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その3 警護の魔物

「とうとうここまで降りてきたな。」ゼーレが感慨深げだ。ゼーレも、そして俺も、ここまで来たのは初めてだ。

「ゼーレ先生とジロー兄貴がいてくれれば、まだ行けるぜ!」ウィルは強がって見せてはいるが、目に先ほどまでの力はない。


怖いよな、判っているさ。むしろ恐怖を感じるのは、自分の実力がよく分かっている証拠なのだ。ここまで来て怖くないという奴は、無鉄砲なだけの馬鹿者だ。


「通信が回復した、今どこにいる?」頭の中で、突然タローの声がした。

「うわっ!」と俺は思わず声を上げた。

「どうした。」ゼーレが俺に声をかけながらも、剣の柄に手をかける。敵襲を疑ったのだ。

「いや、済まん。何故だか分からんが、ボットと俺の船にある本体が繋がった。」

「繋がっただと? ああ、通信できるようになったと言うことだな。」ボットの働きをある程度知っているゼーレは、慌てた俺の発言を翻訳してくれた。


ここでタローの合流は実に頼もしい。直接タローからボットを操作させられるし、俺自身を支援してもらうことが可能になったわけだ。

「突然、電波が通るようになったな、三十五階層か。昔の魔人族とやらが、何らかの地上との連絡手段を用意していて、それが今でも生きているのではないか。」


タローは、洞窟に入ってから通信が途絶していた間の、ボットが集めた情報を素早く吸い上げたようだ。

「その階層からは、二足歩行の警護の魔物(ガーディアン)が出るとの伝聞が残っている。魔人の里に近づいたと言う事だろう。」なるほど、そうなのかもしれない。


遠くから、カチャカチャと音が近づいてくる。甲冑が擦れる音のようだな、と考えているうちに、前方にいくつかの人型をした何かが浮かび上がった。

「会敵! 剣を持ち、簡易な鎧を着てようだ!」遠目が利くゼーレが、剣を抜いて刀身を鈍色に励起させた。闇属性を乗せたのだ。


俺も剣を抜き払って、刀身に風を巻き始める。ウィルも、引き抜いた刀身をうっすらと赤くした。

三体の人型が、剣を振りかぶって襲い掛かってきた。

その後ろには人型が二体いて、持っている杖の宝玉を輝かせている。


すかさず俺は、鑑定魔法で敵を走査スキャンした。五人全員がLv.18か。前衛の三人は剣士、そして後ろの二人は魔導士だ。決して強敵ではないが連携の取れた攻撃は厄介だ。

「まず、魔法が来るな。」そう判断した俺は、すかさずウィルとゼーレの直前に魔法の盾(マジックシールド)をぐるりと展開した。地表から頭上後方までをすっぽりと覆う形だ。


どんな魔法が、どれほどの強度で飛んでくるのかが分からない。俺は身構えた。

バシンバシンと音がして、石礫が真正面から魔法の盾(マジックシールド)に打ち当たって弾けた。石礫の投擲(ストーンバレット)か、思いのほか地味目な魔法だったな。威力もそれほどではない。


瞬時に盾を解除して、ゼーレとウィルには襲い掛かる前衛の三体と戦わせた。勿論ウィルの防御に、いつでも俺自身が介入できるように準備していたし、恐らく頭上のボットもタローが重力子ビームの照準を敵側に当てていただろう。


たちまちのうちに、ゼーレが二体を切り伏せた。ウィルも善戦している、いやむしろ相手を圧倒しているようだ。

また杖を輝かせた始めた後ろの二体に向けて、今度は俺の番とばかりに石礫の投擲(ストーンバレット)で攻撃してみた。術式の構築速度は、はるかに俺の勝ちだ。石礫に頭を貫かれて、二体はグズグズと倒れ込んだ。同時にウィルが残る敵一体を切り倒すと、ウオオと雄たけびを上げた。


