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その2 魔人の秘術

しばらくして、搭載艇が到着したとタローが言ってきた。

俺が、ホム爺の仲間とやらを船まで迎えに行くと、そこにはホム爺にうり二つのホムンクルスが立っていた。


「やあ、ジロー。お呼びを受けて参上いたしました。」

「ホム爺じゃあないんだよね。」

「はい、これまでの記憶は彼から受け継いでおりますが、私は別の個体でございます。」ニッコリと微笑んだ。こいつも表情が豊かだな。


「まずは魔王様に謁見(えっけん)だ。」俺は彼を連れて、再び魔王の執務室に戻った。

ホムンクルスは、魔王の前に立つと「ジローから頼まれましたので、召喚獣の管理に伺いました。」挨拶抜きで、用件だけを言った。

まあ、魔人は魔族からすれば神に等しい存在だと聞く。ホムンクルスは魔人の僕だから、へりくだる必要もないのかな。


控え目な角を持ち、魔族よりはやや小柄で華奢(きゃしゃ)で、表情が豊かなホムンクルス。魔王様は、面白そうな表情を浮かべて、ホムンクルスを観察すると、席に着くよう(うなが)した。

皆でテーブルについて、会議が始まった。


「さて、まずあなたを何とお呼びすればよいのかな?」魔王様の問い掛けに、

「私に名はありません、とりあえずホムとでもお呼び下さい。かつて魔人からは、そう呼ばれておりました。」と答えたのは、十数年前のホム爺と一緒だな。


「魔人に作られたと?」

「はい、今から数百年の昔です。」

「今までは何処におられたのだ?」

「ここから南にある魔人の里で、眠っておりました。」

「ほう。」


どうやら、俺から説明したほうが早いかな。

「父上、実はここから南の火山の(ふもと)、ダンジョンのその奥に魔人の里があるのです。そこには、魔人の子供らが残されていて今でも生きたまま眠っております。」


「何と! 魔人は滅亡しておらぬのか! これは驚きじゃ。」

「このホムは、その里の守りとして残されました。そして、魔人たちは枯れゆく魔素を求めて、北の火山に旅立ったと言います。」

「今から、五百五十年前の事です。」ホムが補足してくれた。


「その後の魔人たちの行方ゆくえは知れず、私たちは飛竜の協力を得て、魔人の移り住んだ里を今でも探しているのです。」

「その眠れる魔人の子らを、目覚めさせることはできぬのか?」

「できますが、子らを導く大人がおりません。まずは成熟した魔人を探すのが肝要と考えた次第です。」


「なるほど、道理だな。魔人と言えば、我らが神にも等しき存在。太古から我ら魔族は、魔人の加護を受けたのだ。その捜索には、是非とも我らも協力したいものじゃな。」これは有難い申し出だ、感謝します父上。


さて、魔人の話はこれくらいにして、本題に突入しようか。

「ホム、お前には、まず召喚したままになっているスライムの送還を頼みたい。その後は、俺が倒してしまったゴーレムの復元だ。」本当に復元できるんだよね?

「術者が気を失っているのであれば、仕方ありませんな。生きの下がらぬうちに、戻して差し上げましょう。」スライムって、生きが下がるものなのかしら。


「ゴーレムには、闇の波動を打たれましたか?」

「そうだ。」

「ならば、光属性で中和してから再構築となりますな。これには少々時間がかかりましょう。」済まないね、宜しくお願いします。


「この召喚獣のお世話が終われば、私はお役御免ですかな?」ホムは悲しげな顔をして、俺を見つめてきた。

そうだよな。この魔人が創造した合成生命体は、いろいろとできる奴だ。仕事が終わって、お戻りいただくのも勿体ない話だ。

「ホムは、良かったらこのままこの里に残って、魔族を助けたらどうだ?」と言ってみた。


ホムの顔がパアッと明るく輝いた、本当に表情豊かな奴。

「せっかく私も目覚めたのです。このまま眠りにつくのも(しゃく)ですし、私は魔人ほど魔素を必要としませんから、ここでお役目をいただければ嬉しいですな。」

ホムは大喜びだ。


「ならば、ホム殿。」おっ、魔王様のお言葉だ。

「これらの魔物を召喚した術者は、キラ侯爵という。今は婿殿にやられてノビておるが、代々魔人の加護を受け継いできた、この王国の護国卿なのだ。」

「これも何かの縁じゃ、ホム殿はキラ侯爵の預かりとして、侯爵家を助けてはくれまいか。」


なるほど、これも魔王様のキラ侯爵への配慮の一環か。確かに魔人の僕がキラ侯爵家の預かりとなれば、王国内でも箔がつくと言うものだ。父上は、人使いがお上手でいらっしゃる。

「キラ侯爵家には、新たに魔人捜索の責務を与えることとしよう。」

会議はこれにて終了となり、俺はホムを伴いゾフィー宰相に案内されて、もう一度演武場に足を運ぶことになった。


 ◇ ◇ ◇


演武場に着いたホムは、中央でプルプルしているスライムに「ご苦労様、これから戻してあげますよ。」優しく声をかけると、その傍で印を結んだ。

フッと、スライムの姿が消えうせた。


「これで、召喚中に消費されていた魔力の負担がなくなりました。術者も、キラ様でしたか、目を覚まされることでしょう。」ふーん、召喚している間は魔力を消費するのか。だとすれば、二匹の魔物を召喚したキラは、魔力切れを起こして倒れたということかな?


「さあて、次は少々厄介です。」ホムはそう言って、魔石を二個、ステージ中央に置いた。魔石はフルチャージされているらしい。

ホムは、魔石の一つに蓄えられた魔素を一気に放出して、光属性の波動を地面に注ぎ込んでいる。すると、地面から徐々に土が盛り上がり、ゆっくりとゴーレムの巨体が立ち上がった。ただ、巨体は立ったままで動かない。周囲には、大量の魔素が還元生成されていた。


「これで、ジローの発した闇の波動は中和されたわけです。これから、この土を光の波動で()ることで、ゴーレムを復活させます。」

ホムは、この場に充満する魔素にもう一つの魔石からの魔素も加えて、光の波動にしてゴーレムに照射しながら、何やら両手を小刻みに動かし始めた。目の前のゴーレムの巨体が、うにょうにょと蠢動(しゅんどう)を始める。なるほど、これが「土を光で()る」ということか。


やがて、巨体は再びゴーレムの形を取り戻した。

「よし、リセット完了です。」そういって、ホムはゴーレムの脚をポンポンと叩いた。ゴーレムは、例のキアアという叫び声を発したが、攻撃してくる様子はない。


「よしよし、いい子だ。お前も戻りなさい。」ホムが印を結ぶと、ゴーレムもふいに姿を消した。

「はい。これで終了です。魔物は二匹とも、術者へ帰属させる事ができました。」おお、これが魔人の秘術か。初めて見せてもらったぞ。何でも、魔人とホムンクルスにしかできないものらしい。(続く)

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