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第16話 大人買い


 ブロロロ……。


 貴金属店での取引が終わり車を走らせる。

 今日は、これから買い物だ。

「疲れた……」

 本当に疲れた。

 前半で随分と気力を使った。

 結晶石のお陰で体力は全然あるけれど、精神疲労が高い。

 けれど、やらねばならぬのだ。


 さて、当初の目的の支払いと買い物をしよう。

 豆腐店への入金を終え、ふと良い香りに顔を向けた。

「お昼は粉ものにしよ!」

 視界の先にタコ焼き屋、ソースの香ばしい匂いが最高だ。


「すみません。私が食べる分で先に、ねぎタコセット……トッピングチーズ。あと、ジュースはメロンソーダで……食べている間で持ち帰り用に、このパーティーセットを注文して良いですか?」

「あいよ! 先ずは、お嬢ちゃんのね!」


 ジュワ〜。くるッ! ぽんッ!


 このたこ焼き、絶対美味しそうな予感がする。

 ソースって、どうしてこんなにも食欲を刺激するのだろう。


 そうか、送るのはタコ焼きも良いなと思った。

 全員分を作るのは無理だけど鉄板とか、機器とか説明書と材料と共に送って向こうの皆さんで焼いて食べてもらうとかどうだろうか。


 楽しいんじゃないかな。

 出来立てはアホみたいに熱いけど美味しいこと間違いなしだ。


「はいよ~。お嬢ちゃんの葱タコチーズ、メロンソーダ付きね!」

「ありがとうございます」

 先に持ち帰り用合わせて支払って、ひとつだけあるテラス席に座ってタコ焼きを口に入れる。

「はふッ! はほッほッ!」

 口の中が熱い。

 この軽い口内火傷込みがタコ焼きの様式美だ。

「……うんま〜♡」

 一回、彼にタコ焼きを食べてもらって口に合いそうなら機器を送ろうと思う。

 こうして私は腹を満たしてから、一般公開されている卸売り市場へ向った。


 ざわざわ……。ざわざわ……。


「おお……」

 卸売り市場。

 卸売り市場とは簡単に言うと様々な製造元が露店を出し業者やバイヤーが直接買い付けに来る場所だ。

 ネットで調べたら車で行ける距離で一般公開されている卸売り市場があり、試しに来てみた。


 個人としてはスーパーの品をゼロにして、他のお客さんをガッカリさせるより、こうして買えたら良いかなっと思う。

 とは言って業者でもバイヤーでも無いし許可書も無いので一般公開されている場所しか周れないが。

 下見をして良さそうなら金の力で購入権利を買えないか、後に調べてみても良いだろう。


 私は現在、予想外の資金を持っている。

 ちょっと大胆な行動も出来るのだ。


 一般公開の部分と違い、奥は業者の人達の戦場っぽい雰囲気が見える。

 気になるけど雑魚兵は戦場を諦めて、他の買えそうなのを一般で買おう。


 キョロキョロ。


 小麦粉や調味料を買いたいけど、どこに行けば良いのだろう。

 ふと、欠伸をしている女性が目に入った。


 売っている乾燥果物の詰め合わせを購入して質問してみる。

「すみません。小麦粉100キロ購入可能な所をご存知ですか?」

「ん? 初めて来た業者かい? こっちは一般公開の方。業者はあっち、この奥だよ」

「あ……いっぱい買いたい一般人です……」


「あらま。ふーん……お嬢ちゃんは他にも沢山買いたい感じなの?」

「そうですね……酢、塩、砂糖、缶詰、他の調味料類も……約百名の人達に保管が効く物資を送りたいんです」

「そりゃまた……予算は?」

「とりあえず5百万円。それ以上も可能です」

 彼女の目がキランと光った。


「ふーん? そんなら、あっちで暇してる家の旦那呼ぶから、仲介手数料で……そうね、10万。それでどうだい? 高いかと思うでしょうけど、今日から1年間、ここで買い物したい時は旦那を仲介に立ててあげるわ」

