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その2 竜騎士は百人力

護衛隊の要として考えているのが竜騎士だ。

カレンはビボウに騎乗するとして、もう一人の竜騎士はとりあえずカレンの兄上、ゲルタンに頼もうと考えていた。


そこで、このゲルタンの相方となる飛竜を探していたのだが、何と!ウォーゼルの父であるバーゼルが、面白そうだと手を上げてくれた。

バーゼルは今120歳を越えたところと言うから、ウォーゼルは70歳の時の子供という事になる。


この北の島から遥か南に暮らしており、10年以上も前になるか、タローが大型ボットを貸し出して魔素が増えてからは、ずいぶん生活にも余裕が生まれたらしい。その後に、魔人の遺産として魔石が配られたのも、彼らには幸いだった。

バーゼル夫婦は既に子育てを終えて、悠々自適の生活を送っている。


バーゼルが竜騎士の相方として手を上げたのは、我々の元に来れば孫の顔を毎日見放題だからかもしれないな。今は納屋に置いてある搭載艇の融合炉からも、魔素は浴び放題だしね。


 ◇ ◇ ◇


俺たちは治療院に戻って、更に護衛ユニットの編成を考えることにした。

「標準的には、竜騎士と飛竜の一組、それに騎士団から二~三人といったところか。」

「上空からの索敵、敵の背後に私が空挺降下しての挟撃、まずは我らの機動性を生かすべきだな。」カレンの鼻息が荒い。


「私のブレスは広範囲に敵を一掃できますが、数は打てません。物理攻撃を中心に、魔法も援用しましょう。」ビボウが言う。

「あなたに弾き飛ばされる魔物には、同情を禁じ得ませんな。」ハンネス兵曹長の言い分はもっともだ。飛竜の強力な体幹の前には雑魚は瞬殺、先ほどの熊をも締め殺す話も凄いものだ。


「飛竜は、全属性の魔法に通じているンだよね。」俺は、ビボウに確認しておく。

「私達は、飛翔しているときには他の魔法を使いません。できなくはないのですが。」

まあ、物理攻撃が十分強力なので、その必要はないと言う事だろう。


「地上に降りれば、魔法が扱えるよな。」

「はい、地上では回復魔法も使えます。でもジロー、貴方ほど上手くはありませんよ。」

そりゃそうだ、俺は生き物係。治療のプロだからな。


「防御魔法は、どうなんだ?」

「地上にいれば、馬車を覆うくらいの(シールド)は展開できるけど、あまり当てにしないで下さい。」

ふむ、まあ飛竜自身の能力はこんなところか。十分強いけどな。


「カレン殿は、飛竜から降りても、そもそもお強いですからな。」

「そうだね。獣人族の多くは魔法剣の使い手だし、単独でも敵には十分な脅威だよ。」

竜騎士ユニットは、まさに百人力と言ってよいだろう。


「あとは、馬車を守る騎士か。」

「会敵直後は、弓が使えれば迎え撃つ中距離攻撃ができるので望ましいですな。」

「接敵後は、剣や槍を用いた戦闘となるわけだ。」


「まあこれで戦力としては十分か、欲を言えば、、、」

「魔導士が欲しいですね。」カレンが、俺の話を先取りして言った。

「そうだよな、攻守のバランスのいい魔導士か、或いは魔法が打てる魔法剣士でもいい。」


「魔族ですよね。」

「そうだ、ここに魔族が一人でも入ってくれれば、護衛ユニットとしては完璧だな。」

「まだ魔族の参加は見込めないが、そのうち引き込みたいものだな。」

「ビボウに私、そして旦那様とクレアがいれば、」カレンよ、それは流石に戦力過剰というものだろう。


俺は兎も角、クレアはもう魔力量にもの言わせて打ちまくる魔導士ではない。広範囲に展開する全体魔法と、絶妙にコントロールされた効果的な一撃を併せ持つ、優れた魔導士に成長している。今の俺は、もう魔法戦ではクレアに勝てる気がしない。


 ◇ ◇ ◇


数日後、俺たちはウォーゼルの父バーゼルの到着を待って、ゲルトの里に向かった。

搭載艇には俺とカレン、ビボウにはバーゼルを案内する形で搭載艇に並んで飛んでもらっている。


「人族の科学技術とやらは、なかなか早く飛ぶのだな。見くびっておったわ。」バーゼルは精一杯の速度で飛翔しながら、息子の嫁に愚痴をこぼしている。

「父上、これはおそらく最高速ではありません。私たち飛竜の速度に、ジローが合わせてくれているものかと。」


「なんと!そうなのか。まあしかし、こうして魔素を浴びながら魔力全開で飛ぶのは、気持ちの良いものだ。数十年、若返った気分だぞ。」

「まあ、それは良かったこと。」ビボウとしても、義理の父とこんなに打ち解けて話せるのは初めての経験だった。


「儂の遠い祖先も、獣人族を乗せて魔獣討伐をしたと聞く。心が高ぶっておるのじゃ。」

「はい、私もカレンと共に魔獣を狩るのは、とても楽しい時間です。」

「そうかそうか、儂も楽しみにしておるよ。」


獣人族の里に到着した俺たち一行は、真っ直ぐに族長ゲルトの家を目指した。

飛竜来訪を聞きつけて、ゲルトの家の前には獣人たちが集まりお祭り騒ぎの賑やかさだ。

語り継がれた竜騎士の伝説が、いま復活しようとしている。


俺は、戸口に立つカレンの父ゲルトに、まず挨拶した。

「父上、ご無沙汰しておりました。まずはカレンの友ビボウ殿をご紹介いたします。」

ビボウが、とぐろを巻きなおしてゲルトに鎌首を伸ばして挨拶をした。

「私はカレンの父ゲルト、娘が世話になっている。」ゲルトも頭を下げて、挨拶を交わした。


「続いて、ビボウ殿の義理の父に当たるバーゼル殿を、ご紹介いたします。」

「おお、これは光栄の至り。カレンの、そしてこのゲルタンの父ゲルトである。」

すかさず息子のゲルタンも前に出て、バーゼルに対面した。

「ゲルタンと申します、カレンの兄であり、父を助けてこの里をまとめております。」


バーゼルは、ゆっくりととぐろを巻きなおし、ゲルト、次いでゲルタンを見つめた。

「逞しき獣人族の戦士ゲルタンよ。お主の魂には、炎の属性がたぎっておるな。」竜には、属性波動がお見通しだ。


「儂は、我が子の嫁ビボウと同様、お主らを助けて魔獣を討伐したいと願っておる。」

「ビボウよりは年寄りだが、まだまだ働く故、宜しく頼む。」どうやらバーゼルはゲルタンを認めたらしい。集まった獣人たちから歓声が巻き起こった。(続く)

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