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その1 獣人族の天命

商隊護衛のアイデアを、俺はウォーゼル夫婦に相談してみることにした。つまり、この仕事を飛竜にも手伝ってもらえないか、と言うわけだ。


「面白そうだな。」話を聞いたウォーゼルは、とぐろを巻きなおすと目を輝かせた。とぐろをグルリと巻きなおすのは、こいつら飛竜が興味を引かれた証拠だ。


「カレンは護衛に出ないのかしら? カレンが出るなら、私が乗せて飛んであげるわ。」なんと、ビボウも乗り気になった。

「カレンと一緒に魔獣退治、楽しそうじゃない。」そうなのだ、このところカレンとビボウは気の合うママ友になってしまい、子らを養うためのビボウの狩りにカレンが付き合う機会が増えてきていた。


カレンも、鼻息荒くビボウの話に乗ってきた。

「古の昔、竜を友とした騎士の伝説は、今でも我ら獣人族の語り草なのです。」

「人族のために働くのは(しゃく)ですが、竜族を友とし魔獣を成敗するのは、心が躍ります。」


そうだよな、人と竜を繋ぐのは、まさに獣人族の天命かも知れないな。

飛竜と行動を共にする獣人族:竜騎士が護衛に就くとなると、これは話題性も大きい。新しいビジネスの宣伝となるに違いない。


「ジローが出るなら、私も付き合うぞ。」ウォーゼルがそう言ってくれたのだが、

「まあ、あなたはいつもジローと遊んでいるでしょう。私がカレンと出撃したときは、あなたは子供達の世話をして、お留守番です!」ビボウにすかさず言い渡された。うむ、女は強い。特に子を産んだ嫁に、男は敵うものではない。このことであった。


「カレンとビボウが組むのはいいとして、カレンの兄上ゲルタン殿と組める飛竜を紹介してもらえないか?」俺は、ゲルタンを竜騎士としてスカウトしたかった。

「そうだな、私の両親にボットを通して話をしておこう。」

「ああ、助かる。よろしく頼むよ。」

俺たちは治療院に戻り、さらに商隊護衛の細部について検討を重ねた。


 ◇ ◇ ◇


翌日は、非番だからと付き合ってくれたハンネス兵曹長に案内されて、騎士団の本部を訪ねることになった。俺とカレン、そしてウォーゼルを留守番にしてビボウが一緒だ。

騎士団の会議室で、団長のクールツが俺たちを出迎えてくれた。


クールツ団長は、この村の人間なので、当然のことながら顔は互いに見知っていた。逞しい体躯を持つ壮年の騎士で、実直な印象がある。

何度かウエキ爺の酒場で会ったことがあったが、仕事での打ち合わせをしたことはない。


「まさかジロー先生から、商隊護衛の話を聞くことになるとは、」

美しき獣人カレンと、それよりも珍しい飛竜のビボウを前にしては、クールツ団長も少し緊張しているようだな。笑みが強張っている。


「団長殿。ジロー先生は、護衛隊の創設を我ら騎士団の新たな収入源にしてはどうかとお考えなのです。」ハンネス兵曹長が説明を始めた。

「ほう、収入源とな。騎士の給料も増やしてやりたい、装備も改めたい、何かと物入りな貧乏騎士団としては、有難い話だが、」

おお、これは脈がありそうではないか。


「安全を確保して商いを後押しできれば、商人は安定して利益を生み出せます。護衛の費用は、彼らに必要経費として負担させれば良いのです。」と俺。

「我ら獣人族に飛竜、そして数名の騎士で、馬車を護衛するユニットを作りたいと考えています。」カレンが言い、ビボウが頷いた。


「ボットが同行する事も出来るので、これに馬車を引かせれば、馬はいらないそうです。」

ハンネス兵曹長が、俺の考えたアイデアを付け加えた。

「ボット? ジロー先生から借りて、村の門で使わせてもらっている、例のキカイか。」

「そうです。」

「あれに馬車を引く力があるのか?」

「もう少し大きな機体があります。そのくらいの力は十分にありますよ。」俺は請け合った。

「なるほど、馬も不要だとすれば商人も喜ぶだろう。」クールツ団長は納得したようだ。


「魔獣とは必ず出くわすのですか? 商隊を襲ってくるのは、どんな奴らなのです?」

「よく出るのは群れなす狼(フロックウルフ)や、草原ハイエナ(ステップハイエナ)か。こいつらとは、ほぼ毎回出会うと言っていい。雑魚の部類だが数が多いと厄介だ。」


「森に近づくと、ときどきヤバイ奴らが出てきますよね。」

「ああ、森イノシシ(フォレストボア)に突っ込まれれば、下手をすると死人が出るな。」

暴君熊(タイラントベア)の姿を見たら、馬車を捨てて一目散に逃げるしかない。」

「めったに現れないが、群竜の集団と出くわせば一番厄介だろうな。あいつらは昼夜構わず襲ってくるという。」


「森イノシシ、あの肉は旨いな。」カレンが舌なめずりをした。

「あら、あの馬鹿な群竜なら、私のブレスの出番ね。」

「それと暴君熊も、私なら絞め殺すのは簡単だけど、美味しくないのよね、あれ。」ビボウも負けてはいない。


周りはシーンとした。どうやらこの二人の強さは、異次元のもののようだ。

「こ、これは、頼もしいですな。」クールツ団長の笑顔が、引きつっていたが、

「分かりました、これは上手く行きそうですな。商人は仕事が回り、流通がよくなれば村人も恩恵があるでしょう。そして騎士団の収入にもなる。これは世の為になる仕事ですな。」

「私もそう思います、団長!」


「そう言えば、最近は盗賊も出るらしい。」思い出したように団長が呟いた。

「相手は人間ですか、これが一番厄介かも知れませんなぁ。」と兵曹長。

「負けるはずはないけれど、人間をブレスで焼き払ったり、嚙み殺すのもちょっと、ねえ。」真顔で言うビボウに、ウンウンと頷いたのはカレンだけだった。

(続く)

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