「10万、分かりました」


 購入権利をお金で買いたいと思っていたので、仲介してくれる人がいるならありがたい。

 今日は運が良いかもしれないな。


 直ぐに10万円を鞄から取り出して渡す。

 財布に入らないので現在、1千5百万円が鞄に直接入っていた。

「よしきた!」


 直ぐに電話で彼女の旦那が呼び出され、本格的な卸売り市場を案内してくれる事となった。

 受付で、付き添い用の入場証を首から下げる。


 ウォン……コココココ……。


 近くでフォークリフトが荷物を運んでいる。

「オイラはヤス。よろしくな」

「私は道堂です。よろしくお願いします」

 紹介された仲介人ヤスと挨拶を交わした。


「で、ほしいもんは?」

「最初に小麦粉、砂糖、塩、酢は100キロずつ欲しいです」

「じゃあ先ずはそこだな。おーい、小麦粉100キロ、お嬢ちゃんトラックはある? 配達かい?」

「えーと……最終的にまとめて家の倉庫まで配達してもらえたらとは思ってます。もちろん配達料は払います」

 最初は収納空間に入れようかと思っていたけれど、それっぽい事を言ってみた。

「ほーか、ほーか」


 旦那ヤスが直ぐに販売人らしき人に声をかけ即、仕入れが決まる。

 何やら紙に書いて商品の確保を表すらしい。


 伝票を渡されて現金で払おうとすると、ヤスに止められた。

「たくさん買うんだろう? 最後で事務所で伝票見せて支払ってから、内訳書いた明細書と領収書もらった方が早いぞ」

「あ、なるほど……! 勉強になります!」

「よしよし」


「家は? 遠すぎなきゃオイラのトラックで運んでやるよ」

「良いんですか?」

「金額分の仕事はするさ。最近は売り上げが全然で、カンカンカンの閑古鳥よ。女房に尻を叩かれる日々だから、これぞ天の助けってな。おー、今の聞いたよな。オイラのトラックによろしく。おうよ! 女房の許可もらってデートしてら! ガハハ!」

 とても良い人だ。


 私という初顔、初心者がいるからか周りからはヤスに野次が飛んでいる。

「場所は、八百万山の裾で……」

「おーい、砂糖、塩、100キロずつな。おう、オイラのトラック! なあ、この量、嬢ちゃんが使うわけじゃないんだろ?」

 販売人とサラッと交渉し、合間合間で会話をしてくるヤス。


「そうですね……何というか……食糧が少ない地域に渡す感じです。保存が効くなら量がほしいなって思って……」

「ああ、ボランティア系か。地域イベントの仕入れとかも一般人の買い付けは、たまにあるんだけどな。そっちだと、定期的でオイラ達も助かるな」


「私も助かります。業務用スーパーで買うのも申し訳なくて……」

「あはは。たしかにこの量買ったら毎回、すっからかんだわな。おーい、酢100キロ! んで、他にも?」

 欲しかったモノを思い浮かべる。

 やはり保存が効くとなったら缶詰だ。


「缶詰が欲しいです」

「缶詰!? 果物の缶詰は?」

「あ、それも欲しいですね」

「こりゃ良い! 他の缶詰終わったら、オイラんとこの缶詰も買ってくれ!」

「はい是非」

 果物の缶詰は美味しいしビタミンも手に入る。

 きっと喜んでくれるんじゃないかと思う。


「いや〜! 全然、売れねえのなんの! 弟夫婦がやってる農園のなんだけどよう。見た目が落ちたのは全部缶詰にして交渉して売るんだが、前まで卸してた喫茶店と売店が閉店して一気に売上が下がっちまって……よし。ここらが缶詰、瓶売り場だ。どの系統が欲しい?」

「魚も肉も瓶売りの野菜も……日保ちは1年はしますよね?」

「余裕余裕」


「じゃあ5百個とか可能ですかね……?」

 心配になりながら訊くと、ニカっと良い笑顔が返ってきた。

「千でも2千でも今日なきゃ明日以降に嬢ちゃんの倉庫に届ける形にすりゃ良い。予算の限り幾らでも言いな」

 スーパーでは出来ない大きな買い物に、なんだか脳が楽しくなってきた。


「今日の予定は5百万ですけど、まだ出せます!」

「おいおい、良い買いっぷりだな! 聞いたかよ、お前ら売り時だぞ!」

 缶詰、瓶の売り場にいた販売人達のギラギラした瞳が向く。


「お嬢ちゃん、うちのは鯖、イワシ、アジの缶詰だ! 味は水煮、醤油、味噌、唐辛子がある。多く……全部で千、買ってくれるならひとつ80円を60円にしよう!」

「じゃあ……全種類500個ずつください!」

「6千個!? まいどあり!」


「お嬢ちゃん! 家のは独自の製法豚ミート、牛ミートがあるんだ。2千個買ってくれるならひとつ豚は300、牛は350の所を均一250で、どうだい?」

「……1万個ずつなら?」

「1万ッ!? 2万個売れたら在庫の山が無くなる……あ、明日、指定の場所に届ける形でも良いかな? 200にする!」


「じゃあ先に200万払って届いた時に残りの金額でも?」

「もちろん! いや〜! ありがとう! うちの所、まだまだ新規でなあ。ブランド力が無くて全然売れねえのよ!」

 絶対、安くてお買い時の品だ。

 味見はしていないけれど、どことなく良い予感がした。

 気分が上がっているだけかもしれない。


「日持ちする肉の缶詰は喜ばれると思うので、ちょうど良かったです!」

「おお……ヤスさん、どこで見付けたんだこんな太客!」

「うちの女房が見付けたんだよ! ガハハ!」


「お嬢ちゃん、うちのもどう? おばちゃんとこはトマト缶が売りなんだ。うちの在庫は倉庫の合わせて一般用が5千、業務用が2千あるよ! 5千買うなら80を50まで下げよう。業務用のは2千買うなら1200円の所を650円まで下げよう」

