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その3 配布作戦

タローが数機放った探査ボットは、遥かな上空から地上で感知できる竜族の波動を拾い集め、データを送ってきた。

これをタローが解析し、重複やノイズを除去してマップに落とし込んだ。

僅か一日で、この地点を中心としたこの星の半球における竜族生息マップが完成した。


「次いで、裏半球のマップ制作にかかる。」

「今度は、ボットの移動時間も含めて、数日間が必要だな。」タローはそう請け負った。相変わらず頼りになるやつだ。


俺たちは、とりあえず完成した半球マップに見入った。マップは大型ボットの表面に、大きく映し出されている。

竜がいる場所は、マップ上で赤く光る点で表されている。点の大きさは、波動の大きさ、つまり竜のサイズを示している。光点のほとんどは、各地に散らばる活火山の火口付近に見られたが、森林地帯の上空に打たれた光点もあった。


「見逃した個体がある可能性が残る。サイズによっては、ノイズとして除去された個体もあるだろうから、とりあえず試作品として捉えてくれ。」とタローが説明する。

「火口付近にある光点は、彼らの巣なのだろう。ここで魔素を汲み上げているのだ。」

「森の上などにあるものは、飛翔中の個体と考えられる。」

「この半球での竜の生息数は、合計で538匹と観測された。」


「こんな事ができるのか。科学技術とは素晴らしいものだな。」ウォーゼルが感嘆の声を上げ、師匠もウムウムと頷いている。

「だが、私が考えていたより多い。」ウォーゼルが首を傾げた。

「多分、お前さんたちの知らないグループがおるんだろうよ。」

「竜族にも、いくつかの種族があろう。ほれ、白くて大きな奴や、お前たちよりも小型で翼を持つ気性の荒い奴等もおろうが。」と師匠がウォーゼルに指摘した。


聞けば、大型種は二種類。ウォーゼル達とは違って、胴体は長くはなく、手足のほかに翼を持つのだと言う。ウォーゼル達は体の色で、白竜族、黒竜族と呼んでいるそうだ。共に上位種として彼らの敬愛の対象であり、深い知性を備えて穏やかだが、半面で気難しい種族だと言う。ただその数は今や非常に少ないらしい。多分、これがキュベレが俺に見せた竜種なのだろう。

この白竜・黒龍の二種族は体の造りが異なり、お互いには交配できないそうだ。となると、これは亜種ではなく別種と言う事になる。


また小型の竜種もいる。ある程度の知性を持っていて、いつも群れで行動するが、ウォーゼルによれば野蛮で狂暴。自分たちと一緒に、竜と呼んで欲しくないそうだ。紛らわしいので、群れを作る小型の竜種は群竜と名付けることにした。

上位の竜種と生息地が重なると、魔素の奪い合いでたいていはこの小型種が追い払われるらしく、今では極端に数を減らしている。最近はほとんど見かけなくなったとは、ウォーゼルの話だ。


「では、この星には竜種が四種。大型で個体数の少ない白竜族と黒竜族、ウォーゼル達の飛竜族、そして小型の群竜族がいるわけだ。」ウォーゼルは群竜も竜種に含めた俺に、少し不満そうだ。


「タロー、この光点に群竜が含まれている可能性はあるか?」俺は念の為に聞いてみた。

「ウォーゼル達の生体波動と、そのサイズでカウントしているので、恐らく含まれていないだろう。」

「但し、ウォーゼル達よりサイズの大きな群竜がいなければ、の話だが。」ウォーゼルが首を横に振って、否定したところを見ると、それはないらしい。


「奴等は、人族も襲って捕食するし、我らにも群れで襲ってくるときがある。」

「ほとんど、ブレスで返り討ちだけれど。」ビボウがフンと鼻を鳴らした。

「あいつ等に、魔素をくれてやる必要はない。滅んでよい奴等だ。」ウォーゼルはそう言うが、この群竜が生態系にどのような位置を占めているかは、生き物係としては慎重に調べる必要があるかな。まあ、これはこの場ではまだ言わずにおこう。


「私の両親と弟は、きっとこれ。」ビボウが、大きな指の爪先でマップの光点を示した。

大きな光点が二つ、そして小さなのが一つ。場所は、ここから離れた北の島の中央にある火山だ。ここがビボウの実家と言う訳か。


「私の両親は、多分ここの集団のどれかだろう。」ウォーゼルは、ここから南にかなり距離の離れた場所を示した。

数個の光点が集まっているのは家族だろうか。拡大してみると、それらがほぼ円を描くように、ぐるりと六つばかり配置されていた。


そのうちの一つは、他から距離を置いて、ひときわ大きな光点二つで構成されていた。

その近くに火口がある。これは地形を見る所ではカルデラだな。地下に大きなマグマ溜まりが存在しているのだろう。


「これは、もしかしたら。」俺は二つの大きな光点を指し示してウォーゼルに尋ねると、

「ああ、父母が向かった南の火山には、白竜の番がいると聞いた。」と答えが返ってきた。

その白竜の番に住むことを許されたので、ウォーゼルの家族は旅立っていったのだった。

このカルデラに住む竜族の、ボスといったところなのだろう。


「ウォーゼル、その白竜と話をすることはできるのか?」

「私は直接お会いしたことはないが、我らの上位種だ。私が両親と共に訪ねれば、意思の疎通は出来ると思うが、」

「ボットを一機、土産代わりに持たせるから、この白竜と話をしてこないか。今後のボットの配置、つまり竜族への魔素の供給計画について、相談したい。」


「おお、そのような大役を任せてくれるとは、晴れがましいことだ。喜んで出向こう。」

「ボットを白竜の番がいる場所に置いてくれば、今後ともタローと話ができる。この集団の全員に、魔素を供給する事も出来るだろう。」

「魔素が十分に供給されれば、我々はより多くの子供を産み育てる事ができる。竜族の未来が開けるぞ。」ウォーゼルは、鼻を鳴らして意気込んだ。


「ビボウも一緒に行くか?それとも?」

「私は、自分の両親に会いに行きたい。」ビボウはそう言った。

「では、小型のボットを一つ連れて行って、置いてくるがいい。」

「魔素量は十分だし、お前たちもボットを通じていつでもやり取りができる。」

「とても嬉しいわ、ジロー。育ち盛りの弟が、きっと喜ぶわ。」


翌日、ウォーゼルは南のカルデラに向けて、ビボウは北の山一つ向こうの火山にある実家に向けて旅立った。

ビボウには、小型ボットを一つ付き添わせた。つまり家庭用だな。

ウォーゼルには、大型ボットを付き添わせてやった。これは、こちらからの画像を大きく投影するためには都合が良かろう。竜の数からみれば魔素生成能力は大きすぎるが、大は小を兼ねると言う事で。

このカルデラグループとは、今後とも映像を見ながらの打ち合わせが必要になるだろうと考えた次第だ。


竜族の存続計画は、これが始まりの一歩となる。

まだ裏半球のデータも得られていない。

各地に散らばる竜族との今後の調整は、原則としてタローに任せることにした。

俺には、キュベレからの宿題がある。魔法や剣術の稽古で、忙しいのだ。

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