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その3 兄の願い

ラルドーは、茶碗の酒をグイと空けてから「お前、獣人の女は嫌か?」改めて向かい側に座る男を睨みつける。

「いや、そんなことはない。俺は、モフモフ系は好きだしな。」

「何だ? そのモフモフってのは。」

「いや、何でもない。」


「妹は可愛いよな?」ラルドーは、もう一度押してみた。

「うん、可愛い。」


「いい女になったろ?」また、押してみた。

「ああ、そうだな。」


「仕事もよく出来る。」またまた、押してみた。

「そうだな、よく出来るし、頑張り屋だ。」


「じゃあ、文句はないな。」最後に、もう一押し、してみた。

「ラルドー、いい加減にしろ。お前たちこそいいのかよ。俺は、どんくさくて、弱っちい、尻尾もない人族だぞ。」

「ひ弱な人族は、正直言えば好きではなかったが、お前は別だ。」

「ローリーを嫁に貰ってくれ!」「頼む!」と、ラルドーはヨシユキに頭を下げた。


しばらく黙っていたヨシユキが、かめから柄杓ひしゃくで酒をすくうと、空いていたラルドーの茶碗に酒を注いで差し出した。


「まあ、飲め! 俺と酒を飲みに、来てくれたんだろ?」自分の茶碗にも、酒を注いだ。

「肉が焼けてきた。食って、飲もうぜ。」

それからの二人は、ただ黙ったまま肉を頬張り、酒を舐めた。


 ◇ ◇ ◇


しばらくして、ヨシユキが口を開いた。

「俺は、ガキの頃に流行り病で、親兄弟と死に別れた。一度に全員だ。そんな俺を拾ってくれたのがジロー先生で、一緒に育ったのがサナエだ。言ってみれば、ジロー先生が親代わり、サナエは頭の上がらない姉貴のようなものさ。」


「そうだったのか。」

「だから、俺は夫婦ってのが分からん。人を好きになるってのも、苦手だ。」

「そうか。」


「妹さんは、可愛いと思う。こんなが嫁だといいなと考えたことはある。」

「そうか。なら、話は早いな。」

「待て、待て。俺は、つまり、嫁さんを貰う自信がないと、お前に告白しているつもりなんだけどな。」


「両方で好き合っているなら、まったく問題はない。お前には仕事で嫁を食わせていける甲斐性があるし、ローリーだってお前を手伝いたいんだからな。」

「それでいいのか?」

「いいさ、だからカミサンにすれば、給金を払う必要はないぞ。」

「さっきのは、そういう意味だったのかよ。」

「ようやく分かったか、馬鹿め。」

「馬鹿とは何だ。」

「その馬鹿の家族になってやると言ってるんだ。有難いと思え。弟よ。」


「妹さんを貰っても、俺はお前を兄貴なんて呼ばないぞ。歳は一緒だしな。」

「ああ、それでいい。まあ、ここは本気で考えて欲しいんだ。」

二人の酒盛りは、夜遅くまで続いた。(続く)

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