「うーん。どっちも全部買ったら……?」

「よしきた! 業務用のを600にする!」

「買います!」

 皆、どんどん安くしてくれる。

 良いのかなとも思うけど凄く楽しい。

 いっぱい金額を気にせず交渉しながら買うって気持ち良いな。


「よっしゃ! 明日、届けに行くから場所を教えてくれるかい? 支払いも明日で良いよ」

「八百万山の……」

 これでもかと買っていく、買い物ハイになっている自覚はあるけれど最高に気持ち良い。


「オイラが運ぶつもりが殆ど本人らで運搬だな! ガハハ!」

「ヤスさんの所の果物の缶詰は……」

「おお、そうだった、そうだった! うちんとこの在庫は桃と梨が5千個、林檎、柿も今から作られる予定だ」

「あ、林檎は……見た目悪くても良いので生で売ってもらうのは可能ですか?」

「お! 良いとも良いとも!」


 ヤスの商品は無条件で全部購入した。

 今日は、売り場にある分とここで買った分を届けてくれるらしい。

 後日、倉庫に残りを届けてくれる。


 全ての買い付けを終えた後、仲卸の事務所へ向かい、持参した現金でまとめて代金を支払う。

 その場で領収書と、全体の内訳が入った明細書を受け取り、取引は無事に完了した。


 ブロロロロ……。


「ありがとうございました!」

「おう! 良い倉庫で入れやすかったわ」

「ここらの山の地主か〜。こりゃあ本当に太客だなヤス」

「ガハハ!」

 家に帰り、ヤスと他の販売人の人も含めて荷物を倉庫に入れてくれた。



 カチッ。


 トランシーバーの電源を入れてみる。

 用事中かもしれないので、色々と収納しながら待っていれば声が聴こえた。

『ユノ?』

「あ、ミランさん? こんばんは、えっと……そっちも夜で無ければ、こんにちは」

『夜で合っているよ』


 買い物で気分が高揚している中で彼の声を聞くと、もっと楽しい気持ちになる。

「良かった。タコ焼き食べました? ミランさん専用のです」

『ああ。あれはタコヤキというのか。とても美味かった。ありがとう』


「そっち側、タコ焼き無いのかあ……実は皆さんにタコ焼き器を渡して皆で焼いて食べてもらえたらって思ってるんです」

『タコヤキ器? 嬉しい。でも……あの丸く焼くのは熟練の技が必要なんじゃないかな?』

「あはは。任せてください。説明書を漫画付きで送ります」

 久々に軽い漫画を描いてみよう。


『マンガ? もしかして絵物語の事かな?』

「あ、そっちだと絵物語って言うんですね。一度、こっちの漫画……絵物語を送ってみようかな? 私も一応祖母とのエッセイ漫画描いているんですよ!」


『君の、おばあ様とのか。日記に書いてあった、おばハート日記かな?』

「あ、それです。それです。一応、ハートのところはラブって読みます」

『そうか。おばラブ日記か、覚えたよ』

「ふふ。照れますね〜。あ、今日は沢山荷物が増えたので今収納してます。明日もコレの3倍は渡すので期待してくださいね!」

 百名、全員が遠慮せずにお腹いっぱい食べれる量を押し込みたい。


『そんなにか? これは……ユノの収納空間も広がって凄い量だ』

「明日は葉物野菜も増えますし栄養バランス良く食べれたらと思います。今日のは主に日保ちする品ですけどね」

 缶詰内に魚や肉は入っているけれど冷蔵が可能なら、その内に生の肉や魚も送りたい。


『ありがたい。本当にありがとう』

「こちらこそ。銀とか金には驚きましたけど、支払いもスムーズに出来ました」

『これからも店を探して渡すつもりだ。あれだけじゃない、アクセサリーも多くある。ユノには皆感謝しているんだ。どんどん受け取ってくれ』

 その言葉に身が、びくんッと跳ねた。


……──気持ちはとても嬉しいけれど、これ以上は大丈夫かも……


「あ……えーっと、外には魔物が多いんですよね? そんなに無理して集めないで大丈夫ですよ。今回の分で当分は買えますし」

『どちらにせよ駆逐しなければ基地も制圧されてしまう。本当はゲートをどうにかしたいが……』

「ゲート? あ、そういえば日記……日誌かな、それに書いてありましたね。研究を最初はしていたとか……」

『人類は途中から、それどころでは無くなってしまったからな……』

「そうですよね……」


 倉庫の分を全部収納し終えて、前に作った油そばを会話をしながら作り、出来上がったので挨拶をして電源を切る。

「……」


 急に静かになって寂しい。

 食べ終わったら、もう一回トランシーバーで会話してみようか。

「ダメダメ……迷惑かけるのはいけないッ。シャワー浴びて、チャチャっと寝て明日の配送される荷物を出迎えなきゃだ」


 そう思い油そばを食べきり、私はシャワーを浴びて、トランシーバーを名残惜しく眺め、瞼を瞑ったのだった。



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