長く、じっくりと燃えてくれるところも使い勝手の良さがある。
カコッ! カコッ! カコーンッ!
薪割り台を使って金づちを打ち30センチほどの竹を割っていく。
長い乾燥竹自体は、チェンソーで横切りにした。
「これは何日もかかるなあ……」
大量なので今日使わない分は、横切りする前に分けておいた。
地面と離した台の上に置き、上にビニールシートをかけて縛り、雨が降っても大丈夫な状態にしてある。
縦割り竹を大量に切った。
ピザ窯の下側に詰めれる分を左右に、ギュッギュッと詰めて、炉内の真ん中に穴を沢山開けた空の一斗缶を入れる。
「隙間なく……」
その穴あき一斗缶の周りも竹を詰めて竹部分は空気が入らないようにしておく。
ピザ窯の上に繋がる部分は加工した鉄蓋を乗せて空気の流れを止め、微妙な隙間は粘土を重ねておいた。
今は下からの煙突に繋がる筒だけが伸びている。
そして上釜に繋がるのは一斗缶に装着した筒だけにしておいて、一斗缶以外の出入り口をレンガと石と土粘土で埋めておく。
こうすると竹部分は蒸し焼き状態になるのだ。
「煎餅缶とクッキー缶の蓋に穴開けて……」
空の煎餅缶とクッキー缶蓋にドリルで穴をひとつ開けたのを用意した。
その中に草、落ち葉、小枝を詰めて蓋をする。
炭化は、どれが一番上手く行くか調べたいので、3パターン用意した。
「草はしたことあるけど、落ち葉は失敗するかも……」
今回は試しなので色々と山の中で余る素材を使って作業をしてみることにした。
本来はピザを焼く部分に缶を並べて、空気穴を塞がないようにジュースの瓶蓋を置いてから、隙間ありきで缶を重ねていく。
そうして上釜蓋を閉じた。
「多分、こんな感じかな?」
下の穴あき一斗缶の中に木屑と小枝を入れて、昔に作ったバイオブリケットに火を点けて火ばさみで真ん中に押し込んだ。(バイオブリケットは燃料になりえる木屑などを廃棄油などで固めて作った固形燃料で種類は色々と存在する)
燃料を足しては、火の様子を時折眺め届いた荷物を受け取って倉庫にしまったり、新たな糠の蒸しパン、クッキーを作ったりした。
気づけば3時間ほど経ち、空気の感覚を観察する。
煙の匂いが、最初の焦げ臭さから少し甘い匂いに変わっていた。
上の缶の方は良さそうなので、瓶蓋を取って缶を重ねて蓋状態にして、缶の上側は石やレンガで蓋をする。
缶は全部移動させて隣の余りレンガ上に置いた。
ピザ窯内の煤を棒で掻き出してから、代わりに水と具材を入れた鍋や土鍋を置いて、出入り口の蓋を空気が少し入る程度で軽く閉める。
「煮えるかな……」
これで上手く煮えればミラン達に、そのまま送れるので丁度良い。
下の方は、もう2時間ほど弱火で火を燃やして火が青から透明に変わったので火種を止めて、出入り口前をレンガを並べて隙間は土粘土を乗せておいた。
そうしている間で温度はどんどんと下がり、鎮火する。
煙突の方も出口に軽くアルミホイルを巻き付けて蓋しておき、ピザ窯の上蓋も閉じて密閉させた。
この状態で冷めるまで放置しよう。
途中で取り出した料理は鍋や土鍋は良い感じに煮えていた。
明日も竹炭を作る時は料理をしていこうと思う。
「あ、鉄板の落札できた〜! やった〜!」
シャワーを浴びてからスマートフォンを点けると、落札完了の通知が来ていた。
もらった柿を切り、買った生ハムとチーズを用意した。
良い感じに重ねて糠クッキーと一緒に食べる。
サクッ。
生地の配合なのか糠臭さはなく悪くない味だ。
「糠クッキーで百人分のオヤツができるかな〜♪」
適当な歌を歌って食べながら、買ったばかりの冷凍庫に詰まっている猪頭のことをぼんやりと考えた。
「今日もらった猪頭どうしようかな〜解凍後の脳は、ちょっと癖あるし……うーん。まあ解体は2頭分しようかな」
猪の舌は冷凍後も美味しい。
普通に焼肉か厚切りのシチューでも良いと思う。
猪の舌と脳以外は鍋で煮て、骨から剥がれたら別の料理に使おうか。
骨は出汁にできるので、そのまま野菜と煮込んだら良い気がする。
「糠クッキー生地だけ増やしてから寝よ……」
冷蔵庫に入れれる糠は後回しに出来るが、他の常温保存の糠は早く使いたい。
ユノは黙々と糠クッキー用の生地を作って冷蔵庫に入れてから就寝したのだった。
***
朝になって鳥の鳴き声と共に目覚めた。
フワフワと欠伸をしながら、オーブンを温める。
その間に身支度をして、まずは糠クッキー生地を切り分けてクッキングシートを敷いた鉄板上に乗せた。
「焼いている間に炭チェック行こう」
キーンッ。カコッ!
