表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/93

その2 魔素の由来

「バイタルは急速に回復中だ。ジロー、聞こえているか?」

頭の中のタローの声で、俺は気がついた。俺はウォーゼルの手を取ったまま気絶していたのだった。ああタローが俺を操って、倒れぬように立たせてくれていたのだな。


「済まん、もう大丈夫だ。」俺はタローに礼を言った。

「上手く行ったようだ。」手を離したウォーゼルは、優しい目で俺を見つめた。

えっ、もう終わったの? 意外にあっけないな。


「手の平を上に向けて、そこに今見た光を念じてみよ。」

師匠に言われて、俺は気を集めてみた。光属性だけは昔から得意な俺だ。

ポウっと、光が手の平の上に輝いた。おお、以前より数段大きな輝きになっている。


「よし、次はその光を闇に転ずるのじゃ。」

また精神を集中すると、光は手の平に吸い込まれるように消え、今度は周囲の光を引き込み始めた。漆黒のモヤが手の平に乗っている。

「よし、上出来じゃ。」師匠が褒めてくれた。これが闇の波動か、確かにこれは初体験だ。

「君は優秀だ、ジロー。私でも最初はこんなに簡単ではなかったぞ。」ウォーゼルも俺を()めてくれた。


「これで、光と闇の波動は会得(えとく)ができた。あとは鍛錬(たんれん)あるのみじゃな。」

「光と闇の波動は、生体エネルギーの強い発露(はつろ)だ。今はただ、強い波動を素早く切り替える練習に専念するがいい。」

「十分な強さと速さに至ったときに、魔法を伝授してやろう。」師匠が、ポンと俺の肩を叩いた。


少々拍子抜けの感がある。これで俺は、光に次いで闇属性を体得できたのか? 確かに、魔力の通りは良くなった気がするが。

「どうじゃ、魔力の(めぐ)りが強まったのが分かるじゃろう。」

「はい、確かに。」

「光と闇の修行は、魔力を強めるために一番効果的なのじゃ。魔力が強まれば、これまで覚えた四元素属性も自ずと強化されるはずじゃ。」


「ところでジローよ、お前の汲み上げた魔素に触れたら、変わった風味がした。陽の光に含まれる魔素の味を数段濃くしたような、今までない刺激的な味だった。」ウォーゼルが不思議そうに俺に聞いてきた。

「どこで汲み上げた魔素なのだ?」


陽の光に含まれる魔素ならば、太陽から放出されているのだろう。とすれば、俺が外で陽に当たっているときか?

いやいや竜と違って、俺は、人族は、魔法以外には魔素を消費しない。師匠と違って、俺には日光浴の習慣はないし、昼間、師匠にしごかれて消費した魔素は、多分寝ているうちに周囲から汲み上げて回復しているのだろうな。


「うん? もしや?」俺はひらめいた。搭載艇にも小さな太陽が、熱核反応があるな。

「なんじゃ? 何か心当たりがあるか?」師匠が俺の顔をのぞき込む。

「搭載艇の融合炉(ゆうごうろ)かも知れません。融合炉の仕組みは、太陽の熱核反応と一緒です。」


「ほう、おぬしの船でも核融合が起きているということじゃな。」おっ、師匠。原子物理学の理解はずいぶん進まれましたね。

「私たちの物理学は、これまで魔素の存在を知らなかった。なので、測定することもできませんが。船の融合炉からも、魔素が発生しているのかもしれません。」


ウォーゼルは「?」の目をしている。

物理学の知識がなければ、今の会話についてこれないよね。

「その魔素の出所が、分かるかもしれんぞ。」師匠はウォーゼルに話しかけた。

「儂らをふもとまで送ってくれるか?」

「それはお安い御用ですが。」ウォーゼルは師匠を背に乗せた。俺はビボウに(またが)らせてもらった。


流石に竜は早く飛ぶ。あっという間に、俺達を搭載艇の場所まで連れて行ってくれた。

竜の背から降りた俺は、ウォーゼルに搭載艇を指差した。

「どうだ、何か感じるか?」

二匹の竜は搭載艇の方向を向くと、鼻で嗅ぐような様子を見せたが、顔を合わせて(うなず)くと船に向かって鎌首を立ち上げた。魔素を汲み上げだしたようだ。

「そうだ、ジロー。この味だ。」

「ああ、何と刺激的な風味なのでしょう。」ビボウが驚いている。どうやら、俺の想像が当たっていたな。


「タロー、少し融合炉の出力を上げてみてくれ。」頭の中で、タローに命じる。

「おおっ、これは!」ウォーゼルとビボウは、その違いをはっきりと認識したようだ。

今度は師匠が「?」の顔をしているので、「融合炉の出力を上げてみたのです。」俺は師匠に説明した。

「なるほど、それで魔素の発生も増えたという事か。」


「この魔素量は、火口から噴き出すものよりはるかに多い。」ウォーゼルは興奮気味だ。

「ジロー、あれは何なのだ?」

「あれは俺が乗ってきた船だ。あの中には、船を動かすための融合炉がある。融合炉とは、太陽に似た仕組みでエネルギーを取り出す機械だ。」


「キカイとは何だ?」

「何かの仕事をさせるために、人が作った仕組みの事だな。」

「お前たちは太陽を作れるのか!」

「いやいや、太陽で起きていることを、きわめて小さな規模で真似ているだけさ。俺達は魔法を使えない代わりに、科学技術を発達させてきたんだよ。」


「ウォーゼルよ、ジローの種族の科学技術は面白いぞ。儂らは、この船に乗って地上から遥かに高く飛び上がり、あの月まで行ってきたのじゃ。」

「何と?」

ウォーゼルとビボウが、物欲しそうな目で俺を見た。


判るよ、君らも見たいんだろ。でも、その図体だと船にはお乗せできないな。そうだ、でも見せることはできるな。「タロー、頼む。」

「大型のボットを射出しよう。」

ポスンと音がして、搭載艇の尾部から探査ボットが飛び出し、俺達の前まで飛んできた。


その大型ボットの表面に、大きく画像が映し出された。

「このあいだ、師匠をお乗せして、地上を離れ、月を回ってきたときの映像だ。」ボットからタローの声が流れた。

「この仕掛けもキカイなのかしら?」ビボウが尋ねる。


「私はタローです。始めまして、奥様。私の本体は、あの船の中にあります。」

「タローは機械ですが、俺の長年の相棒で、兄貴分なのです。」俺が補足した。

「ふうむ、科学技術と言うものは、便利なものだな。」ウォーゼルが感心している。


しばらく画面に見入っていた竜の夫婦は、映像が終わると、鎌首を降ろした。ちょうど、魔素の汲み上げも終わったらしい。

「なるほど、高く上がれば地平線が丸いことは知っていたが。」

「もっと上に行くと、この大地は青い球なのですね。」

「面白いものを見せてもらった。」

「これが科学技術なのですね。」(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