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その3 仲直り

三度みたび、城に戻る。

魔王の執務室には、キラ侯爵が待っていた。どうやら魔素切れで倒れて、今ようやく目を覚ましたらしい。

部屋の中には、魔王様、ゾフィー宰相、キラ侯爵。そしてホムと俺だけだ。


まず魔王様が口を開いた。「この度の侯爵と婿殿とのいさかい事、既に決着はついておる。そして、両者ともこの王国に必要な人材であることに疑いはない。」

「よって、今後に禍根(かこん)を残さぬよう、この場にて(おさ)めるのが我が願いじゃ。」


「キラ侯爵、そなたの我が婿殿への言い分、無礼と考えるが如何どうじゃ?」

「はっ、我が王国の宝クレア姫様を奪われたと思い込み、よく考えもせずあのような振る舞いを致しました。ご無礼を申し上げたことをお詫びいたします。賢者様のお力を痛感し、まこと姫様にふさわしいお方であると知らされました。」まあそうだよな、人族が魔族より強い魔力を駆使するなんて、普通は思わないよね。


「うむ、殊勝(しゅしょう)である。では婿殿よ、何か言いたいことはあるか?」

「はい、私も売り言葉に買い言葉で、頭に血が上りました。しかも試合では、正々堂々とお相手をせず、申し訳ありませんでした。」詫びとしては、こんなところかな。

「うむ、それで良い。二人とも、これからも儂を助けて国を守ってくれよ。」


ここで、ゾフィー宰相がキラに向かって、たった今済ませてきた召喚獣の後始末について説明をしてくれた。

「ここにおられるホム殿は、いにしえの魔人のしもべとして働かれたお方でな。お主のゴーレムを復活させ、スライムは送還して、既にお主に帰属させ直して下さったのじゃ。」

「何と、それは有難いことでございます。」

「そして、この縁をもってホム殿は、今後はお主の侯爵家で預かりとしたいが、如何いかがじゃ。」


ホムが一歩前に出て、キラ侯爵に深々と礼をした。「キラ様、これからはこのホムを貴殿の配下として、存分にお役立てください。」芝居がかったホムの優雅な身のこなし、実に(さま)になっているな。こいつ。


「魔人の僕ともあろう方を、我が侯爵家にお迎えするとは、これほどの名誉はございません。賢者ジロー様、ご配慮を賜り感謝いたします。」キラは涙ぐんで、俺に礼を言った。配慮したのは俺じゃなくて、魔王様なんだけどな。父上をちらりと見たら、眼で「言うな」と言われたから、まあいいか。


最後に魔王様がキラ侯爵に告げた。「キラ殿には、今後は護国卿のほかに魔人捜索の任も受けてもらいたい。詳しくは、婿殿とホム殿から聞いておくようにな。」これにて、一件落着だ。


 ◇ ◇ ◇


その日、俺たちは魔王城にお泊りすることになった。

夜は宴会が催されて、俺と嫁達と子供たちは、王族や貴族たちからの温かい歓迎を受けた。

キラ侯爵も、もちろん宴会には出席していて、一緒に酒を酌み交わし胸襟(きょうきん)を開いて語り合ってみれば、このオヤジはなかなかいい奴だった。


なにより、ホムが手元に来てくれたのが嬉しくて仕方がないらしい。周囲からも、魔人の加護がますます侯爵家に及んだなどと持ち上げられて、有頂天(うちょうてん)だ。


「私は必ず、魔人の里の手がかりをつかんでご覧にいれますぞ!」キラ侯爵は、魔王様にも俺にも、声高(こえだか)に宣言してくれた。

これは俺も嬉しい。このオヤジを、近いうちに魔人捜索に熱心な南の里のウィルに紹介しておこうかな。


宴会も終わって、俺たちは、あてがわれた王宮の客室に落ち着いた。

「長く、そしていろいろな出来事があった一日でしたね。」クレアがそう言って、俺を(ねぎら)ってくれた。

「久しぶりに旦那様の雄姿を見て、心が躍りました。」やっぱりカレンが感じる所は、そこなのね。


「俺は、お父上の、魔王様の貫録に感銘を受けたな。些細な事に動揺せず、部下を思って配慮ができる立派な方だ。」

そうだ、俺はクレアに文句を言うべきことがあったのだ。

「母上の事、最初に教えておいてくれよな!」


「御免なさいね、母上ったら若い男が大好物なの。でもまさか、旦那様まで欲しがるとは思わなかったわ。」やっぱりあれは、本気だったのね。

「旦那様も気をつけてね。母上は闇の魅了魔法(みりょうまほう)幻惑魔法(げんわくまほう)、それと服従魔法(ふくじゅうまほう)がお得意なの。」カレンも、横でうんうんと(うなず)いている。俺、魔族をナメテました。王妃様、怖すぎます。


次の日の朝、俺たちはカレンの里を目指すことになった。

魔王様と王妃様が、孫のワタルに未練(みれん)たらたらだったので、俺はボットをそのままここ王宮に置いていくことを提案してみた。


「このボットは、私たち人族の村と繋がっています。」本当はタロー経由で、だけどな。まあ、難しいことを言っても分かりませんよね。

「これに話しかけてもらえば、いつでも私達と会話できますし、ワタルの顔も見る事ができますよ。」それに、この部屋に置いておけば、魔王情報はタローに筒抜けだしね。


「おお、そうか。素晴らしい魔法じゃ、婿殿。」

「いいえ父上、魔法ではなく科学技術と言うのです。」

「?」

そして、俺たちは魔王城を後にした。

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