取り出した竹炭同士を合わせると、高い音と共に割れた。
「竹は成功したみたい。良かった〜」
できた竹炭全部を空の段ボールにカラカラと入れて、大きい段ボール3箱分になり倉庫へ運ぶ。
炭になると、とても軽いので比較的軽く持ち運べた。
身体が自由に動ける今だからこその感想なので、ミラン達には感謝するばかりだ。
ガコンッ。
次に煎餅缶やクッキー缶を開けていく。
中を見れば草、落ち葉、小枝の形をした炭があった。
手袋をした指で押すと、ホロホロと崩れていく。
「良い感じ、良い感じ」
特大サイズのチャック付きポリ袋に草灰、落ち葉灰、小枝灰を入れる。
3種類を分けたところでマジックで名前を書いて、それも倉庫へと運んだ。
「下だけ、もっかい竹詰めて作ろう」
昨日切っておいた竹を下の炉内に詰めて真ん中の穴あき一斗缶内で火を点けた。
「炭団作ろうかな〜それとも猪頭の解体しようかなぁ〜」
部屋に戻ると糠クッキーが焼けていて新しく並べて次を焼く。
「あ……ピザ窯で糠パン的なのも焼いてみようかな……なんか平たいのならいけそう……いや、ピザ窯ならピザっぽいのを焼くべきか!」
急遽、なんちゃってピザ生地を作ることにした。
本格的なものではない。
今回もホットケーキミックスと糠を混ぜて、生地を作り平たくしてから上にニンニクとオリーブ油と混ぜて作ったトマトソースを塗る。
その上に脂身の多い部分の、小分け保存してある冷凍猪肉を散らばせて、チーズを乗せて胡椒をたっぷりとかけた。
「っぽい気がする……本場の人に怒られない内に焼いちゃえ」
1回収納してからピザ窯の上内に入れてみる。
筒からの熱気で蒸し焼きにするので少しの間、上蓋を軽く閉めて覗き込んでみた。
焼かれてムクムク育った生地の一部が、黒くなっている。
「あ、ちょっと焦げて……これは自分の昼ご飯にしよう。こっちのは良さそう」
熱気が一番強く当たる部分だけ焦げはしたけれど、それなりに焼き上がった。
全部綺麗な丸ではないので練習しなければだ。
「あー……ピザというよりピタパン……? あれだ、ナンの方が近いかな?」
焼き上がった順から収納した。
定期的に下の炉内に燃料を足して上では新たに鍋を入れて、台所に戻ると焼けたクッキーを冷ます為に銀バットに置いて新しい生地を切って焼きだす。
「ふう……そろそろ、お昼ご飯にしよう……」
焦げた、なんちゃってピザを出そうと思って、ふとミランの日誌を読み忘れていることに気がついた。
「そういえば……何か変化はあったかな?」
パラリ……。
「えッ」
ミランの日誌を開いてみると、手紙やメモが挟んであり、連絡がすれ違ったことで心配している文面があったのだった。




