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その4 白い塔

俺は、ホムに向き直った。「ホムよ、いずれ北の火の山とやらの様子を見に行こうぜ。」

「はい、ジロー様。何卒、お力をお貸しください。」

「俺のことはジローでいい。お前、少なくとも俺よりは年寄りだよな。」


「私は魔人に生み出されてから、およそ八百年を生きております。極めて少ない魔素で稼働する省エネタイプでして、魔法は使えませんが、体の損傷も魔素を消費して修復できますから、いつ死ぬか先は見えません。」


「竜族並みの長生きだな。ところで魔人の寿命って、どのくらいなんだ?」

「この里の五人の長老が二百歳代でした。もっともこれは長生きした部類です。」

「では、私たち魔族や人族の倍以上は生きるのだな。」ゼーレが感心したようにつぶやく。

「としても、あの子供たちの親は、あの山に辿り着いたとしても、もう生きていないか。」

「そうですな、生き残っているとしても、子孫を残し代を重ねているでしょう。」


 ◇ ◇ ◇


いろいろと情報交換をした後で、ホムは無人となったこの里を案内してくれた。

里の中央に、何かのシンボルのような白い塔が建っている。

「あれは何だ?」と俺が指し示すと、「外界との門ですな。」とホムが答えた。


近付いてみる。塔の根元は、四人がぐるりと手を繋げば取り囲めるほどの太さの円柱だ。表面はとてもなめらかで、見上げれば塔の先端は、徐々に細くなりつつ遥か上空まで伸び上がって、先端は空に溶け込んでいるように見える。


石畳は塔の根元まで続いているが、塔が生える手前の石のタイルには、ただ一つ炎のアイコンが刻まれているものがある。


「魔人は、ここから外界との出入りをしておりました。」

「これは炎の魔力を表しているのか?」俺はアイコンを指差す。

「はい、強大な魔力で、初めて門が開くのです。これを開けられるものは、里でも数人しかおりませんでした。」なるほど、火の属性はそもそもの基本だからな。


「俺の魔力では、届かないかな?」聞いてみた。

「おそらく無理かと。」とホム。

「では、俺たちはどうやって戻ればいい。」

「また階段を一層ずつ、登ってお帰りいただくことになりますな。」

「それは勘弁だぜ。」ウィルは、本当に嫌そうに顔をしかめる。


「兄貴、ダメもとで試してみようぜ。」

「そうだな。」俺は火の属性で、魔力を力一杯に塔の根元のタイルに投射した。

タイルが赤く燃え上がる。と、白かった塔が根元から赤く染まり、その赤がぐんぐん登っていく。そして、尖った塔の先の青空色の天井に、真っ黒な穴がポカリと開いた。

おお、いけるか? と思ったとたんに、穴はぴしゃりと閉じてしまった。


「ゼーレ、力を貸してくれ!」ゼーレ兄が魔力を注ぎ、俺ももう一度頑張ってみる。

真っ黒な穴は、さっきよりは大きくなったが、またしてもぴしゃりと閉じた。

「ふふん、ここで俺様の登場と言うわけだな。」偉そうにウィルが前に出ると、

「兄貴、さっきの剣を借りるぜ。」覚えたての魔法で、俺のストレージから紅蓮の魔剣(フレイムソード)を取り出した。


「おお、それを持ってこられましたのか。」それを見て、ホムが反応した。

「昔は、上層階の魔物が落としたアイテムを拾い集めるのも、私の仕事でしたが、」ホムは、チラリとウィルを見る。


「まあ、坊ちゃんがお使いになるのであれば、差し上げてもよろしいでしょう。」

俺はウィルに目配せした。ほかにも沢山拾いまくったアイテムのことは、ホムには内緒にしておこうな。


ウィルは気を取り直して、「そうかい、ホム爺。有難くもらい受けるぜ。」と言うと、剣の刃先をタイルに置いた。「さあ、兄貴。ゼーレ先生。もう一度だ!」

俺が魔力を投げた。タイルが赤く燃え上がる。ゼーレが魔力を重ねると、燃える炎が更に強まった。そこへウィルが、タイルに置いたフレイムソードに精一杯の魔力を流した。刀身が赤熱してタイルに伝わり、タイルは白熱した。


塔は、ぐんぐんと上まで赤く染まり、バシンと大きな音がして、上空の黒い穴は大きく開いたままになった。どうやら固定されたようだ。


「おお、流石は坊ちゃま。上出来ですぞ。」ホムが、大げさにウィルを褒める。

ウィルは、どうだとばかり、誇らしげに胸をそらせた。ホムも、褒めて伸ばすタイプだったみたいね。


上空に大きく開いたままの黒い穴、あの大きさなら、搭載艇をこの最下層まで降ろす事ができそうだ。俺はタローに、迎えに来てくれるよう頼んだのだった。

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