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その1 里への帰還

⇒ダンジョン最下層、魔人の里 実年齢52歳


ここは中央神殿の操作室。浮かんだボットから、タローが話を続けていた。

「では、この里にボットを置いて、魔素の供給を続けることにする。」

「ホム殿は、魔族の里でウィル坊の世話をしていただこう。」


「俺の世話って、何だよ!」半泣きのウィルが、それでも口を尖らせた。

「ここにある魔石は、私が責任を持って、この星に住む全ての竜族に供給させていただこう。魔人の友情の証しとしてな。」


「そして、魔動機の話をしていたのだが、」

「ああ、そうでしたな。魔石に魔素を充填(チャージ)して積み込めば、この魔動機はまだ動くはずですぞ。」

「もっとも、ジローのこの船のように高くは飛べません。先ほど、あの穴からこの船が降りてきたときには、船の性能に舌を巻いたものです。」ホム爺は、また大げさな身振り手振りで、驚きを表現した。


 ◇ ◇ ◇


小型ボットを一機、中央神殿の制御室に置いた。

融合炉のプラズマ温度をやや低下させて、魔素の生成を開始する。壁の装置群が、目を覚まして明るく灯った。


「よし、これでこの場所は維持できる。ここは常に私とリモート接続しておくから、装置群に何か動きがあれば私が感知できる。」そうだな、タローに任せておけば問題なかろう。


皆で搭載艇に乗り込んで魔族の里に戻ろうとしたが、ウィルがどうしても魔動機に乗ってみたいと駄々をこねた。

「では、ウィル坊ちゃん。私が操縦して差し上げましょう。」うやうやしくホムが役目を買って出て、二人は魔動機に向かって歩いて行く。


「魔素の充填(チャージ)はどうするんだ?」

「その搭載艇からも、魔素を汲み上げられるとお聞きしましたが?」

「それじゃあ、危なっかしいな。俺の船から魔素を汲み上げながら、魔石に充填(チャージ)しながら飛ぶのも、どうかと思うぞ。」

「仕方がない、ジローよ。ボットを一つその魔動機に載せてやれ。」おや、タローもウィルには甘いんだな。


「やりぃ!」ウィルは、大いにはしゃいでいる。まあ、その魔動機の性能を見るにはちょうどいい機会だ。先に魔動機を射出させることにして、俺たちは搭載艇に乗り込んだ。


やがて、積み込んだボットから魔素を汲み出して、魔動機が動き出した。

なるほど塔に沿って上昇を始めたが、ゆっくりとした速度だ。高さが5kmほどある出入り口まで十分程を要した。風魔法の推進力では、まあそんなものだ。俺の船は重力波推進だから加速度は打ち消せるが、魔動機にはそんな機能はなさそうだしな。


ようやく地上に出た。ここは活火山の裾野だ。この標高ならば魔動機でも飛べるようだが、飛行速度は決して速くない。

いや、そもそも速さを求めてはいないのだ。魔人は進化の頂点にいた種族だと言う。効率一辺倒ではなく、ゆったりと優雅に周囲の景色を楽しみながら移動したのだろう、そんな気がした。


「時速10kmか、人が平地を軽く走り続ける程度の速度だな。ウォーゼル達が、悠々と空を飛ぶより、少し遅いか。」前を行く魔動機を追いながら、タローがそう教えてくれた。

「タローよ、船の速度を上げて、前の魔動機を追い越してみろ。」


「了解だ。」俺の船は速度を増してポンと前に出た。そうしたら、魔動機も速度を上げて食らいついてきた。

タローは前を飛びながら、魔動機の最大速度を測っている。

「時速20kmだ。ホムめ、闇属性推進とやらを使ったな。」タローが楽しそうだ。


これは考えてみれば、我が人類が科学技術で作った船と、この星の魔人が魔法技術で作った船とが並航しているわけだ。そう言えば操縦しているのも、それぞれに作られた人工知能だな。これって、歴史的な事じゃないのかしら。


 ◇ ◇ ◇


魔族の里に戻り、着陸した俺の船。そしてその横に、魔動機もふわりと舞い降りて、ウィルが意気揚々と降りてきた。

「やっぱりジロー兄貴の船はスゲーな。でも、俺の船もイカしてるぜ。」


「ホム殿、この船をウィルに使わせてよいのか?」

「なに、ゼーレ殿。もう使うものもおりません。このまま、ウィル坊ちゃまに差し上げましょう。」

「いいのか、ホム爺。じゃあ、今日からこれは俺の船な。もう返さないからな。」


ウィルの親父の里長は、大きな目をギロリとさせて俺たちを迎えた。

「何と! 魔人の僕たるホム殿が、この里にご助力をいただけるのか。こんなに晴れがましいことはない!」里長は小躍りしてホムを受け入れ、数日のうちにこの里の特別宰相としての地位を用意したと、後から聞いた。


ホムは、里長を助けて政治経済の改革に取り組み、海辺にある人族の里との交易も活性化を進めて、この魔族の里の存在感を大いに示すことになった。

中でも一番の貢献は、ウィル坊の執事役だったろう。まだヤンチャで幼さを残していたウィルは、ホム爺の褒めて伸ばす指導方針が功を奏して、優しく逞しく賢い青年として、未来の里の指導者としての英才教育を施されたのは、この後の話だ。


 ◇ ◇ ◇


俺とウィルは、ホム爺の目を盗んで、里の鍛冶屋にダンジョンから持ってきた大量の戦利品を納品して、一財産を作った。

俺は、ホムンクルスの兵士が持っていた魔法剣を数本鍛え直してもらった。俺の得意な風属性が乗りやすい、扱いやすい片手剣に仕上がった。


例のゴーレムが持っていた両手剣も、柄に魔力を制御する宝石を埋め込んで、打ち直した。ぐっとバランスが良くなったので、俺も両手持ちの剣の鍛錬をしてみることにしようかな。


ウィルも、あの紅蓮の魔剣(フレイムソード)を整備して、愛用の剣としたのは言うまでもない。(続く)

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