「よくやった。」ゼーレがウィルの肩を叩いた。褒めて弟子を伸ばすタイプの師匠だ。

褒められてウィルは、しかし怪訝な顔だ。

「どうした?」尋ねる俺に、ウィルは苦笑しながら「いや、たいして強くなかった。拍子抜けってやつだな。」生意気な若造である。


ゼーレは敵の死体を見分している。五体とも同じ顔、いや表情と言うものがない目と鼻と口が並んだ作り物のような顔。手足の造りもまったく同じようだ。

「これは、伝説のホムンクルスというやつか。」ゼーレがつぶやく。

「魔人族が人族を真似て作りました、というお伽噺だよな。」とウィル。どうやら魔族の集落では皆が知っている話らしい。


今の戦いの音を聞きつけたらしい、新手が現れた。また五体の集団だ。

いや中央の一体だけが、やや身長が高い。こいつは要注意だな。


近付く敵との間に、俺はまた魔法の盾を展開した。バンバンと石の礫が当たって弾ける。

ワンパターンな奴らだと思った次の瞬間、何と中央の身長の高い剣士が刀身を赤く励起させたかと思うと、剣をブンと振った。火球を投げてきたのだ。

さほど速度もない、威力も小さな火球だったが、俺は驚いた。こいつ魔法剣を使うのか。急いで走査すれば、魔法剣士Lv.20だった。


火球は、俺の魔法の盾に当たって空しく弾けた。

俺は魔法の盾を維持しながら、僅かに隙間を作ると、まず後ろの術士二体に石礫を投げて片付けた。


次いで盾を解除、高出力の炎の大玉(バーニングスフィア)を空中に浮かべ、中央の剣士に叩きつけてやった。剣士は慌てた様子で魔法剣を振ったが、そんな火力でこちらに対抗できるはずもない。


炎の玉をぶつけられて、剣士は燃え上がりながら後方に吹っ飛んだ。赤く励起していた剣が、剣士の手から落ちて石畳の上でカランカランと音を立てた。

すかさず、ゼーレとウィルが突撃して、それぞれ目の前の剣士を切り伏せた。

長身の剣士は燃えてしまってよく分からないが、残った死体はまた同じ顔と体だった。


「すげーなジローの兄貴は、剣士のくせに魔術師みたいだ。」ウィルが軽口をたたいた。

「また、たいしたことはなかったな。」と俺が感想を言葉にすると、

「いや、これは我々の、つまり人間の戦闘スタイルの模倣だ。役割分担した統率の取れた集団は、魔獣共には有効な戦術と言えるだろう。」ゼーレが考えながら言う。なるほど、そうかもな。とすればこの三十五階層は上の層からの魔獣共の侵入防止ということなのか。


「ウィル、その剣を見てみろ。熱いから気をつけてな。」俺は、長身のホムンクルス剣士が落とした剣が気になっていた。ウィルが石畳に落ちている剣を、しげしげと観察している。

「あいつが火球を放った時、刀身が赤熱していた。」俺の指摘に、ゼーレがはっと気づいたようだ。


「お前、その剣を握って属性を通してみろ。」ウィルは、落ちている剣の柄を握ると、彼の得意な火の属性を流した。ウィルが帯びている剣ではぼんやりと赤く光るのみだが、この剣の刀身は真っ赤に輝いて炎を吹かんばかりだ。


「やっぱりな。そして、お前の方が奴より魔力が高いらしい。」

「ジローの兄貴、これって、」

「ああ、多分、紅蓮の魔剣(フレイムソード)だ。炎属性に特化した魔剣だったか。」

「ウィルよ、古びているが村の鍛冶屋で修復ができれば、これはお宝だぞ。」

「うおお、俺ってば、伝説級の剣の持ち主になれるのか!」


「って、俺が貰っていいの。あいつを倒したのは兄貴だぞ。」

「ふふ、ジローは風属性の使い手だ。私は闇属性、お前が使うのが正解だろう。」

「その剣でこれからも鍛錬すれば、お前はもっと強くなれる。」ゼーレ先生は、やはり弟子を褒めて伸ばすタイプの師匠だった。(続く)

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